見出し画像

いろは歌140字小説まとめ

いろは歌シリーズです。
タイトルと書き出しの文字がいろは歌の順番に沿っています。

【No.428 椅子取りゲーム(いろは式「い」)】
椅子取りゲームが社会の縮図だった。小学生のころ、あの楽しげな音楽に合わせて数少ない椅子を取り合っていた。笑いながら。蹴落としながら。今にして思えば、あれは遊びの皮を被った、この先を生き抜くための必修科目だったのだろう。優しい人から、臆病な人から順に人生の席を奪われていく


【No.429 ロストデータ(いろは式「ろ」)】
老朽化した思い出を整理する。⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀『消去してもよろしいですか?』⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀⠀はい。⠀
               ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀『保護記憶を除き、全件削除しました。』

【No.430 ハッシュタグ(いろは式「は」)】
#ツイノベ #140字小説 #小説 #掌編 #短編 #ショートショート #SS #ショートストーリー #脚本 #演劇 #短歌 #詩 #文章 #文学 #文芸 #自由律俳句 #百人一首 #和歌 #シナリオ #オーディオドラマ #キャッチコピー #ネーミング #創作 #エンタメ #エッセイ #コラム #ボイスドラマ #感傷リップループ

【No.431 にらめっこ(いろは式「に」)】
「にーらめっこしーましょ」ないてるこがいたから「わらうとかちよ」とつぶやいた。「あっぷっぷ」ないてるこはなかなかわらわなかった。「にーらめっこしーましょ」くちをふくらませる。「ぷっぷー」いきをはく。「わらってるほうがすてきよ」とほほえむ。ないてるこ、あっぷっぷ。わらった

【No.432 歩道橋と走馬灯(いろは式「ほ」)】
歩道橋の真ん中で寂びた街を見下ろす。幼稚園児だった妹は、私の呼ぶ声で駆けてきてトラックに轢かれてしまった。キシ、キシ、と鳴る音が妹の悲鳴にも聞こえる。それから、私は声を出すことができなくなってしまった。階段を蹴る音が上っているのか、下っているのか、今でも分からずにいた

【No.433 ヘリウムガール(いろは式「へ」)】
「変な子」と思われないように。私の個性が、浮かばないように。クラスでは『自分』を沈めていた。深く深く潜るため、淡い期待も、軽い気体になって心から吐き出す。「空気の読めない子」と思われないように。私の存在が、浮かないように。息を吸って、淀みを吐いて。深海で生きていくように

【No.434 といぼっくす(いろは式「と」)】
止まったままのオルゴールがおもちゃ箱から出てくる。タイヤの取れたミニカー。笑わないフラワーロック。子どものころ、幼なじみだった女の子のおもちゃが紛れ込んでいた。あの日、本当のことを伝えていれば。止まったままのオルゴールを回す。音は鳴らない。回す。鳴らない。回した。音は、

【No.435 地図にない街(いろは式「ち」)】
チカチカと目の前が弾けて、気付いたら知らない街にいた。赤い公園のベンチで腰を下ろすと、四十代くらいの女性が隣に座った。「最近はこの街に迷い込む子が多くてね。あなたはまだ若いんだから早く帰りなさい」と悲しそうな顔をする。ベンチに背中を預けて眠る。街はもう、どこにもなかった

【No.436 Re:Re:(いろは式「り」)】
「理解なんてできなくていいよ」と呟いていた隣に住む女子高生は、いじめてくる同級生ともみ合って階段から突き落としてしまった。大人になりたいが口癖だった彼女は、誰からも名前を呼ばれることがなくて、大人になりたいが口癖だった彼女は、気付けば、大人じゃなくて少女Aになってしまった

【No.437 ぬまる(いろは式「ぬ」)】
ぬかるみにハマった女性がいたので声をかけると、その人は「浅いと思って踏み入ったら、案外深くて抜け出せなくなりました」と苦笑いする。感情任せに体を動かすと、財布からとめどなくお金が落ちていく。どんどん沼に体が埋まって心配になるけれど、やがて女性はにこやかに沼へ沈んでいった

【No.438 ルールワード(いろは式「る」)】
ルールシートを確認する。言葉の消費期限は意外と短い。執筆後、しっかり検査や確認をしないで寝かせると、言葉の意味が変わってしまったり誤字が増殖する。奥深くまで浸透してしまった意味や誤字を取り除く作業は根拠がいる。けれど、厳しい品質チェックが終わってやっと世の中に出せるのだ

【No.439 をかしな関係(いろは式「を」)】
「を」と「お」の違いを聞くと、お姉さんは「たまに書けなくなるのが『を』で、たまに点を忘れるのが『お』だよ」と真面目に答える。戸惑っていたら「さては君、『猫』と『描』で悩むタイプだね」となぜか勝ち誇る。このお姉さんに芽生えた感情が、未だに「恋」か「変」かでわからずにいた

【No.440 ワスレナグサ(いろは式「わ」)】
「ワスレナグサを天ぷらに、あれ、おひたしだっけ? とにかく、食べるともの忘れがなくなるんだって、なんかのテレビかラジオで知ったの。え、嘘だって? 本当よ。だって、あのー、名前は出てこないけど有名な料理家、じゃなかった。研究家? が言ってたもの。それに、私は毎日食べてるのよ」

【No.441 感覚物体(いろは式「か」)】
体の大きさが三倍のサバが泳ぐ。それに感銘を受けたカメが涙を流して、関西まで勝手にカサが飛んでいく。未知の生命体「感覚物体『ンイ』」が入り込むと、その物の行動や性質を変えてしまう。こいつを使って金儲けをしよう。その瞬間『ンイ』が僕の頭に入り込んで、体を人外に変えてしまった

【No.442 よふかしのうた(いろは式「よ」)】
予習のために参考書とにらめっこする。ふと息抜きに昔はやっていたSNSを開く。赤文字で『新着コメントが1件あります』と表示されていた。昔はあんなに喜んでいたのに。大切になれなかった子の最後の繋がりだった。赤文字をチェックシートで隠す。あの子の言葉も、思い出も、見えなくなったよ

【No.443 タイムタッパー(いろは式「た」)】
タッパーに思い出を詰め込む。冷蔵庫の中を整理するついでに別のタッパーを取り出した。クリスマスの記憶。初デートの期待。何を保存したのか思い出せなくてフタを開けると、原型を留めないほどに腐っていた。廃れて、錆びて、朽ちて。ラベルを確認すると掠れた文字で「夢」と書かれていた

【No.444 レゾンメートル(いろは式「れ」)】
レーズンパンのレーズンだけを、くり抜いて食べる子だと知ってからは別れが早かった。一緒に食べてこそ酸味と甘みが際立つのに、これじゃ存在意義を失ってしまう。くり抜かれたのが僕なのか、はたまた彼女自身だったのか。いびつに穴の空いたパンが、まるで僕らの空白を表しているようだった

【No.445 その訳を(いろは式「そ」)】
騒音で目が覚める。なかなか起きない僕に痺れを切らして、彼女が不機嫌になりながら僕の頭を掃除機で小突く。「この家に住むのも今日で最後でしょ」と笑って音楽をかけた。スピーカーからは『思い描くことさえ 僕らは忘れたよ』と流れる。嘘のように、別れにしてはおだやか過ぎる午後だった

【No.446 つぎはぎ(いろは式「つ」)】
「次は性格ですがこちらの中から選んでいただきます」施設員がチェックリストを渡しながら説明する。今では子どもの見た目・声・性別・才能さえも人工的につぎはぎできる。望まれない子どもを産まないために。より良い社会にするために。感情も、将来も、つぎはぎされた寄せ集めの未来だった

【No.447 ネジ巻き式(いろは式「ね」)】
ネジ巻き式の幸せなのかもしれない。オルゴールのネジを巻くと、巻いた分だけ透明感のある音色が流れる。綺麗なものはいつだって機械仕掛けだった。そうやって自作自演の幸せを聞いている内に、ネジは錆びれて、音は歪んで。巻いて、巻いて。いつのまにかオルゴールは鳴らなくなってしまった

【No.448 名前泥棒(いろは式「な」)】
名前を盗まれる事件が増えた。ガードレールの丸まった部分。本屋でお腹が痛くなる現象。視力検査のC。パン袋の留め具。今朝、盗んだ犯人が捕まったそうだ。その途端に名前を思い出す。袖ビーム。青木まりこ現象。ランドルト環。それでも、パン袋の留め具だけは、何度聞いても盗まれてしまった

【No.449 らんどせる(いろは式「ら」)】
ランドセル達が喧嘩したそうだ。聞けば他のランドセルとぶつかったらしい。娘は「一緒に謝ってあげる」と仲直りしに行くことになった。娘が「私のランドセルがごめんなさい」と頭を下げると、フタが開いて中の教科書がバタバタと落ちる。その様子に相手のランドセルも大笑いして仲直りできた

【No.450 無音(いろは式「む」)】
無観客試合、撮影、公演が多くなった今、自分の価値観を確かめる術が希薄になっていった。無声映画のワンシーンだけを切り取ったように、正しい情報が伝わらない。正しい評価が下されない。ネットの正しい声だけが大きくなっていく。正しい街の、正しい人達によって、正しい終焉を迎えていく

【No.451 羽化(いろは式「う」)】
生まれたての言葉はまだ弱々しかった。意味の殻を破って、新しい使い方へと変容していく。『やばい』『普通に』『役不足』いくつもの言葉が羽化しては違う存在になった。新種はまだ認知度も低く、なかなか意味が伝わらない。そっと言葉を掬う。やがて誰もが使う存在になるまで育てると決めた

【No.452 ゐらない子(いろは式「ゐ」)】
「ゐ」と「ぬ」の書き分けができなかった。昔から要領が悪くて迷惑をかけ続けてきた私は、見事に「いらない子」の烙印を押されてしまう。くしゃくしゃになったプリントの、すみっこに書かれた赤文字を直視できなくて、「い」を塗り潰した上から「ゐ」と書き直す。書き直して、丸めて捨てた

【No.453 野良夢(いろは式「の」)】
望まれて飼われたはずなのに、最近では野良夢を見かけることが多くなる。人々から「そんな夢は恥ずかしい」とか「どうせ最後まで育てられない」とか心ない言葉を投げかけられた。夢を飼うのにはお金がいる。才能がいる。自慢するためだけに飼い始めた夢が、街の至る場所で鳴き声を上げていた

【No.454 お蔵入り(いろは式「お」)】
「おいしそう」と私がオクラ入りうどんを頼むと、芸人である彼が怒り出す。『お蔵入り』を連想させるからだそうだ。他にも『尾も白くない』と真っ黒な犬を嫌ったりする。「俺はいずれ能のある芸能人になるんだ」と息巻くけど、私から見れば小さい縁起を気にするような芸NO人でしかなかった

【No.455 くるみ割り人形(いろは式「く」)】
くるみ割り人形でくるみを割っていると、木の上の家にリスが忍び込んでくる。僕と目が合うと割れたくるみをさっと奪って消えていく。そんな関係が続いたある日、目覚まし代わりにセットした音楽で起きると、すでにリスが横にいた。流れていたのはチャイコフスキーの『くるみ割り人形』だった

【No.456 ヤなことそっと(いろは式「や」)】
「ヤなことそっとミュートすればいいんだよ」と誰かが言っていた。人生はアカウントによって管理されている。フォローした人とだけ話すことができて、会いたくない人はブロックすれば関わらなくて済む。ミュートした言葉は耳に届かなくなる。何も解決しないんだけど、生きやすい世界になった

【No.457 マグカップ(いろは式「ま」)】
マグネットのように強い引力で繋がった二人。または強く結びついたまま離れないカップルを、略して『マグカップ』と呼ぶらしい。記念日にはお揃いのマグカップを送り合う。そんなノロケ話を男友達から聞いていたら、つい最近別れたと言う。理由を聞いてみると「あの子、実はSだったんだよ」

【No.458 敬遠値(いろは式「け」)】
毛嫌いする人と一緒にいると敬遠値が溜まっていく。約束を破られたり、嘘をつかれるたびに、敬遠値が溜まって負の関係がレベルアップする。親友から友人、友人から他人へと親密度が退化するのだ。ちょっと嫌いな人からは少ない敬遠値が。すごく嫌いな人からは大量の敬遠値が手に入ってしまう

【No.459 フカシキ(いろは式「ふ」)】
風鈴の音が街に鳴り響くと、季節は強制的に夏へと侵食されていく。付夏式の準備は春の初め頃から行われる。大量のラムネ瓶と海砂が敷き詰められた部屋に、無作為に選ばれた人が長い時間を過ごす。窓もなく娯楽もない。誰かの犠牲が溜まったラムネ瓶を風鈴にして、また今年も楽しい夏が始まる

【No.460 言葉が回る(いろは式「こ」)】
コインランドリーで回る洋服の様を、ただ、ただ眺めていた。金麦を飲みながら「生きる」について考える。クソ上司に言われた言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐると回った。生乾きの服を取り出して、代わりにドラム式洗濯機の中に大声で叫んだ愚痴をぶち込む。淀んでしまった言葉を回す。回した

【No.461 エンドカラー(いろは式「え」)】
映画の終わりにスタッフロールが流れると一気に熱が冷めてしまう。あんなに感情移入した物語も、所詮は誰かの作り物だったのだと。電車を待つ間にビルの明かりを見つめる。ホームの白線も、信号機の青も、結局は誰かに与えられた色と、仕組みと、理で、それが運命だと思い込むしかなかった

【No.462 手紙(いろは式「て」)】
適当なメールで溜まったフォルダを整理する。通信手段が豊富で飽和になった現代で、手紙を書く機会は失われた。ある日、八十円で届いた彼からの手紙が出てくる。臆病者で返せなくなって数年が経つ。通信手段が豊富で飽和になった現代で、八十八円でも手紙が届かない場所に彼は行ってしまった

【No.463 アイデンティティー(いろは式「あ」)】
「あなたにおすすめのお茶があるの」と、喫茶店のマスターから『アイデンティティー』というお茶を勧められる。活発風味、眼鏡風味、富裕風味。飲むと味に合った独自性を得られる。こんなすごいお茶どこで手に入れたのか聞いてみると「簡単よ。人から抽出すればいいだけなんだから」と笑った

【No. 464 さざなみr.e(いろは式「さ」)】
サークル名を考えた子が自殺したらしい。マンションからの飛び降りだそうだ。彼女が何に生き辛さを感じて、何に行き詰まっていたのかは分からない。感傷的な気持ちがさざなみのように、満ちては引いてを繰り返す。「有名になりたい」が口癖だった彼女は、有名じゃなくて幽霊になってしまった

【No.465 金華猫(いろは式「き」)】
金色に輝く猫が倒れていた。調べてみると金華猫という種類だそうだ。エサは宝石しか食べないという。貧乏な僕にそんな高価なものは無理なので、代わりにビー玉を差し出す。弱々しく食べ始めると、飲み込んだはずのビー玉が宝石に変わって吐き出される。小さく鳴いたあと、金華猫は光を失った

【No.466 ゆびきり(いろは式「ゆ」)】
夕飯を作っていると夫が帰ってくる。ふと、指輪がないことに気付いて問い詰めてみると、居酒屋で落としてしまったらしい。お酒の他にも香水の匂いが漂ってくる。コートには長い髪の毛が付着していた。浮気している。包丁で人参を刻む手が強まる。もう浮気しないように、私は夫の指切りをした

【No.467 メリュー(いろは式「め」)】
名作映画のリバイバル上映があるらしい。昔、彼女との初デートで観た、僕達にとってはつまらない映画だった。あれから数年が経つ。街も、夢も、人も、思い出も、全てがあの頃と変わっていた。あの日みた映画がハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのか。今となっては忘れてしまった

【No.468 みんな(いろは式「み」)】
「『みんな幸せ』が無理なことなんてわかってる。だけど『みんな幸せ』って願うことは悪いのかな?」と、自殺した同級生の言葉を思い出す。みんな、休日を潰されたことに嫌気がさして。みんな、数日したら彼女のことを忘れてしまう。「みんな幸せ」の「みんな」の中に、彼女だけがいなかった

【No.469 仕舞う魔(いろは式「し」)】
白か黒かで物事を分け隔てて、なんでもかんでもお腹に収納してしまう『仕舞う魔』がいるらしい。不倫したミュージャンは、曲に罪はないと白になって、優しい嘘は、嘘は嘘ということで黒に判別される。正しい感情と間違った情報が『仕舞う魔』のお腹の中で、灰になって消化されずに腐っていく

【No.470 ゑがおのれんしゅう(いろは式「ゑ」)】
「ゑがおのれんしゅう」と書かれた紙を病室のベッドの下で見つける。彼女いわく、丸まった文字は手が震えて力が入らないそうだ。恥ずかしそうに、ぎこちなく笑っていた。今度、「ゑ」と似た形のかんざしを買ってこようと思う。長い黒髪がなびいていた、あのころのようにはもう似合わないのに

【No.471 ビンカン肌(いろは式「び」)】
ビンカン肌になってしまう。皮膚は硬く叩けばゴツゴツと音がする。ところどころ柔らかい箇所もあって、軽く押すだけでベコベコにへこんでしまう。この腕もそろそろ取り替える時期なのだろう。腕を外して部分ごとに瓶と缶に分別する。リサイクルされた肌はまた、つやつやした新しい腕になった

【No.472 もらい事故(いろは式「も」)】
もらい事故を起こしてしまった。彼女の誕生日に向けて、何週間も前からプレゼントを選んで、家に向かっているときのことだ。いつかこういう日が来る予感はあった。でも、注意深く確認したつもりなのに。彼女が「私、同じバッグ持ってるんだよね」と貰い事故を嘆く。人に物を贈るのは苦手だ

【No.473 青春のヒビ(いろは式「せ」)】
「青春」をテーマに美術の授業で絵を描くことになった。バラ色の日々を表現するために赤や黄色の絵の具を買い込んだり、文字通り青臭さをイメージして青系の絵の具を集めたりした。思い出せる限りの私の青春をキャンバスに描き込む。なのに、なぜだろう。灰色の絵の具だけがすり減っていった

【No.474 すいそう(いろは式「す」)】
素晴らしい朝を迎える度に、みすぼらしい私を自覚する。「そんなの水に流せばいいじゃん」が私の口癖だった。夢も、希望も、思い出も、この村も、今日の夜には水の底に沈んでしまう。私だけを残して村の人々は去っていく。依代、人柱、犠牲。呼び方はどうでもよかった。水に流してしまえば、

この記事は有料ですが全編公開になっています。私の活動を応援してくださる方がいましたら投げ銭してくれると嬉しいです。また、サポートやスキのチェック。コメント、フォローをしてくださると喜びます。創作関係のお仕事も募集していますので、どうか、よろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652