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映画日記『水は海に向かって流れる』

定期的に映画館で映画を観る新習慣の第24弾。今回は、6月9日公開の『水は海に向かって流れる』。手塚治虫文化賞新生賞を受賞したほか、各マンガランキングでも上位に位置付けられる田島列島さんの人気漫画を、広瀬すずさん主演で実写映画化。

監督は『そして、バトンは渡された』の前田哲さん。脚本は『1リットルの涙』『凪のお暇』の大島里美さん。 主題歌はスピッツで「ときめきpart1」。

高校への通学のために叔父(高良健吾さん)の家に居候することになった直達(大西利空さん)が駅に着くと、見知らぬ大人の女性、榊千紗(広瀬さん)が迎えにきていた。案内された家には、脱サラしてマンガ家になった叔父、女装した占い師、海外を放浪する大学教授、そして笑わない26歳の会社員・榊がおり、彼らとの共同生活が始まる(シネマトゥデイから引用)。

以下、ネタバレあります。

広瀬さん主演となっていますが、事実上は大西さんとのW主演。登場シーンやセリフも大西さんが多いぐらい。大西さんは子役出身で、名前をはっきり覚えたのはドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』。坂口健太郎さんの少年時代を演じました。松坂桃李さんや菅田将暉さんの所属するトップコートに移籍したので、将来のスター候補といったところ。

原作は読んでいて、広瀬さん主演が発表された時には正直いって違和感がありました。線が太すぎるというか、たくまし過ぎるというか、図太いというか(笑)。映画では序盤は不機嫌そうな仏頂面で、やややり過ぎ感もありましたが、そこは後半にかけて少しづつ表情が豊かになっていく逆算だったのでしょう。結果的に悪くはなかったなと。広瀬さんに寄せたキャラ。

脇役陣も、高良健吾・戸塚純貴・勝村政信・北村有起哉・坂井真紀・生瀬勝久(敬称略)と個性派&実力派揃いで、特に北村さんは可笑しかったです。ほんと『アンナチュラル』の宍戸なのにね。

特筆すべきは、直達のクラスメートで、占い師の妹・楓役の當真あみさん。ネクストブレイク若手女優として、最近は必ず名前が上がる一人で、『妻、小学生になる。』『大奥』『どうする家康』でも主要キャスト。映画でも重要シーンに複数回登場。特に直達に気持ちをぶつけたセリフは最高でした。

度々登場する料理&食事シーン、ちょいちょい出てくる子猫、こだわった小道具やロケーション、光・色・音、各キャラの衣装、映画ならではの表現が心地よかったです。

広瀬さんを美人女優と思ったことはないですが、二十代半ばの大人の女性として、魅力的に映されていましたね。まあ、直達には「楓にしておけ」とアドバイスしたいですが(笑)。

アメコミ映画、ハリウッド大作とは正反対な、いかにも日本映画的な日常系の佳作。ドラマ『半径5メートル』のような、等身大の人々に巻き起こる出来事や、移りゆく感情などを丁寧に描く映画が好きなんですよね。さだまさしさん風に言えば、誰の人生にもドラマがあり、誰もが主人公であると。

「(榊)千紗ちゃんは16歳のまま時間が止まってる」というセリフがあるんですけど、そこは横浜流星さん主演の『線は、僕を描く』に出てくる「思い出すと辛いのに 忘れることもできなくて 僕は立ち止まったままです」のセリフにも似て。

ある大きな出来事があって、前に踏み出せずに無駄に年齢だけを重ねる、ただ生きているだけの存在。今の自分もそうかもしれないなと。

余談:永山瑛太さんが主要キャストの『あなたがしてくれなくても』をリアルタイム視聴した翌日、弟の永山絢斗さんの逮捕を知る。大麻合法化の議論はとりあえず置いといて。

『ごめんね青春!』『64(ロクヨン)』『重版出来!』『みをつくし料理帖』『初めて恋をした日に読む話』『俺の家の話』『リバーサルオーケストラ』など、たくさん楽しませてもらったなあ。

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