マガジンのカバー画像

目目、耳耳

168
感想文。
運営しているクリエイター

2019年4月の記事一覧

またね(さよなら4月のドッペルさん/ねこぼーろ)

4月になった。
僕は、また瞑想をするようになった。
瞑想といっても、あぐらをかいてじっとしてるだけなんだけど。

たいてい、夜にする。
世界が見えにくく、聴こえにくくなるから。
それは、僕を何より安心させる。

そして、僕は目を閉じる。

――そっちの調子はどう?
僕は訊く。

しばらくして、
――最低だよ。
返事が、来た。

もちろん、返事をするのも僕だ。
ただし、別の「僕」だけど。

――そう

もっとみる

あふれる(LookAround/no11room)

――もしもし。
どこからともなく、声がした。
――はい。
僕も、どこへともなく返事をしてみる。

―もう少しですね。
声は、言う。
――何がでしょう。
僕は、首をひねる。
――わからなくても、けっこうです。
僕は、ますます首をひねる。

――あなたは、だれですか。
僕の方からも、訊ねてみる。
――それも、もう少しです。
声は、まるで夢を見ているようだった。

――きっと、みちがえるように、
そこで

もっとみる

葬る(春の/古川本舗)

「忘れる」は、
ときどき、
「葬る」と同じになる。

そういうときの「忘れる」は、
つまり、
「忘れたい」ことを、自分の中から放り出すってことだ。多分。

なんだか、そうなると「忘れる」っていうのは、
自然とそうなることじゃなくて、
自分がそう願ってすることみたいだ。

「無かったことにしておきたい」ことっていうのは、
たぶん、誰もが抱えているんじゃないかな。
多かれ少なかれ。
どちらでもいいんだ

もっとみる

生まれる(アイル/haruka nakamura)

3月から4月になること。
それは、
6月から7月になることより、
10月から11月になることより、
なにか、とても大きなことのような気がする。
それはきっと、その人にしかわからないこと。

何年か前に、何かの折に、
8ミリフィルムの映像を見せてもらったことがある。

子どもを抱きしめている母親。
総出で押し入れを片付けている家族。
米の脱穀の手伝いをしている子どもたち。
そこには、
日々の営みの中

もっとみる