VUCA時代の新規事業の作り方 -多様な価値観と文脈を包摂し、ビジネスの土台に-
武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第14回(10月11日)レポートをまとめました。
今回はデザインファームTakramのディレクター/ビジネスデザイナーである佐々木康裕さんにご講演いただきました。佐々木さんは大手総合商社からデザインスクールを経て、デザイン・イノベーション・ファームTakramに参画されています。
Takram
著書:『パーパス 「意義化」する経済とその先』等
Institute of Design(イリノイ工科大学)での学び
劇的な環境変化のもとで事業を生み出す上で必要なことは2つあります。
①超・多様性
デザイン思考や論理思考その他を有機的に組み合わせた新しいアプローチが必要
②創造性非依存の再現性あるアプローチ
創造性やインスピレーションに依存せず、高い再現可能性を持った規律的プロセスとして新規事業創出を行う
また、VUCA時代の新規事業創出においては、「Mystery」のアプローチを前提として新規事業を創る必要があります。
「PUZZLE」=論理思考・資源投入で解決可能・答えがある
「Mystery」=システム思考・デザイン思考・プロトタイピング・答えがない
総合格闘技化するビジネス / 360度型ビジネス
AppleやTeslaなどのプロダクトが全面に押し出されている企業においても、総合格闘技的に様々な領域をカバーしている事が求められています。技術だけでなく体験の考慮が必要だったり、デザインだけでなく販売手法もよく知っている必要があったり、様々な面における思考やインプット/アウトプットがビジネスの成功において重要になります。
総合格闘技化するビジネス / グローバルアジェンダとの接続
ビジネスやプロダクトそのもの以外に、倫理観や世界の文脈との接続も重要視されてきています。倫理観が欠けることでビジネスの継続が難しくなり、もはやビジネスをする土台として必要なものとなりつつあります。
VUCA時代に人や組織を導くために必要なこと
特に外部から入るときには単発のプロジェクトで導いていくのは難しく、日々のプロジェクトから一旦離れて「グローバル・アジェンダについて考えよう」という一定のテーマを設けて、頭を柔らかくするアプローチを考えられてます。また、その際には多様な価値観を包摂的に取り込んでいく事を意識されています。
デザインの方法の民主化(再現可能)とクリエイティビティの発揮(再現不可能)におけるセンスの重要性
デザインにおいて再現可能であることを目指すとしても、再現不可能なクリエイティビティが重要であるという前提があります。デザインの領域は全て言語で説明しきれない部分もあり、置かれた文脈や人との関係性等でデザインの判断がされることもあります。その際にデザインの意思決定やアウトプットをどう守るか、否定されないようにするかという点を大切にし、再現可能なデザインを目指しています。
感じたこと
VUCAの世界において、デザイン思考やアート思考などの答えのない中で答えを出す事を目指すアプローチが重要であるという考え方から一歩踏み込み、ビジネスが総合格闘技化しているという具体的なビジネスに関わるお話がとても興味深かったです。
今の時代では、一つのプロダクトを提供する事にとどまらず、個の時代、価値観の多様化等の文脈を捉えたサービス提供が求められます。この文脈の捉え方と表現方法が企業の個性となり、継続的な運営において重要になると考えられます。
組織の多様性が企業の継続的な運営において重要だと言われているのも、VUCA時代の文脈に沿った企業経営のあり方ではないでしょうか。組織に様々な国籍・ジェンダー・志向性等の人が集まる事で、多様な価値観を包摂したサービスを提供するための土壌ができると考えます。
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