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詩・作詞

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2023年7月の記事一覧

【詩】風キリコ

【詩】風キリコ

墓を素手で磨く

七月の太陽を含んだ御影石

てっぺんから水を少しずつかける

はねた水滴は
速乾性生地のズボンを濡らす

墓石は人肌のぬくもり

撫でて
ぬめりを落とす

話しかける

謝りながら、照れながら

左右対称の花を整える

一際眩しい赤と黄色の髪飾り

いつしか祖母の横顔をみている

夏の午前の墓参り

こどもの頃は
あんなに怖かった場所なのに

風はみせてくれる

囲んだ木々の

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【詩】まつりがおわる

【詩】まつりがおわる

みつきのまつりがおわる

きせつのこてきたい

もうセミまでなかまにくわわって

かけぬけたまつりがおわる

しろいたびはどろだらけ

ねじりはちまき、あせまみれ

わたしのまつりもおわる

きもちのよいつかれにうかれ

せんどうのわたしがはくしゅする

わたしはみおくる

みんなのまつりをみとどける

【詩】らしさなんて

【詩】らしさなんて

らしさなんてふたしかさ

ほんとうのじぶん

わたしらしさに

おしつぶされないで

わたしらしく

ありのまま

それらしいことばに

まどわされないで

かたなのはもん

そのうつくしさに

おだやかななみは

ゆびさきをまっかにそめる

らしさなんてふたしかさ

ほんとうのじぶん

すべてをみせるひつようなんて

ない

らしさなんてふたしかさ

わたしらしさに

おしつぶされないで

【詩】P→

【詩】P→

ひとのながれをながめてた

P→

入口からてんてんと
時にぞろぞろと

自動車が
グワッタン
上下に揺れる

徐行で身構えた運転手の顔を
遠くからながめてた

P→

出口ではカチカチ
方向指示器がケツを振る

P→

二台三台つらなって
よめない時間に重なるお客

ひとりひとりに意思があり
なんやかんやと切れ間なく
駐車場にひとがくる

P→

ひとがきてるなと
ただ意味もなくながめてた

【詩】夏の行進

【詩】夏の行進

読めない名前に囲まれて
いつの間に
こんなに遠くまで来てしまったのか
遡れるまでたそがれて

夏の行進、出発だ

吹奏楽の太鼓にあわせ
手を叩く
時折鼻の下の汗をハンカチで拭い
委ねられるまで漂って

夏の行進、休みもせず

若い力で膨れ上がる入道雲
耳に線を引いたひこうき雲

夏の行進、胸を張れ

【詩】青を探す

【詩】青を探す

早熟で成熟

成熟で早熟

そこに青を探す

見つけなくてもいいのに

喜び方に

悲しみ方に

その眼差しに

かわいい青を探す

見つけなくてもいいのに

【詩】朝の雨に

【詩】朝の雨に

朝の雨に
全身ずぶ濡れの青年が
自転車を立ち漕ぎしていた
黒いトレーナーに黒いカーゴパンツ
黒いスニーカーに黒い髪

朝の雨に
全身黒一色の青年が
自転車を立ち漕ぎしていた
黒い服は雨を含み重たそうだった
唯一青年の短い黒髪だけ雨粒に光っていた

頭を振ると寝ていた髪がピンと立った
なんだか青年は気持ちよさそうだった

雨は降ったり止んだりを繰り返した
雨一色の一日だった

私は青年の背中を見送っ

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