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ビジョン・ミッション・バリューズのつくり方

今回は、弊社によく問い合わせがある「ビジョン・ミッション・バリューズ」について私なりの見解を書いてみたいと思います。以前に書いた「会社の内部から変わるブランドマネジメント」では、「組織の上流・内部・外部」の良循環を生み出すことの重要性について触れました。その中でも組織の上流に位置する企業ブランディングをテーマにします。



ビジョン・ミッション・バリューズのつくり方

ブランド視点でのビジョン・ミッション・バリューズの位置付け

ブランドの究極の目標は、顧客や従業員にとって他では換えが効かない唯一無二の存在となること。そのためには、顧客や従業員が信じていることや大切にしている価値観とブランドのそれが共鳴することが大切です。そして、これまでの記事で、「組織の上流・内部・外部」の良循環を回すブランドマネジメントのアプローチをご紹介しました。詳しくは「会社の内部から変わるブランドマネジメント」をご覧ください。

Change Branding! (作成:AKIND 岩野)


今回のテーマである「ビジョン・ミッション・バリューズ」は、組織の上流における企業価値の研鑽を目的とした「企業ブランディング」の指針づくりに必要なアプローチと考えています。企業の指針を策定することは、組織DNAを社内で共有・活用できるように見える化することとも言えます。

社内での対話のプロセスと、顧客のフィードバックを踏まえながら、組織DNAに照らして判断し、自社の北極星や羅針盤を定めるため、ビジョン・ミッション・バリューズの構造を活用して、「なぜ」「何を」「どう」をつなげて、会社の方針を整えます。

ビジョン・ミッション・バリューズの位置付け(作成:AKIND 岩野)

AKINDでは、ビジョンでは「私たちは、なぜこの事業をしているのか?」、ミッションでは「私たちは、事業で何をすべきなのか?」、そしてバリューズで「私たちは、どのように事業を運用するのか?」というように定義をつけています。この「なぜ」「何を」「どう」のそれぞれに対して、企業の実情や方針が説明できるように言葉にすることと、この「なぜ」「何を」「どう」のつながりが誰もが直感的に認識できるように設計することにこだわっています。


ビジョン、ミッション、バリューズに必要な2つの視点

ビジョン、ミッション、バリューズを策定するプロセスや手法は様々あると思います。それに関する書籍も世の中に数多く出版されています。ここでは、私が実務の中でブランディングの専門家として、整理してきたアプローチをご紹介します。

AKINDでは、ビジョン、ミッション、バリューズを策定する際に、必ず2つの視点から必要な要素を紐解くようにしています。それが「戦略的視点」と「意味的視点」です。戦略的視点では、ビジョン、ミッション、バリューズの相互関係がロジカルになるように、この目標や計画を達成するため(ビジョン)に、この戦略を実現し(ミッション)、そのためにこのような運用を実践していく(バリューズ)というような、トップダウン式の思考で様々な要素を整理していきます。こちらは経営コンサルの方なども実践されているようなロジカル思考やクリティカル思考によって、情報を整理していくアプローチとなります。

一方で、意味的視点では、よりクリエイティブ思考や人文科学的な思考が求められます。「事業の成功の先に描いている世界観とは?(ビジョン)」「顧客の期待を超える価値とは?(ミッション)」「創業からこだわっている仕事のやり方とは?(バリューズ)」という問いをたて、情緒的・物語的な要素を整理して、紡いでいくアプローチです。戦略的視点では、ビジョン、ミッション、バリューズの相互関係のロジックについて触れましたが、意味的視点の要素は、ロジカルにつながるというよりも、各要素の背景にある文脈を見出すことが重要です。

ビジョン、ミッション、バリューズに必要な2つの視点(作成:AKIND 岩野)


ビジョンを言葉にする

ビジョンの言語化について、簡単にご紹介します。ビジョンは、その言葉の通り、「どう世界や未来を見ているか」ということを表現することが重要だと考えています。特に先行き不透明な現代では、会社としてどのような社会や未来を目指しているのかという世界観を言葉にして、その背景にある思想や文脈を伝えることが組織文化の醸成について重要だと考えています。

一般的にはMVVと表示するように、ミッション→ビジョン→バリューズという順番で表記されることが多かったと思います。その際では、使命であるミッションが上位概念であり、そのミッションを実現するための自社のゴールとしてビジョンが設定されていました。例えば、「市場シェアNo1.になる」「世界一の〇〇な企業になる」といったような置かれ方です。しかしながら、変化が激しい現代において、このようなゴールの設定は意味を持たなくなり、もっと着実なサイクルが回せるような具体的な成果指標をゴールとしてマネジメントする傾向が強くなりました。また、ビジネスに対してSDGsがやESG投資などが求められてきた背景方、商業や経済という範囲を超えて、会社としてのどのように社会に貢献するのかという存在意義(パーパス)を掲げる企業も増えています。私は中小企業をメインにサポートしていることもあり、パーパスという言葉を用いると複雑になってしまうという点から、ビジョンをほぼパーパスと同じような位置付けで設定するようにしています。

私が、ビジョンを世界観と定義した理由は、マイクロソフトのサティア・ナデラ氏のアプローチを知ったことがきっかけです。ナデラ氏が、マイクロソフトに企業変革を起こし、現在の事業成長の快進撃の起点となったアプローチが「Worldview(世界観)」として、モバイルファースト・クラウドファーストを打ち立てたました。創業時から、デスクトップに対してソフトウェアを売り込むというビジネスモデルで成功してきたマイクロソフトが、当時は、世の中の変化に対応できずいたようです。各部署では、様々な改善は回しているものの、Appleなどの競合が台頭する中、世の中をリードするようなポジションが奪われつつあるような状況でした。ナデラ氏が新CEOに就任後、マイクロソフトの大変革に対する答えは明確でなかった状況の中、ミッションやストラテジーを語るだけでなく、まず「世界観」を語ることにこだわっていました。今、我々がいる世界はどこで、今後ある世界はこうですよ、という世界観を繰り返し社内で語り続けることで、方向性や文脈が共有され、よりミッションが浮き立ってくる。何をしないといけないかというときに、これまで成功したもの、うまくいかなかったもの、取り除かないといけないものが、明確に見えてきたようです。

ビジョンを言葉にするアプローチに話を戻します。戦略的視点を通じて、これまでの古典的なアプローチと同様、会社としての中長期的な計画や経営目標を紐解くようにしています。一方で、意味的視点を通じて、会社としてどのように社会に貢献をし、その先に実現しようとしている社会や未来に対する「世界観」を紐解き、企業の存在意義を言葉にすることが重要だと考えています。そして、2つの視点から要素を整理した上で、戦略的視点と意味的視点のどちらからもしっくりくるような言葉に落とし込んでいくため、クリエイティブの力を借りて、ビジョンの策定を行なっています。


おわりに

ビジョンの策定については、別記事で具体的な事例を交えて説明した方がわかりやすいので、別の機会を設けたいと思います。また、ミッションやバリューズの言語化についても、少しづつ書いていきたいと思います。

株式会社AKIND 代表取締役 岩野翼

<この記事を書いた人>
岩野 翼 | Tasuku Iwano
株式会社AKIND 代表取締役 CEO / 神戸在住 / 二児の父
英国のBrunel University ブランディング&デザイン戦略修士課程終了。2014年に神戸にて株式会社AKINDを創業。ブランディングという手法は、より良い社会を創り出すために貢献できるのではないかと信じて、神戸から新しい試みに挑戦しています。