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消防団に入ってみた

ちょうど先週、「ハヤブサ消防団」というドラマが終わった。
本筋はミステリー、サスペンスという感じなのだが、その舞台装置として「田舎の消防団」が使われていた。「都会で暮らしていたヒョロヒョロな男が田舎の消防団に入団して、地元のワイルドな男達と交流する」というあたりに、直近の自分と大きくシンクロする部分があり、とても共感していた。(主演俳優の中村倫也に自分を重ねるのは気がひけるが)
消防団に対する世間のイメージと、最新の消防団の実態にギャップを感じたので記事を書きたい。

ドラマと消防団のタイアップ

消防団入団の経緯

「何かあれば仕事を中断して駆けつけなきゃいけない」「やたら飲み会がある」「人間関係が面倒くさい」、、、消防団に対するイメージはおおよそこんなものだろう。というか、入る前の僕はこういうイメージを持っていた。移住したての自分は仕事とプライベートとで忙しいし、田舎に住むなら消防団に入らないといけないんだろうけど、無理ですごめんなさい、と思っていた。

ついに直接勧誘されたのが今年の3月。移住して3年が経った時の地区の総会だった。「若い人はぜひ入ってください」と。
断りきれず、転職して土日休みになったし、協力できる範囲で、ということで入団した。

入団して分かったこと:そんなに負担じゃない

入団して驚いたのが、みんな勤め人だったこと。「火事があったらすぐに駆け付ける」ということから、農家さんや自営業の人が多いのかと思いきや、自分が入団した矢沢班は全員が地元で働くサラリーマンだった。なので、平日に集まることはほとんど無く、基本的に土日を使って活動している。しかも、それぞれ家族サービスもあるので、割と短時間で終わらせようという意識もある。ダラダラ飲んでいたのは昔の話らしい。ハヤブサ消防団を見て「あいつら飲んでばっかりじゃね?」とリアル消防団員が言っていた笑。
火事や災害が無ければ月に1,2回ほど集まるだけなので、それほど負担ではない。これは嬉しい誤算だ。

入団して分かったこと:集団で動くために

そうは言っても、消防団に飲み会は付きものだとも感じる。消防団は火事現場や災害対応など危険な作業にあたるので、いざという時にスムースに連携を図るために「同じ釜の飯を食う」ことは必須だ。酒を注ぎあい、酌み交わし、他愛のない話をすることでチームビルディングをする。
しかも、ワイルドな男達はそれを本能的にやっている気がする。自分はヒョロヒョロのもやしっ子の見た目なので、飲みの付き合いが悪そうと思われたのか、初回の集まりの時に「飲んでく?」と誘われて快諾したら「なんだ!飲めるのか!」とめちゃくちゃ喜ばれた。行動原理がとてもシンプルで気持ち良い。

それから、話し言葉の訛りが強いことも特徴だと感じる。ドラマでも消防団員は方言で話していたが、自分が入団した班も同様だ。これも、共通言語を作り、仲間意識を高めるために自然とやっている気がする。地元のヤンキーが訛っていると言われるのと同根だろう。よそから移住してきて入団すると少し辛いかもしれないが、僕にとっては生まれ育った環境の言葉のため、方言のシャワーの中にいるのは懐かしく心地よい。

もう一つ、特徴的だと思ったのが集団行動。「回れ~右!」とか、「ぜんた~い、進め!」とかを行列になってやる。小学生でもない、いい歳した大人がやるのはダルいと思われている。一見すると消防団と何の関係が?と思うが、これも組織の練度を高めて、有事の際にスムースに組織行動をするための訓練だろう。

外からだと面倒そうに見える消防団の慣習や行動は、中に入って観察すると「あぁ、危険に対応する組織ならではだな」と実感するし、納得感がある。刻々と状況が変わり一瞬の判断ミスが命取りになる環境では、いちいち言語化してコミュニケーションを取るのでは遅すぎるので、お互いに信頼しあって阿吽の呼吸で動ける関係性を平時から作っておくのだ。

入団して分かったこと:愛郷心

消防団員のモチベーションは様々だ。長男だから、とか、人に言われて仕方なく、とかの理由で入っている人もいるだろう。
ただ、「地元のため」「自分達の地域は自分達が守る」という意識を持っていることが共通している。ドラマでも「ハヤブサ地区は俺達が守る」と言っていたのが印象的だ。
「この家は〇〇さんが住んでる。息子が高校生だから何年か後に消防団に勧誘しよう」「この畑は△△さんの。××を作っていて、□□に出荷している」等、消防団員は地域のことをよく知っている。見回りしながら「あのナス焼いたらうまそうだなー」「とうもろこしはもう少しだなー」とか言ってる。
また、僕がこの村の風景が好きで、それを魅力にしたゲストハウスをしていると話したら、とても喜び、「蛍がいる場所知ってるか!?」「お客さんが来たら農業体験すっか!?」と言ってくれる。

話は変わるが、自分はいま、市役所が実施している「地域の宝創造プロジェクト」なるものに参加している。訳の分からんファシリテーターが東京から来て、訳の分からんワークショップをしているが、そんなのよりも消防団員の方がよっぽど「地域の宝」を知っていると思う。まさに島人ぬ宝の歌詞の通りだ。

僕が生まれたこの島の空を 僕はどれくらい知ってるんだろう
輝く星も 流れる雲も 名前を聞かれてもわからない
でも誰より 誰よりも知っている
悲しい時も 嬉しい時も 何度も見上げていたこの空を
教科書に書いてある事だけじゃわからない
大切な物がきっと ここにあるはずさ それが島人ぬ宝

https://www.uta-net.com/song/16784/

まとめ

消防団に入る前に色んな人に相談したが、「お前にそんな時間ないだろ」「無理しなくていいぞ」と言われた。その人達は(ダラダラと飲んでいる)昔のイメージで消防団を語っていたと思う。しかし、イマドキの消防団員は時間をやりくりしながら地域のために働く熱い男達だということが実際に入ってみて分かった。 何かあれば公的支援に頼ることが多くなった現代において、地域コミュニティでまずは何とかしようという共助の精神がよっぽど大人だなと消防団員の彼らを見て思う。

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