僕の「優しい人」は、僕を「優しい人」と言う。
6/20。
5:00起床。
天気は曇り。
*
忘れてしまったんだけど、夢の中で、一度死んだような気がする。ので、目を覚ましたとき、パートナーが隣で眠っていることに、この上なく安心した。
よかったよかった。僕は、パートナーの頭をわしゃわしゃする。すると、パートナーも手を伸ばして、僕の頭に触れる。たとえ、夢と現の境目にいても。この人はどこにいても、僕を見つけてくれる。
夢の中とはいえ、いっぺん死んでしまったので――そのせいなのかは、わからないけど――頭の中がすっきりしている。……んん。「すっきり」なんて使うと、まるで頭(の具合)が良くなったみたいだな……。大切な部分がすっぽり抜け落ちてしまったような、そんな感覚がある。
僕は日々、色んなことを忘れていく。大切なことも、大切じゃないことも。「生きることは、忘れること」? そうなのかな……そうかもしれないな……。でもなあ。忘れてしまいたいことは、たくさんあるけど。忘れたくないことも、少しはあるんだよ。
……あ、思い出した。大切なことを、思い出した。まあ、昨日のことなんだけど。
僕とパートナーは次の日(つまり、今日)ちょっと遠出をすることになっていた。パートナーが常々行きたいと思っていた店に行くのだ。僕らがお出かけするとき、「あれをしよう」「これをしよう」と提案するのは、だいたい僕だ。だから、パートナーが提案してくれて、すごくうれしい。
ところがどっこい。床に伏すほどではないけど、僕の体調がすこぶる微妙だった。鼻ずるずる、咳ごほんごほん。それが、ちょっと目立つ程度の。僕は気にしていなかったけど、パートナーが気にしていた。
「明日、病院行く?」
「でも明日、××に行くんじゃなかったっけ。病院なら、来週でも行けるから大丈夫だよ」
「××だって、来週の休みにでも行けるよ。そんなことより、体の方が大切だよ」
「……そんなこといわれたら、」
「いわれたら?」
「体、大切にせざるを得ないじゃないか」
僕とパートナーは、二人してにやにやした。
「優しい人」に、憧れる。パートナーは、僕にとっての「優しい人」。君のようになりたい。口癖のように、僕はいう。でも、パートナーも同じことをいう。キミは充分、「優しい人」だよ。
忘れたくないな。と思う。夢の中では、何度死んでもいい。でも、現実では、一度しか死ねないから。まだ、死ぬわけにはいかない。「生きることは、忘れること」。それでもいい。でも、本当に大切なことは、墓場まで持って行く。僕の頭は、きっとそこまで悪くないから。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
僕と、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
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