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[エッセイ] 沼の底から出ておいで


ちょっと…
もしかして…わたし…
無駄に落ち込みたいんじゃない?

なんて、どこから降ってきた言葉が妙に腑に落ちた

本当は、前から薄々気付いていたんだけど

人生のどの地点でつけた癖だったっけ?

と気付けば日常になっていた落ち込み癖の大元を手探りで探す



私は自分の人生で定まった自分と言う物を感じた事がない

それもそのはずで、誰に育ててもらうでもなかった心を周回遅れで自分自身で少しづつ育てている未完成の人間だからだ

自分自身でも、本当の自分がどれかなんて分からない

そんな自分は周りから見れば更にちぐはぐで
人により私の印象はかなり異なるよう

真面目と言われたかと思えば、自由人と言われ
優しいと言われたかと思えば、怖いとも言われ
無邪気と言われたかと思えば、大人びているとも言われる

つまりは、人生で拾って来た自己のカケラがきっと本来の性質と随分と乖離していて
それが、こんな落ち着きどころのない一貫性のない自分を作り出して来たのだろう

最近、息子にこう言われた
ー冷たいおばあちゃんになりそう

その言葉には
内心見破られたとハッとし
強く同感したのだ

そう、私が知っていた自分は冷たい人間だった
無口で自己の世界で完結している小さな女の子
今の自分よりも、随分と大人びている

小さな事でくよくよとするタイプでは無かったし、どちらかと言うなら気は強くない物の
自分の興味のない物事には全く関心を持たない子供だった

それでも、いつからか小さな事でくよくよし
時と共に、なよなよとした心持ちになり
まるで豆の木がもやしに退化する様な逆戻りしたような人生で
自分とは何かが分からなくなっていた


どこからか降ってきた言葉は
そんな、元凶を思い出させる

小さな子供が、ひとり難題を解く時
思いもよらない解決方法を採用するもので

幼い頃に自分の身に起きた出来事を自分自身の力で解決しようとした小さな私は
不幸をドラマチックに演出することにしたのだ

不幸も悲しみも、ドラマチックに感じて仕舞えば
どこか不幸では無くなる
映画の中では涙さえも美しいように
落ち込んでいる自分、あながち悪く無いぜ
と主人公にでもなった気分で不幸を楽観的に捉える事を採用したのだ

そうしているうちに、いつの間にか役に食われた不完全な女優は
次々に小さな不幸に敏感になり
クヨクヨと悩むことが癖になっていた

俗に言う、悲劇のヒロインの代償なのかもしれない



そんな事を思い出したのは、最近あったある出来事がきっかけ

人も歩けば、悪人に当たる

そんなこんなで
最近、自身の危機センサーが強く反応する人に出会った

その人は噛めば噛むほど明らかに危険な匂いが漂って来て
言葉を拾えば拾うほど、その人の意図が垣間見えて来た
それはこれまで、私が同じような危険性を感じた人と同時じ匂いだった

自分を保つ為に、よりたくさんの自分の生きる目的を必要とし
その手段を身近なところで済まそうとしている人だと私は感じた

世の中には自己を保つ為に周りを病気にしてしまう人が居るのを知っている

世話をする事で自己価値を保ち
自己価値を保つ為に献身を装い他者を壊すのだ

私の感じたその匂いには、誰彼構わず取り込み
自分の精力を吸い取ろうとする怪しい意図を感じた

私は、その人が現れた時
同時に、心地よい人との関わりがもう一つ始まったこともあり
自分の越えるべき何かを認識した気がした
そして、ある新しい誓いを立てた

ー今までの人との関わり方を卒業する

そう、新しい自分を作ってみる事にしたのだ

風の様に軽く、表面だけを撫でるように関わり
ハッキリと意思を伝え
きっぱり断る
それでいて、めげずにポジティブに自ら接し続けた

すると…その人は顔を引き攣らせ
居心地が悪そうに、自ら離れて行く

これは私が同じような人と関わった時に知ったこと
ネガティブな沼から自ら出ることを諦め、ネガティブに棲みつくことを決めた人は
ポジティブなものが嫌いなのだ

つまり、ネガティブにのまれている人と言うのは
カラッとして、さっぱりと自分の意図を流されてしまう
ネガティブなペースに飲み込めないポジティブな人が苦手で
太陽の日に当たることを諦めているから、太陽が嫌いなのだ

沼の底に仲間を作ろうと必死だったに違いない




そうして、私は何かを思い出した

自分の根っこの部分を

ああ…こんなんで良かったのだと

どうやら暗い映画も終焉のようで、エンドロールが流れ始めたような気がした



明るさや強さ、それは思い出す物なのかも知れないとそう思った

いつの間にか、体にこびりつけて来た
ネガティブと言う汚れをもう一度落とす事で自分を沼の底から救ってあげる事が出来る

陰は陰を好む
だから、決して陰を演じ
のまれてしまうもんじゃ無いなと反省したりして
息子に言われた言葉が、心の底にいる自分を手招いている様に感じた

この世界で生きて行く為に
私は家族皆で強さを思い出したいと思っている

強く無くてもいい
優しい事は素晴らしい
だから、絶対に失ってはいけないものだ

それでも、自分を壊そうとする人に
決して着け入らせる自分になってはいけない

優しさは、どこにでも配ってよいものではないから場所を選び大切に使うことを約束して

誰にでも優しい事よりも
自分のためになる事を

沼から出ておいで
強く、軽く、明るく、優しく

それは、優しい人しかできない事



akaiki×shiroimi

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