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製造業のIOT技術の勧め

0. はじめに

 半導体製造で培われてきたIOTシステムを参考に、製造業へのIOT技術導入の参考にして頂ければと言うことで、事前に検討すべき内容から導入ステップまでをまとめてみました。


1.事前検討

1.1 IoT技術のバックグラウンド

 IoT技術の進化により、十分なCPU処理スピードおよび機器間での高速通信が安価に実現可能となったことから、大容量のデータ取得とその利用が、産業全般へ大きな波となって押し寄せています。まず、大手IT巨人がクラウドサービスを整備し、世界各所に巨大なデータセンターが構築されています。次に、インタネット速度の向上、移動体通信技術の革新とWiFiの普及に伴い、インタネットに繋がる利便性が飛躍的に向上しました。その次に準備されたのが、IT技術を利用するための通信モジュールです。これを、業界では、IoTユニットとか、IoT通信モジュールとかと称しています。即ち、この端末は、複数のセンサー信号をユニットに取込、無線Lanもしくは有線Lanで、データ処理を行う場所に転送するものです。この様なハード的な部分の準備は、2017年までに完了しています。
これと並行して、得られたセンサー信号の処理技術として目覚ましい進歩を達成したのが、人工知能です。一般的には、アルファ碁や将棋のponanzaが、知られています。また、顔認証等の画像処理のための人工知能の性能向上も目覚ましい。産業の中では、センサー信号の処理が大きな期待であり、機械学習や強化学習の適用が進められています。各所で、研究が進み、データマイニングの方法やアルゴリズムの整備も進んできており、一般的利用の一歩手前まで来ています。

IOT導入要素

 2017年後半から注目を集めたのは、IoT機器、クラウドサービスと人工知能のデータ処理を組み合わせてオペレーション出来るプラットフォームソフトです。大手IoTベンダーが、各社独自のプラットフォームをリリースし、産業界の顧客囲い込みに入った感がありました。製造業者が、IoT技術を導入しようとした場合、このIoTベンダー大手のプラットフォームを利用した方が、導入の早道であることは間違いのないところでありますが、費用対効果が求められる産業応用であり、特に、中小の企業では、この様なプラットフォームの導入は、金額的に負担が厳しいと考えられます。
 IoT利用形態として、大手ITベンダーが提唱するクラウドを利用する形態と、これに対し、フォグまでの構成で済ます形態が考えられます。生産現場で稼働する装置をエッジと呼び、ここから取集されたセンサー情報を、プラットフォームで集積し、クラウドへ送り込み、各種処理、分析から判断までを実行するのがクラウドの構成です。一方、フォグでは、生産ライン毎に処理サーバーを立てて、プラットフォームを、このサーバーで運用します。対象装置からのセンサー信号は、このサーバーに集約されて、分析から判断まで実行されます。サーバーでの処理能力は限られるため、処理すべき項目は事前に開発されている必要があります。一方、フォグ形態では、ITベンダーで開発された多くのツールを利用可能であり、汎用性が高いが、すべてのデータをリアルタイムでフォグに送り込むことは出来ず、巨大な生産ラインや、高い時間分解能が必要な信号には不向きです。中小企業を考えた場合、監視すべき信号が少ないのであれば、扱う信号毎に必要とされるPCを準備して、個別に監視する仕組みが、ひとつのソリューションと言えます。

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