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論文の要約

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アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
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2023年12月の記事一覧

【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】ハイリンヒ・リュッツエラー(川上実訳)「装飾ーヨーロッパ美術とイスラム美術の比較ー」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp6-19(1986)

【要約】

本稿ではヨーロッパとイスラムにおける聖堂などの建築に施された装飾を分析することによって、西洋や中東といった「装飾」の捉え方の違いを明らかにすることを目的としている。ヨーロッパにおいては「装飾」とは、ある物に対して付加的なものであるということが一般的な理解である。
しかしイスラム文様などにみられる装飾は、西洋的な概念に囚われず装飾が建築を覆い隠すように支配している。このような装飾に対する

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浜田明範「存在論的転回とエスノグラフィー~具体的なものの喚起力について~」

浜田明範
「存在論的転回とエスノグラフィー~具体的なものの喚起力について~」
立命館生存学研究

本稿は、人類学における参賀と観察、交流と記録をしていく「エスノグフィー」と呼ばれる研究手法について、主に「存在論的転換」と呼ばれる動向のなかでどのような意味を持ちうるのかを考察したものである。

 1.存在論的展開の広がり

人類学の存在論的転回の動向は2010年代といわれている。その火付け役となった

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ルーシー・R・リパード「美術の非物質化」の要約

ルーシー・R・リパード「美術の非物質化」の要約

本稿は、1960年代以降に発生したと言われている「概念芸術(イデアルアート)」についての考察を行なっている。本稿では、この概念芸術が作品の物質性をなくし、非物質化を呼び起こすものであることを主張している。この非物質化によって、作品の中でオブジェは否定され、全く廃れてしまうだろうと予言している。

まずリパードは、概念芸術の方向性を、観念的なものと行為的なものに分けた。観念的な芸術は、情感を観念に置

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【要約】田中理恵子「「生成」としての音楽」

【要約】田中理恵子「「生成」としての音楽」

【要約】

本稿では、文化人類学のモノや「生成」する議論を援用しながら、ラテンアメリカの音楽が「生成」されるものであることを考察する。この考察では、アルゼンチンやキューバ地区(ラテンアメリカ)のオーケストラやオペラが「オーケストラになる」「オペラになる」といった「生成」される状態を明らかにしていく。

文化人類学では、ボアズやストロースなどが芸術作品を分析しているにもかかわらず、あまり芸術作品を研

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【要約】日高優「映像大量消費の時代における脱社会的社会批判」2012

【要約】日高優「映像大量消費の時代における脱社会的社会批判」2012

【要約】

本稿では、アンディ・ウォーホルの作品や彼が評価された1950年代の作品を分析することで、当時のポップアートがどのように評価されているかを明らかにすることである。機械的反復や社会への無関心という視角から語られることの多いウォーホルであるが、そこの視角から語るのではなく、ウォーホルの社会批判的な態度を見出し、現代にも感じられるアクアリティ(現実性)を探ることを目的としている。
筆者は、ウォ

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