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短編小説

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#電車

電車で釣りをする青年【短編小説#14】

青年は電車の中で釣り糸を垂らしていた。

窓を見ながら、冬の15時の空はなんだか寂しい色をしていると思った。

すると、隣りに座っていたおじいさんが声をかけてきた。

「どうですか、釣れそうですか。」

釣り糸を垂らしているが、ずっとひっかからないと答えた。何かが釣れそうな気がする。いや、釣れると信じている。が、まだ釣れそうにない。

「この先、この電車は海の上を走りますよ。そこまで行くと釣れるか

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夢を売買する人【短編小説#6】

夢を売買する人【短編小説#6】

 人が見た夢を売買している人がいるという情報を仕入れた。情報を教えてくれた人によれば、その人は駅のホームで商売をしているらしいのだが、出没する駅はコロコロと変わるらしい。安い夢だと100円前後で購入できるとのことなので、場所が移動する前に興味本位で行ってみた。

 ある駅のホーム、1番奥の椅子にその人は座っていた。声をかけるまで確証はなかったが、なんとなく夢を売買してそうな雰囲気を醸し出していた。

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寝心地が良い場所【短編小説#5】

寝心地が良い場所【短編小説#5】

 やばい、これは寝過ぎた。と、目を覚ました瞬間にOversleepを直感し、体をぶわっと起こした。しかし、周りを見ると自分の部屋ではない。自分は一体どこで寝ているのか。そうだ。俺は美容室でシャンプーをしてもらっている内に寝てしまったんだと思い出した。しかし、周りを見渡しても、美容室には誰もいない。部屋は真っ暗。時計を見ると、深夜2時だった。
 
 おいおいおい、放置して帰るとかあるかよと思いつつも

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