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【溺れる君】よう似とるわ

一番最初

 「あめんなほ!!」

ようちゃんとたのしそうに話していたイチさんはぼくをにらみ、かみつくようにさけんだ。

「ごめんなさい」

ぼくはビクビクしながらあやまる。

「でもな、市知……夕馬のこと、好きやろ?」

ぼくのうでにアカいマントをとおしつつ、トワさんは半笑いして言う。

「あい! あいしゅき!!」

しろいはを見せて笑ってくれたからぼくはありがとうと言ったんだ。

「今は聞こえへんけどな、雰囲気でわかるんやて」

トワさんはぼくの髪にやさしくふれて言う。

「まぁ、真昼みたいに手話してくれたらもっと会話出来るけど……なぜか、夜彦にはさっきみたいに噛みつくから誰でもええねん」

みてみ? と言われてよこを見ると、たのしそうに話しているようちゃんとイチさんがいた。

「何回でも来て話してやってや? もちろん、わしもよろしゅうな」

シッシッと笑うトワさんにうんと返事をすると、ええ子やと髪をザツになでてくれたんだ。

「夕馬……もしかして人間か?」

ぼくの顔に触れながらふかみのあるひくい声で言われてたから、ドキッとした。

「人間臭いからもしやと思ったんや。大丈夫、わしも市知も同じやから」

ポンポンとあたまをたたいてやさしくほほえむトワさんにうんとすなおに言うと、ほんまにお前は……とまたさらりとなでられた。


「それにしても自分ら、よう似とるわ」

「「ほくろ?」」

トワさんのことばへのハンノウがおなじで、ぼくははずかしくなって顔があつい。

いや、と言ったトワさんはぼくの顔を両手で上から下になぞり、また上に持ってきた。

「二重でくりくりした瞳」

おさえられるぼくの目。

「尖ったような高い鼻」

ふにふにされるぼくの鼻。

「下が厚い唇」

つまれて伸ばされ、はしたらぷるんとなるぼくのくちびる。

かがみでまじまじと見てみると、ワルい顔はしてないなとぼくははじめておもった。

言われて気づいたのは、トトとカカのトクチョウもぼくは持っているんだということ。

それがほんとうなら、ぼくは2人の子どもだと見られるんだとわかってうれしくなった。

「拾ってきたと聞いたけど、あの肝っ玉母ちゃんが無意識に産んだんちゃうか?」

トワくんがおせじかもしれないけど、うれしいことを言ってくれてこころがあたたかくなる。

「カカならありえるかも」

ようちゃんもうれしそうに笑っている。

「それならあとは髪型と髪色やな……心配すんな、ちゃんと変えてやるわ」

トワくんはまた目をクシャッとして、髪をスパスパときっていく。

パサパサとかるくなっていくたびに、本当に変わっていっている感じがした。

さよなら、さびしい1人のぼく。


 「朝日家の髪色は惑星をモチーフにしてるんやっけ」

「別にいいよ、制限しなくても」

「ピカピカがひひとおもふよ!」

ぼくにここの人たちはぼくのことをよく考えてくれる。

だから、ぼくも入りたいんだ。

ジブンのことをジブンでも考える人になるために。

「ピカピカだから、金色とか?」

そう言っただけなのに、3人がぼくを見る。

「なんかぼく……変なことを言った?」

ビクビクしながら言うと、3人ともやさしく笑った。

「ええわ……ゴールドに決まりな。ということは、短髪にするわ」

おおきにとやさしく言ったトワさんはぼくの顔をかがみにむけ、さっきよりダイタンに髪をきっていく。

「この街の奴らはちゃんとわかってんねん……目に見えないものの方が大事なんやって」

トワさんはぼくに教えるようにテイネイに言う。

「俺らが生きてきた世界とは全く違う楽園みたいな場所や……たくさん学んで、自由に生きろ」

ふっと笑うトワさんの顔はおとなで、とてもカッコよかったんだ。

続き

番外編

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