2時から4時に出るおばけについて
8/23。
2:10起床。
天気は曇り。
*
――ひゅーどろろ。
と、わかりやすくソレは出てきた。
――寝ない子はあなたですか?
――寝ない子というか、寝れない子です。さっきまでは寝てました。
――眠れないんですか?
――目が冴えちゃって。
これで、何人目だっけ。イマジナリーフレンド。いよいよ人型じゃなくなっちゃったよ。まあ、本当におばけだったら、それはそれで怖いけど。
――ご存知の通り、まだ2時です。
――ご存知ではなかったですけど、そうですか。……朝まで、まだ長いな。
――では、わたくしが4時までここにいましょう。せめて、退屈をまぎらわすことはできるでしょう。
――4時がタイムリミットなんですか?
――4時以降は、もう夜ではないので。
そんなもんかな、と思ったけど、ぼくの頭が生み出したものがいっているんだから、まあそうなんだろう。
――何をしましょう? トランプ?
――いや、できればもう一眠りしたいんですけど……。
――「眠りたい」と思えば思うほど、ますます眠れなくなるものですよ。
――んん……でも、トランプを興じるほどの元気は……じゃあ、とりあえずそばにいてください。
トランプを探しに行こうとしたおばけは、ちょっとだけしょげてしまったけど、すぐに元気をとり戻して、ぼくの枕元でふわふわ浮かんだ。
――お話がいいですか?
――なんだか、『絵のない絵本』みたいですね。お話か……。おばけさんの名前は何ですか?
――おばけはおばけです。それは名前ではないですが、時には名前にもなり得るものです。
――はあ。……名前、要ります?
――いえ、結構。わたくしに名前が必要なら、とうに付いているはずですから。なぜなら、
――君を生んだのは、ぼくだから。
おばけに名前が付いていないなら、元からぼくは付けていなかったんだろう。おばけは、おばけ。それ以外でも以下でもない、やさしい怪物。
――『おばけ』。わたくしは、気に入っています。
――それは、よかった。
――そしてあなたは、わたくしの父であり母であります。『さん』を付けるなど、お止めください。
――こっちも、その仰々しい喋り方は止めてほしいけどね。
ふいに、おばけが窓の方を見た。まだ暗くて時計は見えないけど、そろそろ時間なんだろうか。
――わたくしは、そろそろここを去らなければなりません。
――そっか。もう、4時か。
――眠くなりましたか?
――正直、なってはないけど……君と話せたから、満足かな。
そこでおばけは、初めて笑ってみせた。
――それでは、ごきげんよう。あなたの健やかな眠りを祈っています。
――こちらこそ。……太陽に焼かれないように、気を付けるんだよ。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
僕と、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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