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RR#1 30年前の元結婚相手から突然のFBメッセージ 『ルビンの壺が割れた』

 


Reading Record・・略してRRを書き記します。

#1 『ルビンの壺が割れた』

著者:宿野 かほる

読みやすさ ★★★☆☆
面白さ  ★★★☆☆
衝撃   ★★★☆☆
気持ち悪さ★★★★☆

-あらすじ-

一人の中年男性がフェイスブックで偶然、28年前に結婚するはずだった女性を見つける。二人はメッセージで、少しずつ過去の思い出を送りあっていく・・
28年前になぜ結婚できなかったのか。なぜ二人は別れ別れとなったのか。
少しずつのそやりとりで過去は、異様に、明かされる。

-ここから感想-

※ネタバレ含みます※







フェイスブックのメッセージ機能という現代版の「書簡体小説」で話は進みます。

中年男性「水谷」と、メッセージを受け取った元結婚相手「美帆子」は、50代だからか、非常に丁寧な文で手紙のようにメッセージ送り合っています。
SNSという機能を使い慣れていないことが見て取れるように、特に「水谷」は長文で詳細に昔の思い出を「美帆子」に送ります。

最初は、何かのどうしようもない理由で結婚を放棄せざるを得なかったのではなかったというような、なんとも切ない恋物語なのか、と思わせてくる。
が、あらかじめ小説の帯で「どんでん返し!」と書かれていては、そうとは信じられない訳で・・

半分も読み進めないくらいで、不穏な空気が流れてくるのに気がつきました。
「人に聞きたいことがあるときは、まずは自分から」とどこかで聞いたことがある自分は、私もやったことがある手かもしれないと感じました。

そんなに親しい間柄でなければ、まず自分の情報を相手に伝えて警戒心を薄れさせれる、というのなこと、したことある人いませんか?

また、聞きたいことがあっても、途中まで気になるそぶりをしておいて、「いやいや、言いたくなければ言わなくて言いたくないなら言わなくてもいいんだけどね」と付け足す!

(この手は、されたことはあってもしたことはないのですが)

30年も前に結婚放棄をされた相手の、いろんなことを聞き出そうとしているようなところが気味悪さを感じ始めました。
ちょっとばかし、中年男性のおじさん構文的な、文字になるとなぜか饒舌に、執拗になる男性の性質のためかとかなりの偏見を持って、その性で気味悪さを感じているだけかもしれないと可能性をいくつか用意しながらも、なんというこぞわぞわしながら会話を読みます。

「美帆子」さんから返信がある時はほっとして読み進められました。
この男性もかつては、羨望の眼差しを向けられるような、才と人望ある青年であったと思い浮かべました。
その逆に、「美帆子」さんから返信が途絶える時は、大概「水谷」が踏み込んだ質問をしている時だったため、何か「水谷」はやらかして警戒されているのではないかとはらはらしていました。

ラストに向かうにつれて、「水谷」も「美帆子」も決して誰もが羨む人生を送ってきたとは到底思えない道を進んで来たことがわかります。

ただ、それは二人それぞれが選んだ道であり、「誰かのせい」は決してできません。

そんな「美帆子」は今では幸せな家庭を持つことができたということ。
一方「水谷」は、自分が実行した犯罪行為も未だ「誰かのせい」にしたいという気持ちを持ち、少なくとも幸せではなく満たされない気持ちから犯罪に手を染め、最後は悪魔にしか見えなくなります。

-ラストの感想-

「美帆子」を勝手に、波瀾万丈な人生を進んで、全てを悟ったご婦人と上品さを付け加えていたこともあってから、最後の一言には余計に驚倒してしまいました。

そして、よくぞ言ってやった!と心の中でガッツポーズが出ていました。

結婚直前にて、とんでもない悪人犯罪者だとわかり逃げた「美帆子」に改めてほっと胸を撫で下ろしました。
順番は逆ですが「優子」さんの悲しい知らせにも背筋が凍りました。
もし、「美帆子」が「水谷」が改心したの誤った認識をしてしまっていたら、もし名前を教えてしまっていたら、もし住所を教えてしまっていたらと思うとゾッとします・・

-最後に-

面白いんですが、私には終始気持ちが悪かった作品でした・・
性的倒錯が、これはフィクションでもノンフィクションの事件を思い起こされ胸糞悪さを勝手に倍増しておりました。
ラスト「美帆子」の言葉を同じく叫びたくなりました。
「水谷」にの中には、羨望の目で見つめられていることから悪魔が棲んでいたと思うと本当に恐ろしいですね。

しかしながら、めちゃめちゃ読みやすい!
「書簡体小説」は多分1,2冊くらいしか読んだことないのですが、この作りが気持ち悪くとも読みやすくさせているのでしょうか。
相手の返事はいかようなものなのか!?とあっという間に読み終えてしまいました。


thank you for the wonderful story !




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