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【溺れる君】好みの女装男子

一番最初

番外編



 今日は17時に帰ってきたカカのお手製ミートソースパスタが晩ご飯。

曇りの日など観測不能な時は早く帰ってくるから、その時はトマトが際立つナポリタンやミートソースパスタを作ってくれる。

それに、みんなで晩ご飯を食べるからとても楽しみなんだ。

ナポリタンは2回食べたけど、ミートソースパスタは初めて。

トマトソースが濃い上に、みじん切りされたナスや玉ねぎ、ピーマンの食感がいい。



 「懐かしい……あのバーと同じ味がするわ」

口中にトマトソースを付けながらトトが言う。

「当たり前でしょ、あそこのレシピを真似てやったんだから」

カカはふふんと鼻を鳴らしていた。

バー……今日聞いてきた話に出ていたと思い出す僕。

「トト、カカ……その話、詳しく聞かせて?」

辛い話かもしれないと思いながら勇気を出して言ってみる。

「ぼくぅもききた~い!」

「やつがれも」

「どっちの方がかわいかったか、教えてよ」

真昼も夜彦もようちゃんまでもノッてきたから、カカは1枚の写真をテーブルの真ん中に置いてくれた。

そこには黒髪のボブの女性がピースをして映っていた。

左側の女性は背が高くて肌が白く、大きな瞳で妖艶な笑みを浮かべて黒いドレスを身に纏う綺麗めな感じ。

右側の女性は手足は長いものの小柄で、くりくりした瞳でアヒル口をしたピンクのドレスを身に纏うかわいめが感じがした。

たぶん、左がトトで右がカカな気がするんだ。

「かわいい~」

黄色い声を上げる真昼。

「男子とわからないくらい見目麗しい女子でございます。今出会えばお付き合いを申し出たく存じます」

「やーひはどっちえらぶん?」

「酷なこと言っちゃダメだよ、マーにぃ」

男の子だなと僕は見守る。

「んん!  選べないでございます」

優柔不断な夜彦はしょんぼりしてしまった。

「えー、ぼくぅはきまっとるよ」

「俺もさ……ダントツじゃん」

真昼とようちゃんはどっちが好みなんだろうと固唾を飲む。

僕も選べないのに。


 「ゆーたん!」
「ゆうちょやんな?」

えっ、女装の話してたんじゃないの?

「そんなの、狡いでございます!」

うん、夜彦の反応は妥当だよね。

「見ればわかるさ、明日は女装コンテストね?」

むふふと含み笑いをするようちゃん。

「ぼくぅ、おんなもののふくもめちゃあるからなぁ……かくごしとき」

ニヒヒと笑う真昼。

トトとカカはどんな顔をしているか、ビクビクしながら見ると、2人と穏やかに笑っていた。

「きっと私たちよりかわいいのでしょうね」

「そりゃそうやろ。おれに似てな」

「あら、私も負けてないわ」

本当ににぎやかな人たちだ。



 「いつもトップ争いをしていたのよ。よく一緒に指名されるから『桃香(ももか)』なんてコンビ名まで付いたんだから」 

「桃実(ももみ)と香凜(かりん)でな……一緒に歌って踊ったし」

話は写真に戻り、トトとカカの言葉に耳を澄ます。

トトが桃実、カカが香凜なんだ。


「でも、下手くそだったわよね」

「しゃべりは大得意やったけどな」

はっず!と顔を真っ赤にするトトと饒舌に話すカカ。


 「まぁ、私の方が今でもかわいいわよ」

ね!とトトにアピールするカカは本当に女性に見えた。

「お、お……おん」

戸惑いながら肯定したトトは静かにまたパスタを食べ始めた。

「もちろん、夕馬もかわいいわよ」

僕は予想もしてない言葉だったから、ビクンと身体が跳ねる。

「夜彦も真昼も陽太もかわいいけど、あなたもだからね」

血が繋がっているからと小さく言ったのは僕だけにしか聞こえていない気がした。

「朝日夕馬……私の自慢の息子なの」

右目でウインクするカカに僕は素直に受け入れたんだ。

続き

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