Alice in wonder wobble(ガランド/ピコン)
ああ、
頭が、痛い。
「それは、妙だな」
何が、妙なの?
「頭が痛い、って、いうのがさ」
それの、どこが妙なのさ?
「それはね、」
それは?
「君の頭が、すっかすかだからさ」
……。
「……」
わざわざ訊いて、損したよ。
「会話なんて、損で成り立ってるんだよ」
*
金縛りにあったことは、ある?
僕は、ある。
覚えているのは、二度。
二度目は、つい最近あった。
僕は、昼寝をしていた。床の上に、だらんと肢体を投げ出していた。……パートナー以外には、見せられない格好だ。いや、パートナーにも見せたくないかな……。ううん、そんなことはどうでもいいんだ。
アレは、寝る瞬間じゃなく、起きる瞬間にやって来た。
僕は、真昼の夢から覚めた。はずだった。そこは、明らかに自分の部屋だ。けれど、明らかに自分以外の気配がする。
その気配は、決していいもんじゃなかった。だって、目を瞑りたくってしょうがないほど、怖気がしたから。けれど、当の目は、瞑りたくても瞑れない。半分開いたまま――見えている景色も半分のまま、ぶるぶる震えている。
思い通りにならないのは、目だけじゃなかった。床に投げ出した腕も足も、いうことを聞いてくれない。僕は、血の気がさーっと引いていくのを感じた。体が、まったく動かない。恐ろしいものが、すぐ近くにいるのに、逃げ出せないなんて、こんなに恐ろしいことはない。
僕はとにかく、突っ伏している体をひっくり返そうと、えいやっと、腰をひねった。おお、思いの外、上手くいったぞ。その瞬間、顔面に何かを押し付けられた感覚がした。頭の中には、4桁の数字が浮かび上がった。その数字列の上には、大きく×印が付けられていた。そして、ひっくり返ったと思った体は、以前として突っ伏したままだった。
数字……×……僕は、何かを間違えたのか? ただ、ひっくり返ろうとしただけなのに、何を間違えたんだというんだ? 僕は、もう一度腰をひねって、体をひっくり返そうとした。また、顔面に何かを押し付けられた。今度は、違う4桁の数字……。僕は、まだ突っ伏したままだった。
ああ、もう、いい加減にしてくれ……。それから、どれくらい経ったんだろう。正味、5分もなかったのかもしれない。ハッとして気付けば、金縛りは解けていた。僕はやっぱり、突っ伏したままだった。
一体、あれは何だったんだ……。まあ、「睡眠障害です」といわれれば、そうなんだけど。それにしても、奇妙な幻覚だった。あれは、もしかして……。考えている内に、僕はまた、眠っていた。
*
ああ、
頭が、痛い。
「君の頭は、すっかすかなのに?」
ああ、
すっかすかだよ。
頼むから、
しばらく、
黙っててくれ。
ガランド/ピコン feat.初音ミク(2018年)
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