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風が吹けば酢が儲かる #SS

風神と雷神は普段は仲の良い夫婦なのだが、風神は妻である雷神のやきもちに頭を抱えていた。風神がちょっとでも他の女の子と仲良く喋ると、ラムちゃんばりの高圧電流でビシバシやられるのである。そのため風神の体中には焼け焦げ跡がびっしりついており銭湯でM男と勘違いされ困っている。

風神は「北風と太陽」の寓話が好きで、もめごとを収めるには自分が強風を吹かすよりも太陽さんー天照大御神ーに照らしてもらうほうが早いと考えていた。ゆえに風神は仲の良い天照大御神(女神)に根回ししたりで自身はあまり働かず、宇宙を統べる神様ー天御中主神ーからしょっちゅう怒られていた。

風神が天照大御神と浮気していると勘ぐり、雷神が本気で別れると言って家出したことがあった。慌てて連れ戻し雷に打たれながら土下座し許してもらった。なるほど。天照大御神と一緒になるのもいいけど、でもさ、俺ひとりだと風神雷神図は成り立たぬではないか。

風神は彼なりの処世術を持っているのだ。仕事も人生もうまくわたる秘訣は女の子と仲良くなることなのに、かみさんはわかってないなぁ。それに、かみさんがラムちゃんみたいな可愛い子ちゃんだったらいいけど、あんな鬼瓦みたいな顔しくさってからに・・・

風神は考えた。雷神は健康のためといってしょっちゅう黒酢をストレートで飲む。それに睡眠薬を仕込むのだ。かみさんが寝てる間に女の子と遊びに行こう。そうしよう。

風神はネットで睡眠薬を検索した。インド原産のパッパラパーの木。この粉が睡眠薬の働きをするという。さっそく購入し雷神のいぬ間に黒酢に仕込んだ。夕飯の席で雷神が黒酢を飲む。風神がぎくりとしながら見詰めていると雷神の目がトロンとしてきて何やらあだっぽい。あれれ、かみさんってこんなにかわいかったっけ?

次いで雷神が服を脱ぎ始めた。なんだなんだ。「ねえ、アナタ・・・」雷神が、風神の手を引いて寝室に直行する。そこであんなことや、こんなことを・・・す、すげえ。

パッパラパーの木は適量だと睡眠薬の機能を有するが、微量だと精力薬として働くのだった。これに気づいた風神、黒酢にパッパラパーの粉を混ぜた精力剤を開発。天界でバカ売れしたことは言うまでもない。(906字)



学生時、就職活動でミツカンを受けたのですがその入社試験が変わっておりました。

「風が吹けば酢が儲かる」創作話を400字以内で記せ(40分以内)

字数と時間はうろ覚えです。小説創作に興味のなかった当時のこと、あまり大した話をかけず試験も落ちてしまいました。どんな内容を書いたのかも覚えていない。

印象的だったこと。ミツカン本社は愛知県半田市のJR半田駅の真ん前にあるのですが、駅を降りたとたん酢の匂いがすごかった。現在はもっと強固に防臭対策されているだろうとは思います。

リベンジではないですがもう一回試験受けさせていただけるなら、というていで、文字数2倍になりましたが書いてみました。


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