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僕はまだ、息をしているよ。(もしくは、鉄棒ができるようになった話。)

6/1。

5:30起床。

天気は曇り。





台所に布団を敷いて寝た。ので、それだけでいつもと違う朝。久々に睡眠薬を飲んだので、頭も体もだるい。……5時半か。静かだな。


体のところどころが痒い。虫刺されだろうか。心当たりは……あるな。昨日、近所の公園に行ったからな。ろくに整備されていない、雑草が伸び放題の公園に。おまけに半袖だったから、そりゃ、虫にとっては格好の餌食だな。


……ん。公園で何してたか、って? そりゃ、公園っていったら、遊ぶしかないだろう。……といっても、修行みたいなこと、していたんだけど。


修行なんていうと、仰々しいな。練習ですよ。鉄棒の練習。……ああ。どこかで披露するためじゃないよ。逆上がりもできないしね。ただ、個人的にできるようになりたかっただけだよ。……前回りをね。


驚いたよ。たかが前回り、されど前回り。ちびっこ時代はすんなりできたのに、大人になると全くできなくなっていた。技術うんぬんじゃなくて、恐怖だね。くるっと一回転する、ただそれだけのことなのに、恐怖心が遮ってくるんだ。……そんなこと、止めておけってね。


僕は知ったよ。鉄棒っていうのは、勇気を試される場所なんだってね。だから、苦労したよ。僕なんかが持ち合わせている勇気は、ほんのちっぽけなものだから……。


でもね。あるとき、くるってできたんだよ。あの瞬間の僕は、無敵だった。何者も寄せ付けない強さを持っていた。……たかが前回りで? って思ったでしょ。でも、そうなんだ。たかが前回りで、そう思ったんだ。案外やるじゃないか自分、ってね。


とはいえ、この話にはオチがあるんだけどね。前回りを一回しただけで、めちゃくちゃ目まいがするっていうオチが。その後も、二、三回回ってみたんだけど、その度に目まいがしたよ。いやあ、あれはひどかった。さすがに僕も、老いを感じざるをえなかったね……。まあ、それはどうでもいいとして。


鉄棒を握りしめていたから、手は熱くて、痛くて、ほんの少し錆臭くなっていた。でも、それすらも誇らしくて、ここ数年の中でも一番元気が出たよ。大げさだけど、本当だよ。


ねえねえ、君は逆上がりできる? 前回りでもいいよ。……僕は、さすがに逆上がりはできないな。だって、ちびっこのときですら、できなかったんだもの。でも、今ならできそうな気がするな。逆上がりだろうが何だろうが、できそうな気がする……。調子に乗りすぎかな。でも、普段は慎ましく生活しているから、このくらいはいいよね。


じゃあ、逆上がりできるようになったら、また報告するね。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
僕と、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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