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日活ロマンポルノ『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』ネタバレ感想/スリルと快楽の果て

1971年制作(日本映画)
監督:蔵原惟二
キャスト:蔵原惟二、吉沢健、瀬戸ユキ、高橋明、梅谷徳彦、溝口拳
配給:日活

(C)日活

(監督・俳優名は敬称略)

ラブ・ハンター 熱い肌』にも書いたが、私は田中真理が好きである。ということでまたしても田中真理出演作から、デビュー作の『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』を紹介する。

監督は、蔵原惟二。夏純子主演の『不良少女 魔子』(1971)で監督デビュー。『不良少女 魔子』は、日活がロマンポルノに移行する前の最後の作品である。脚本には長谷部安春(ペンネームの藤井鷹史名義)も参加した。題の通り不良少女の青春モノであるが、キッと睨みつける夏純子の存在感が素晴らしい。

また蔵原惟二は、石原裕次郎、浅丘ルリ子の出演作を数多く撮った蔵原惟繕監督の実弟でもある。蔵原惟繕監督に石原裕次郎、浅丘ルリ子共演作と言えば、『憎いあンちくしょう』である。これは素晴らしい。駆け抜けるようなオープニングのエネルギッシュさは、終盤まで途切れることはない。大人の恋愛とかこつけていても、若い純なカップルを前にハッとさせられる。

話はそれたが、『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』に戻ろう。『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』は日活がロマンポルノに移行した初期の作品であり、田中真理のデビュー作でもある。

結婚を前日に控えた内村美奈(田中真理)は、恋人であった尾崎と最後の夜を楽しんでいた。帰りの車の中で尾崎は結婚祝いだと、自分と美奈の行為中のテープを送る(何とも悪趣味…)。美奈は嫌がり止めようとして一人の男を轢いてしまう。

思わずその場から逃げ去った2人であったが、美奈はまだ生きていたら病院に連れて行かなくてはと引き返そうとする。すると尾崎はたかが遊びの相手の面倒ごとに巻き込まれてはかなわない、と本音を吐露する。

遊び合い程度に思われていたことにショックを受けながらも美奈は引き返す。轢かれた男・亮は実のところ大きな怪我をしているわけでもなかったが、美奈が引き返してきたのを見て死んだふりをする。美奈は焦って湖に隠すべく車に男を乗せる。

美奈は何とか亮を湖に捨て帰ろうとするも、その様子を見ていた男に脅され犯されそうになる。そこに湖に捨てたはずの亮が…(実際何ともなく生きていたのだから当たり前だが美奈はそのことを知らない)。なし崩しで体を重ねてしまう亮と美奈。

美奈は家に帰って結婚式に出なくては、と思いつつもスリルを追い求め生き急いでいるような亮に惹かれていく。もうどうなってもいいと身を投げ出したい欲求に駆られる。それは美奈が尾崎に求めていたものでもある。

冒頭、美奈は結婚相手のことを愛しているわけではない、このままどこかに連れて行ってよ、と口にしている。詳しい説明があるわけでもないが、大方親が決めた結婚なのであろう。尾崎にはあっさり関係を断ち切られた美奈であったが、亮となら全てを投げ出せる気がしたのだろう。実際、刹那の快楽と共に美奈と亮は全てを手放す。

快楽とスリルの関係性について描いた映画といえば…デビッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(1996)がある。

倦怠期の夫婦が事故に遭ったことにより、倒錯的な性に目覚め始める。事故の瞬間にエクスタシーを感じ、事故による生々しい傷を愛でる。これはあまりにも倒錯的すぎて、『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』はもっと通俗的なスピード狂に近いエクスタシー程度ではあったが、ラストの展開はどこか『クラッシュ』に近いものもある気がした。

退廃的で生き急いでいるような、とんがった青春映画を描いてきた日活映画らしいロマンポルノ版青春映画である。ロマンポルノ初期ということもあるのか、性描写にこだわってねっとり描写することはなく、青春映画の延長線のような描写程度であった。

見出し画像(C)日活

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