「”丁克(ディンコォ)”家庭」 --揺れる中国人の家族観
最近、中国の方と話をしていて、ん?と聴き取れない言葉があった。
ん?「丁克家庭(dīngkè jiātíng=ディンコォ・ジアティん)」?
「ごめん。聴き取れなかった。”ディンコォ”って何?」と聞くと・・・
ん?あっ、思い当たる言葉がある。
そして、どんな字かと聞くと、「丁克」だという。
これは漢字には意味はなく、外来語に、似た音の漢字を当てるパターンだな。
うん、絶対に、あのことだ!
そうか。ディンクスのディンクという音を「丁克(dīngkè」という漢字であらわしているのか。
それにしても、DINKsなんて、日本ではもう何十年前に流行った言葉だろうか。今やもはや死語の部類だ。
そりゃそういう夫婦もいるだろうし、今やもっといろんな家族の形態があり、DINKsという言葉自体に注目が集まる状況では全然ない。でも、その方曰く、中国では最近結構よく使っている言葉だという。
中国語のサイトで見ると丁寧に説明が載っている。
このサイトには、解説動画がいくつかある。
最初の二つは、言葉の意味や由来を説明して、色んな価値観がある、としている。
しかし、三つ目の女性がしゃべる動画は、DINKsの家庭には、真っ暗な未来が待っていると言わんばかりの表紙だ。
まず先にお断りをすると、私の持つ価値観とはあまりに違い、紹介するのも辛いものがあるが、中国ではネットに載せるものも、削除するものも基本当局の方針が関わっているから、そこにどういうものが載っているかの記録として、敢えて書いておく。
読んでいて嫌な気分になられる方は、ここまでにしてください。すみません。
この女性は、まず、DINKsだと、歳とってから家庭の楽しみは得られませんよ、とまで言い切る。
そして、誰も自分の面倒見てくれませんよ、と言い切る。
さらに、子供がいないから結婚生活が不安定になることが多い、とまで言い切る。
なんだこれ。ひどい論理だ・・・
でも、伝統的に大家族を大切にする国で、特にある年代以上の保守的な人たちには、DINKsの発想は受け入れられないと思う人も少なくないのだろうか。
いや、私は、それよりも、政権の方針と関係があると思う。
これから加速する少子高齢化に危機感を抱いて一人っ子政策を見直したことにもわかるように、さらに強大な国を目指す政権としては「丁克家庭」が増えてもらっては困るんだろう。
このあとにも、どんどん関連動画があがってくるが、同じように「”丁克家庭”だと老後大変なことになりますよ」というものだらけだ。「色んな家庭の形がある」などというものも並べて「多様性を大事にしている感」「皆が自由に動画を上げている感」を出してはいるものの、基本「DINKsなんて悲惨なことになる」というトーンのものばかりで、当局の思いはやはりこうした世論形成にあると思われる。
でも、先ほど紹介した動画のコメント欄を見ると、この女性の説に対して、ボロクソに批判がたくさん書かれていて、それは消されていなかった。「社会の底辺にいたら、子供作りたくても作れないよ」という声も。
しかし、今中国社会を分析しようとしていて、はっと思った。振り返ってうちの国はどうだろうか、と。家族観をめぐり、いろいろ問題も起きて、異なる意見の間には接点が全く見えないような状況になっているではないか。
今、日本も中国も、事情は違えど、家族の在り方をめぐって大きく揺れ動いている時なのかもしれない。
私としては、どこの国でも、どんな考え方の人でも、制度や伝統と言われるものの下で苦しむ人が1人でも少ないように、そして幸せを感じる人が1人でも多いように、と願うばかりだ。
個人の幸福追求の権利と、国家の長期的な少子化対策をごっちゃにして語らないようにしたいと思う。
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きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀
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