アキザクラ図書館3冊目『九月の四分の一』

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『九月の四分の一/大崎善生』

【あらすじ】
逃げるようにして、僕はブリュッセルへ辿り着き、世界一美しい広場で、ひとり悄然としていた。潰えた夢にただ悲しくてやる瀬なくて。そこで奈緒と出会った。互いの孤独を埋めるような数日間を過ごし、二人は恋におちるのだが、奈緒は突然、姿を消した。曖昧な約束を残して(表題作)。―出会いと別れ、喪失と再生。追憶の彼方に今も輝くあの頃、そして君。深い余韻が残る四つの青春恋愛短篇。

【感想】
男の女々しくて、だらだらとした心理描写。そして、青春期の喪失と終焉に定評のある大崎善生さん。私は漫画、小説、アニメの作品名が物語の途中で出てきたり、序盤と終盤で意味が変わったり、そもそも何かの伏線になっていたりする作品が好きで、私の小説でもよく同じ手法を使っています。話を戻すと、この『九月の四分の一』もその手法が使われています。

真夜中のグランプラスで主人公の『僕』は、同じく日本人旅行者の奈緒と出会う。2人は恋に落ちたがその数日後、奈緒は「九月四日で会いましょう」とメモを残して消えてしまう。なぜ「九月四日『に』会いましょう」ではなく「九月四日『に』会いましょう」なのか。

単なる書き間違いなのか。13年後、再びベルギーを訪れた『僕』はある一つの真実に辿り着く。その意味に気付いたとき、もっとも優しい勘違いだと涙を流しました。家にいながら世界を旅している気分になれる大崎作品。なかなか外に出られない昨今におすすめの作品です。

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