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東京在住の読書好き社会人の日常。 読書中心のVlogをYouTubeに投稿してます。(毎週日曜日18:00更新)

マガジン

  • 【読書感想・書評】

    読んだ本の感想をまとめたものです。

  • エッセイ

    考えたことを気ままに書き残していきます。

最近の記事

【読書感想】ただ自分でいられる存在になるために『列』中村文則 

「その列は長く、いつまでも動かなかった。」で始まる物語の第一部は、ただ行列が存在するだけの設定で描かれている。その他に具体的な要素は少なく輪郭を掴みきれないような空気感が漂うシーンが続く。先頭に何があるのか分からないまま列に並ぶ語り手、前後に並ぶ人々との間に自然発生的に生まれるやりとりから人生における教訓めいたものを読み解こうとし、物語に向かう姿勢は自然と少し前のめりなりいつもより丁寧に読み始めていた。 この列は一体何を示しているのだろうか。その疑問を抱きながら二部へと入っ

    • 【エッセイ】突然思い立って書いたエッセイ

      エッセイを書きたくなった。 これまでそんなにエッセイを読んできたわけではないのに、突然そんな気になったのは、間違いなく松浦弥太郎さんの「エッセイストのように生きる」を読んだからだ。 読み進めていくうちに付箋だらけになるくらい素敵な本で、次の一文と出会った時にふと「自分はどうだろうか」と考えてしまった。 少しの間、実現したいと思えるコンセプトが自分にはあるのだろうかと考えてみても、明言できるようなものは見つからなかった。 そこで、このエッセイを書きながら、2024年3月

      • こんな週末でいいのだろうかと思ったから休日のVlogを作った話

        土日って難しい。 最近、そんなことを思うようになった。 土日は毎週決まった予定があるわけでもないが、予定が入る日もあるため朝の9時から10時は読書、その後の1時間は動画編集なんてスケジュールの組み方もできない。金曜と土曜の夜についつい飲み過ぎてしまい、そもそも土日にきちんと活動できる朝なんてないこともある。あと単純に休日だからゆっくりしたいという欲求が強すぎる。 というわけで予定が無い週末は、油断していると何もしないまま過ぎ去ってしまう。そして月曜日の夜に、週末に何かした

        • 【読書感想】自分を縛り付ける自分:『無敵の犬の夜』小泉綾子

          4歳の頃に小指と薬指の半分を事故で失った主人公の界は、北九州に住むどこにでもいそうな男子中学生だった。担任の半田の車に落書したことで、界は授業中に半田から指がない人のことを「かわいそうな人」「社会のお荷物」と言われ不登校になる。学校に行かず地元の先輩とただ時間を潰しながらゆっくりと悪い方向へと向かう日々を過ごしている時に、高校生の橘と出会う。担任の半田に仕返しをした二人は、自然と同じ時間を過ごすように。橘のことをカッコいいと尊敬する界は、二人で過ごす時間が一番でその時がこのま

        【読書感想】ただ自分でいられる存在になるために『列』中村文則 

        • 【エッセイ】突然思い立って書いたエッセイ

        • こんな週末でいいのだろうかと思ったから休日のVlogを作った話

        • 【読書感想】自分を縛り付ける自分:『無敵の犬の夜』小泉綾子

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        • 【読書感想・書評】
          11本
        • エッセイ
          4本

        記事

          【エッセイ】なんだか上手くいかない日々を超えて

          「最近、何もかもうまくいってないような気がする」 そんなことをぼんやりと考えていたのは10月の連休の最終日。この日は雨で特に予定もなく、目覚めてもなかなかベッドから出られずにいる時間だった。 一つの大きな失敗があったわけでなく、自分に関係すること全てに対して薄いネガティブな膜が1枚かかっているような状態が続いている。一歩一歩確実に悪い方向へと進んでいくような感覚が体の端に引っかかっているみたいだった。ベッドの中でスマホでSNSやニュースを眺めながら、考えを巡らしていく。

          【エッセイ】なんだか上手くいかない日々を超えて

          【エッセイ】ビールとの別れ話

          お酒を辞めようと決めてから約2週間が経過した9月17日(日)の夜、なんとなくビールを飲んだ。このビールは、9月も中旬に入ったのにまだまだ暑く、夕方に散歩に出掛けて近所の出店が立ち並ぶお祭りを見物して帰宅した後、シャワーで汗を流した後の1杯だった。禁酒にも見事に失敗したので、9月に入ってお酒について考えたことを文章にしてみようと思う。 久しぶりに飲んだビールは美味しいことは美味しいんだが、「本当にアルコールである必要があるのか」と冷静になる自分もいる。ここ数年間、金曜日になる

          【エッセイ】ビールとの別れ話

          【読書感想】『いい子のあくび』:世の不合理から少しだけ救われる

          「ぶつかったる」。そう思いながら直子はスーパーに向かう途中で、スマホを見ながら自転車に乗る男子中学生とぶつかる。中学生は転び、後ろから中年の女性が運転する車と接触。直子は、自分が避けることも自転車に自分の存在を気づかせることがあったのを理解しながらも、あえてぶつかることを選択していた。それは、これまで駅や街中で自分が「こいつならいいや」と思われてぶかられ、いつも避ける側の人間だったことに気づき、自分のなかで歩きスマホをする人は存在しないことにしたからだ。そんな彼女の行動の根底

          【読書感想】『いい子のあくび』:世の不合理から少しだけ救われる

          『エレクトリック』千葉雅也 揺れを感じる

          舞台は、1995年の宇都宮。時代はインターネット黎明期、主人公は進学校に通う高校2年生の達也。自宅には、印刷会社を辞めてフリーランスのカメラマンになった父が撮影のために作ったスタジオと呼ばれる離れがある。そこでオーディオが趣味の父は、取引先の社長のためにアンプを入手して補修する。 達也は、そんな父の仕事に巻き込まれる形で、自分の部屋のマックがインターネットと繋がり、掲示板やチャットで同性愛の世界に入っていくようになる。しかし、達也がゲイである側面は必要以上にフォーカスされな

          『エレクトリック』千葉雅也 揺れを感じる

          【感想】川上未映子「黄色い家」正当化しないと生きていけない

          もしも自分だったら、彼女の境遇を乗り越えられただろうか。 花が黄美子さんと出会ったのは15歳の中学生の時。近所のスナックで働く母親は、店の人や友達を連れて帰ってきて泊まらせることがあった。黄美子さんもその一人だった。高校生になった花は家を出て、再会を果たした黄美子さんとスナックを始める。そこに同年代の蘭と桃子も加わり4人での暮らしをスタートさせ、人生が軌道に乗り出したと思った矢先、とある出来事をきっかけにスナックを経営できなくなり、花たちの生活はいとも簡単に崩れていく。そし

          【感想】川上未映子「黄色い家」正当化しないと生きていけない

          【読書感想】「嫌いなら呼ぶなよ」綿矢りさ

          4つの物語が収録された「嫌いなら呼ぶなよ」は、「整形」「SNS」「不倫」「老害」をテーマにそれぞれ闇を抱えた個性的な人物たちが描かれている。今回は表題作の「嫌いなら呼ぶなよ」についての感想をまとめる。 主人公の霜月は妻の楓と二人で、妻の高校時代からの友人である森内萌華(通称:ハムハム)が夫と3人の子供と暮らす新居に遊びに行くことになる。そこでもう一組の家族、河原夫婦とその二人の子供でホームパーティーが開催される。楽しい一時を過ごしていると、大人だけ2階で集まる流れに。突然、

          【読書感想】「嫌いなら呼ぶなよ」綿矢りさ

          【読書感想】「光の痕」島口大樹

          「光の痕」の舞台は、海沿いの地方都市。主人公の章(あきら)は生まれながらにして色覚に異常があり、それが原因で幼い頃からいじめを経験し、高校も数日で中退、アルバイトをしようにもなかなか上手く仕事をこなすことができず続けることができないでいた。旅館を経営する祖母のもとで暮らす章のもとに、昔大きな事件を起こし逮捕され刑期を終えても戻ってこなかった元漁師の父親が戻ってくる。父親が地元に戻ってきた背景には、この街の再開発の噂が関係していた。 「光の痕」を読んでいる最中に頭に思い描くの

          【読書感想】「光の痕」島口大樹

          【感想】『ミシンと金魚』永井みみ

          「幸せでした」と言い切れる人生にするためには何が必要なのか。そのヒントを教えてもらったような気がした。 まず物語の序盤で思わず反応してしまったのが、お年寄りに関する考察。本作の主人公であるカケイさんを通して書かれる老人論みたいなものが30代の自分にも響いた。 最初に気になったのがお年寄りに赤ちゃん言葉で話しかけるというもの。いつかは忘れてしまったが、赤ちゃん言葉のような言葉遣いでお年寄りと接している場面に遭遇したことがあった。もちろんこのお年寄りには若くて元気な時代があっ

          【感想】『ミシンと金魚』永井みみ

          【感想】『オン・ザ・プラネット』島口大樹

          淡々とした静かな映画を観ているような感覚だった。この小説の何が自分にそういう感覚をもたらしたのかよく分からないし、単に登場人物らが映画を作るために砂丘を目指して旅しているからなのかもしれない。 静かに幕を開ける冒頭も、これから先の物語にじんわりと入っていくようなどこか映画のような雰囲気を持った文章だった。 こんな冒頭で始まる『オン・ザ・プラネット』は、ぼくとマーヤ、スズキ、トリキの若い四人でぼくの映画を撮影するために軽自動車で横浜から鳥取に向かう。 その道中での繰り広げ

          【感想】『オン・ザ・プラネット』島口大樹

          【感想】『話の終わり』リディア・デイヴィス

          これまでの人生で一番引きずった失恋を思い出せずにはいられなかった。著者の繊細で詳細な描写は、自分の記憶を刺激し、これまで経験してきた忘れていたであろう恋人との時間を呼び覚ますものがあった。 リディア・デイヴィスの『話の終わり』は、30代半ばの大学教師の女が12歳下の男子大学生と恋人関係になり、振られる。その後、女は二人で過ごした数ヶ月間の記憶をたどりながら当時の出来事を詳細に書き記していく物語。 まず読み始めて印象に残ったのが曖昧な記憶を曖昧なまま書いていることだった。彼

          【感想】『話の終わり』リディア・デイヴィス

          【感想・書評】『人間』又吉直樹:芸人で作家の叫びが聞こえてくる

          『火花』で2015年に芥川賞を受賞した又吉直樹さんの3作目となる『人間』は、自分にとって初めて読む彼の作品。初めてということもあり、読み終えた時に「この人の本をもっと読みたい」と思えた1冊になった。 序盤に描かれていたハウスでの生活で、住人たちでグループ展をやったり表現に対する議論をするなかで、他人の感覚や価値観に触れもがく永山に懐かしさと羨ましさを感じる。若い時に何者かになりたいという気持ちはあるものの、実力や行動が伴わず悶々とするあの感じ。歳を重ねた今、なかば諦めたかの

          【感想・書評】『人間』又吉直樹:芸人で作家の叫びが聞こえてくる