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手取り12万円だったころに、子どもを持つに至ったわけ/6歳児の考える少子化に対する提案

恵那に移住した最初のころ驚いたことの一つに、子育て世帯の子供の数は3人が標準なのかと思うぐらい、子だくさんの印象があった。

30前後の夫婦でも二人目、三人目という家庭がざらにあって、30半ばのオレに子どもが一人もいない、というのがかえって珍しいように言われた覚えもある。

移住前には、3人も子連れで街を歩く家族を見たことがなかったし(目に入ってなかった可能性はある)、自分の友達もようやく結婚する人がポチポチ現れた感じがあったので、自分の現状に何ら違和感もなかったが、すでに親として酸いも甘いも味わっている恵那の同世代の人たちの肝のすわりっぷりに、若干おののいていた覚えがある。

こんな記事を目にしたので今回は少子化について書いてみる。

少子化・人口減少の良し悪しはわからない。ある専門家は地獄絵図を見るような警鐘を鳴らし、ある専門家は縮小社会の新たな価値観に理想を語る。自分の暮らすこの地域のことで言えば、人が少なくなればなったなりに、それでもここに住もうという人たちがその状況に合わせて、それなりの暮らしを続けていくだけだろう。

そして、この少子化問題について様々な原因が挙げられているが、原因を求めれば求めるほど、当事者を責め立てるだけのことだ。

個人的には結婚・出産は個人の選択であっていいと思ってる。けれど、子どもを持ちたいと思って自然に選択できる環境はもっと整っていいとも思う。なのでその制度的な対策は素早く進めてほしい。

そして自分も何らかの働きかけができたらと思っている。

そこでここでは、結婚や子どもを持つことを、生活環境や経済的な事情などの理由でためらう人に向けて、自分の経験をお話ししたい。
そんなケースもあるんだ、と少し気が楽になってくれたらそれでいい。

手取り12万円の子育て生活

まず、オレは35歳になる年に結婚し、37歳になる年に長男が生まれた。移住して地域おこし協力隊として活動している時期である。

ちなみに、オレは結婚する前まで、結婚願望が全くと言っていいほどなかった。結婚とか人の自由なんだし一生独身だな、と腹をくくってもいた。音楽を続けたくてずっとフリーターでいたことで、その先安定した仕事に就く見込みを失っていたこともあるが、そもそも、一人が好きという傾向がある。

結婚に至った理由については、簡単に言えば、このまま音楽を続けても芽が出る見込みが限りなく遠のいていっていることを自覚したときに、何かしら自分の行動を変えたかった、ということも含まれる。

何より、これから安月給で1からチャレンジしようということを受け入れられる人(妻)に出会えた、ということに尽きるのだが…

さて、無事結婚、移住も果たして、地域おこし協力隊として働き始めたはいいが、この時のオレの月収は15万円、手取りで12万円程度
当然ここから家賃(だいぶ安くしてもらってたけど)、食費(少しは野菜も育ててたので節約になったか)、ガソリン代(車なしでは生活できない)なども出ていく。

妻もパートで働いてたし、まあ贅沢はできないけど、二人でこじんまりと暮らすには十分だった。

それでも、子どもを持つ、ということにかんしては、オレにも、いつかは、という気持ちはあったが、妻もパート休むことになるし、この収入では…とためらっていた。

協力隊の3年の任期後にまた仕事がある保証もない。

しかしそこはコミュニティのつながりの濃い地域のこと。
先にも書いたが、30半ばで子どもがいない、というのは結構浮いてみえるらしい。子どもはまだか、というような、おせっかいも当然あった。

その中でたくさんの同世代や少し上の世代の子育て夫婦と話しをする機会が日常的にあった。
彼らからいつも言われたのは、「なんとかなるよ」ということ。
逆を言えば、本当に無理かなんて生んでみないとわからないだろ、ということ。

そうやって言えるのは、この地域のコミュニティの深さによって、自分の親だけでなく、友人や近所の方々など、たくさんの支えがあるから、多少困ってもどうにかなる、という安心感があるからなのかもしれない。

そんな思いに触れてかどうか、ほどなく子どもを授かった。

公的なサポートも大変ありがたく助かったが、助成があるから子どもを持とうという判断をする人はいなかろう。

子どもを持つ同世代の人たちの話、彼らが子どもといるときに見せる顔、子どもたちの無邪気さ、町に子どもがいることで生まれる人々の温かさ。
そういったものが地域で自分のそばにあって、何かそれがとても素敵なことに思えて、自分が子どもを持つという選択に自然に進んだ
のかなと、今振り返って思う。

困ったら周りに頼る

しかしながらどうやってなんとかしてきたか。そこはオレよりも妻の方に語っていただきたい。

能天気に、少ない収入でも田舎なら暮らせるよねー、なんて言ってそれほど困窮した覚えがない一方、妻は相当苦労されていたようである。

協力隊のときはそれでも定期収入があったのでまだよくて、協力隊後に農業を始めてから1年目はほとんど無収入、2年目以降もじり貧が続いた。

そんな状況で妻はどのようになんとかしたのか。曰く、

・都会ベースの子育て情報を見てたので、もっとお金がかかるかと思っていたが、思ったよりはかからなかった(遊び場は家の周りの自然の中、医療費無料など)。
・子どもの服やベビーカーなど、噂を聞きつけて貸してくれたり、もらえることが多かった。周りに子どもを持っている家庭がたくさんあったので頼れたからよかった。
・それでも将来が不安なので、なんとか自分でも稼ぐことをしていかなくてはと思って、子育ての合間をぬってライティングスキルを学んだり、EC運営を始めた。

とのこと。

支出の少ないと言われる田舎でも、現実的に手取り12万円ではぎりぎり、結局は夫婦でがんばって収入を増やしていく方向へと進んでいった。

「なんとかなるよ」=「そのままでいい」ということではなく、
子どもを持てばなんとかなるように必死になっていくんだ」というのが真意なのだ。

紆余曲折は経たものの、収入は少しずつ増えてきて、昨年には次男も誕生した。

なんとかなるもんだ。

子どもを持つという選択の結果、すくすく育つ我が子たちを前に、独身貴族然としていたこのオレが、本当に大事な存在を自分の人生において得た、という幸せに浸っていることに、しばし気づくのである。

子どもを持つことへの思い込みを外して見えるもの

一概には言えないが、オレのケースから言うと、子どもを持つことをためらうのは、子どもを持つことがどのようなことか知らないからである、と考えられる。
オレは幸い周りを子育て世代の人たちに囲まれ、その様子を見てなんとなくでも体感的に知ることができたのである。

オレがもし結婚しても移住などせずに街暮らしをしていたとしたら、目や耳に入ってくるのは、都会のせちがらい子育て環境のことばかりで、実際の子育て世代と会って話をするような機会も少なかっただろう。

そもそも子どもを目にしない、いることに気が付かない中で、どのようにして子育てすることに安心を得られるのだろう。

その点では、田舎というのは、地域ぐるみで子どもたちを歓迎し、子育てを後押ししてくれる環境にある、ともいえる。家の間隔が広いので、夜子どもが騒いでも問題ない。集落のみんなが子どものことを知っているので、防犯効果も高い。それに当市では保育園の待機児童もない。

田舎の子育てにはメリットデメリットあるだろうが、総じて子育てに向いていると言える。
リモートワークが一般的になれば、子どもを持つために移住する、というのはそれほど突拍子もない選択肢ではないだろう。どうしても今の環境で子どもを持つ自信がなければ、田舎への移住は一考の価値がある。

が、こうした地方でも例外なく少子化は進んでいる。恵那は子だくさんなんて書いたが、出生率などは全国平均レベルの低水準。3人子ども連れが目立つので錯覚しているだけなのだ。そんなに田舎がいいところなら、みんな子どもを持つはずなのに、この矛盾は何なのか。ここら辺について触れると長くなりそうなので、また今度。

要は、あちこちから押し寄せる、このご時勢子どもを持つなんて無理だ、という情報に飲み込まれてしまって、一人あるいは夫婦で結論を出してしまっているのであれば、もっと実際の親子に触れあってみてほしい。

多分大変なこともいろいろ聞かされるかと思うけど、それ以上にこんな風にしてきたとか、大変だけど子どもを持ってよかった、という話も聞けるかもしれない。
決して順風満帆な人たちだけが子どもを持っているわけではないことだけはわかると思うし、それを知ることで気が楽になるかもしれない。

6歳児の少子化問題に対する提案

実はこの話は6歳の息子との話から湧いてきたものだ。

「生まれてくる赤ちゃんが減っちゃってて、そうすると将来、人もどんどん減っちゃっていくんだけど、どうしたらいいと思う?」と聞いてみたら、息子の答えは
みんな赤ちゃんのこと知らないからだよ、みんな赤ちゃんに会いにくればいいんだよ!」と即答したのだった。

この言葉に我が息子ながら感心し、自分自身のことを振り返って、何が彼との出会いを導いたのかを掘り下げてみたことを、書いてきた。

ただやはりまた横のつながりを作るのも大変な時代だ。それをどう解消していくか。

そして思いついたのが、「赤ちゃんとの触れ合い会」。
実際に赤ちゃんを抱っこしたり、遊んだり、親と話しをしたり。この未知なる子どもというものと接してみて、何を感じるか。
迷える人たちの背中を押すことに少しでも役立てないかと、このアイディアを実現できないものか、考えてたら、やはりすでに取り組んでいる人たちはいるものである。

こちらは名古屋で活動する団体さん。

こちらは、婚活イベントに赤ちゃんを登場させたという記事。カップル成立が2~3倍増だとか。

協力された団体さん。

子育てのリアルを知るためにわざわざ田舎まで来ずとも、こうしたイベントを利用するのも手だろう。このご時勢では難しいかもしれないが、いずれまた再開するだろう。

都会だけでない、人口が減り続けるここ恵那でも同様のものができたら何かしら気づきになると思うので、実現に向けて一緒にやってくれる人を探してみる。

当然我々としては田舎での暮らしを伴った子育てのリアルを見てもらいたいと思うので、気になった人は一度我が家に来てみてはいかがだろう。

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