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うれいのひとみ 〜解決の実〜
あるところに、一人の役者さんがいました。
彼はみめうるわしく、おしばいをする時はいつも主役でした。
彼のひとみは、まるで魔法の力をもっているようでした。
彼に見つめられると、たちどころに恋におちてしまうのです。
それは、女の人にかぎったことではありません。
男の人でさえ、とりこにしてしまうのでした。
彼の友だちの役者さんたちは、彼をうらやみまし
黒猫はかく扉をたたく
1.
あの家をみつけたのは、本当に偶然だったのかな。
ほんの小さな選択で、その後の行き先が大きく違ってくることは、誰にだってある。
それが、偶然か必然かなんて、後になればどうでもいいことかもしれない。
あの日私は、前日に読み終えた小説の世界を引きずっていた。
きっと、半ば夢うつつだったのかもしれない。
その小説には、黒猫が出てきた。
黒猫が棲んでいるのは、古い日本家屋だ。
食べてみないとわからない
1.夢ばかりなる
こんな夢を見た。
三人で、パウンドケーキを食べている。
一人は、私。
一人は、夫。
そしてもう一人は、ネット上の彼だ。
私は時々、ケーキを焼く。
手作りするが、レシピは簡単な方がいい。
そういうわけで、混ぜて型に流し込んで焼くだけのパウンドケーキが定番になった。
今日のケーキは、チョコ味の生地の中に、オレンジピールと胡桃
In Padisum 〜 イン パラディズム
物語をつづる若き友に捧ぐ
1.
ここしばらく、初夏の陽気が続いている。
湿度はまだ低い。
日中は急に暑くなったりするけど、夕方になると、風が渡って気持ちがいい。
私は近頃、この公園のベンチで過ごすのが好き。
林は木々が生い茂る、鳥のサンクチュアリだ。
おしゃべりな鳥たちが、さえずりを交わす。
『ききみみずきん』を持っていたら、何て言ってるのか、わかるかな。
ベンチの前には