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『子鬼のつぶやき』

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「クラブBA」会員、にぎた/BAがお届けする短編ミステリー小説。中学3年生の主人公、半田圭司が進める”推理”の行方は—
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2019年6月の記事一覧

『子鬼のつぶやき』 第五話

(→第四話)

小さな冒険

 バスに飛び乗ったところで、圭司は冷房を消したのか不安になってきた。

 外は茹だるような暑さだった。陽炎が揺れ、「よくこんな中を走りまわっていたな」と、自分でも不思議に思えた。

 目的地へは、バスでおよそ二十分ほどのところだ。さすがに車内は涼しかった。人も少ない。運転手さんの後ろに座るおばあちゃんひとりだけ。圭司は一番後ろに座って、窓の外を眺めた。

 田んぼに挟

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『子鬼のつぶやき』 第四話

『子鬼のつぶやき』 第四話

(→第三話)

推理

 部活は昼過ぎに終わった。
 校門の前で、母の車を圭司はひとりで待っていた。

 他のチームメイトたちは「この後どこで遊ぼうか」と、駄弁りながらさっさと帰ってしまっていたのだけれど、タイミングを見計らったようにして、しょうちゃんが声をかけてくれた。

「じゃあ……帰ったら調べてみるね」

 自分たちの他に誰もいないか確認してから、用心深く言った。真っ白なヘルメットに太陽が反

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『子鬼のつぶやき』 第三話

(→第二話)

名探偵

「どうしたの? 調子悪いじゃん?」

 寝不足? 
 休憩中、そう言って圭司の隣に座ったのは「しょうちゃん」こと、上内正平だった。チームメイトであり幼なじみの彼は給水ボトルをくれた。

「ありがとう」

 今時珍しいスポーツ刈りに、昔から小太り気味だったしょうちゃんは、それでいて走るのがチームで一番速いのだから、「爆走戦車」の異名も持っていた。明るい性格のおかげか災いか、

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