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バルコナージュはじめました

昔、誕生日の度に小さなサボテンをくれる友達がいた。私がパソコンを使って絵を描くので、側に置いておくと電磁波を和らげてくれて良いとか、そんな理由だったと思う。3度もらって、3度とも枯らしてしまった。サボテンは手間がかからないが、逆に水やりの間隔が開きすぎて、机の上の只のオブジェと化してしまったのが原因だろう。申し訳ないことをした。3度もらう前に、正直に枯らしたと言うべきだった、いや、もしかして言ったからこそ、またくれたのだったろうか。ともかく当時の私は植物に全く興味がなかった。

それが今や、毎日朝食を済ませるとすぐ、いそいそとベランダに出て植物たちの面倒を見るのが日課になった。もちろん、サボテンを枯らす程の腕なので、購入から2週間と経たずにクロッカスが萎れたり、ラナンキュラスが根腐れしたり、根腐れかと植え替えたつもりが逆にトドメを刺していたり(種から育てたズッキーニの苗が、、)失敗も多いが、その何倍も楽しんでいる気がする。日々刻々と変わっていく様子を見るのが嬉しい。ほんの少しの収穫でも、夫と二人で「うちのイチゴ!」「うちのラディ(二十日大根)!」と喜びつつ頂いている(この収穫の楽しみもまた格別で、今は花より野菜がメインになった)。

とにかく知らないことばかりで、何をやるにも実験なのが、自分にとっては良いらしい。どうなるのだろうとワクワクする。先日はアボガドの水耕栽培にも挑戦した。アボガドは種の皮を剥いて、爪楊枝を3方向に刺し、コップの縁に引っ掛けて浮かせ、種の半分くらいまで水を入れる。同時に3つ始めたうちの1つは、爪楊枝を刺した瞬間に真っ二つに割れてしまい、即終了かと思いきや、諦めずにやってみたら?との夫の一押しで続けてみたところ、なんとこの種が一番早く根も葉も出て、群を抜く成長ぶりだった。そこで後の2つも自然に割れるのを待ちきれず、少々切れ目を入れてみたりする現金な自分(苦笑)。今は3つとも根が出たので、土に植えてある。

レモンもアボガドのように食べた後の種の皮を剥いて、小さな皿に湿らせたキッチンペーパーを敷いた上に置き、通気用の穴を開けたラップで包み、2週間ほど経っただろうか。小さい根が出て来た。もう少し待って葉が出たら土に植えてみようと思う。レモンは収穫には10年かかるという話もあり、そこまで期待はしていないが、いずれ観葉植物として飾りたい。

今日は最近元気がなくて気になっていた植物の株分けをした。検索したところ、ピレア・ペペロミオイデスという名前らしい。以前夫の友人夫婦がくれたもので、こんなに長くてハイカラな名前だとは知らなかった。丸い葉っぱが可愛らしい観葉植物だ。"株分け"という言葉も知らなかったし、切った枝から増やす"挿し木"や"挿し芽"という方法もあるらしい。植物をこうやって自分で徐々に増やして行けるなんて感動的だ。

植物のことを知れば知るほど、日常の中のいろいろな物が今までと違って見えて来た。散歩の時に何気なく目にした野花も、一部拝借して挿し芽や挿し木してみようとか、何でも自分で実験して、上手く行くか試してみたくなる。お店で買うより、断然面白い。
そして、植物に触れていると、何だか気持ちがスッキリすることに気がついた。植物から何か良い物が出ているような。もしくは、私の身体の中の悪い物を吸い取ってくれるような。森の中を歩くと清々しく感じるのと同じかな。

こちらでは庭仕事をジャルディナージュ(Jardinage:庭=Jardin)と言うので、ベランダ仕事はバルコナージュ(Balconage:ベランダ=Balcon)と命名した。もちろん造語である。


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