14タイトル

卒アルの笑顔 『最善手ドリル』★14★


こんにちは! 藍澤誠です。サッカーのワールドカップ、もうすぐ開幕ですね! そんなわけで、今日のテーマは「スポーツ」。「東京ドームでの課外授業」です。

問題

とある月曜のこと。チャオズ(小4男子)が「今度の日曜日、東京ドームに、侍ジャパン(野球の日本代表)の試合を観に行くんです!」と喜んでいました。生の野球観戦をものすごく楽しみにしています。と同時に、東京ドームで応援グッズを買うことに、ワクワクが止まりません。本人曰く、「まずメガホンを買って、あとジャパンのユニフォームをゲットして、おみやげも買ってきますね!」とのこと。所持金をたずねたところ「2000円も持っているから大丈夫!」という返信。

「ん?!」

その場でこっそりスマホで確認したところ――ジャパンのユニフォームだけでも1万円以上の金額・・・

さて、塾の先生が取れる最善手は、次のうちどれでしょう。

①ネットで当日着るためのユニフォーム型Tシャツを買ってあげる。
②挫折も経験であり学びであるから、そのまま送り出す。
③自作のオリジナルメガホンを一緒に製作する。

制限時間2分

【解説と解答】

まず考え方としては、チャオズが、当日最高の思い出を得られるような手を指したい。そういう意味では、②が最悪手と言えよう。挫折も勉強のうち、という考え方もわかるが、「明らかに挫折する道が見えている」のに「そのまま送り出す」のは良くない。②のような考え方なら、「その場でグッズの価格を見せて、夢から目を覚まさせる」の方がまだいい。わざわざ当日にいやな思いをさせる必要はないだろう。

③のオリジナルメガホンは、やや遠回りだ。そもそも、メガホンの出来がしょぼかったら、かなり悲しいし恥ずかしい。耐久性も・・・。しかも、製作にどのくらい時間がかかるか未知数だ。翌日、メガホンを買い、そこに作ったステッカーなどを貼る、などのクイックアタックも考えられるが、子どもは「にせもの」に敏感で、仲間に笑われたり、自分で「これはないな。でも先生と作ったんだしな・・・」と、悩む必要がないことで落ち込んだりする可能性もある。一か八かのチャレンジとしてはありかもしれないが、当日の最高の思い出につながるかというと、やや疑問だ。

最善手:①ネットで当日着るためのユニフォーム型Tシャツを買ってあげる。

◎実戦の棋譜を見てみよう

スポーツは違いますが、サッカーのドキュメンタリー映画『メッシ』の中のワンシーンに「ユニフォームを着ないと盛り上がらないぜ!」みたいなことを言って、少年メッシをはじめとする子どもたちが、ひいきチームのユニフォームを着ながらサッカーゲームをする場面がありました。

スポーツ観戦におけるユニフォームや、ライブにおけるツアーTシャツ着用のテンションの上がり方は、ご存知の方はわかると思うのですが、かなりのワクワクです。そういう経験をぜひさせてあげたい。ただ1万円以上のユニフォームは、プレゼントとしては現実的でないので、Tシャツを購入しました。それでも4000円ちょっとしましたし、塾にその試合を観に行く子が3人いたので、合計1万円以上になります。

雇われている先生の場合、そうしたやや高額なプレゼントを生徒にすることは、なかなか勇気がいると思いますが(親にも連絡や説明が必要ですし、気を遣うのですが)、自営業で塾をやっている場合は、この手の判断はどんどん下した方がいいと思います。その3人以外にも、たくさん生徒がいるので、「その子たちとのバランスを考えるなら、不公平な行為はしない方が・・・」みたいな考えは、なるべく持たない方がいいと思います。もし公平性とかバランスとかを考えるとしたら、「だれかに特別なことをやらない」ではなく、「みんなにスペシャルなことをやる」べきだと私は思います。

というわけで、ナイショでオフィシャルグッズを取り扱っている販売店に電話して確認したところ、火曜に頼べば金曜に届くとのこと。さりげなく野球観戦に行く子の親に、子どもたちのそれぞれの身長をたずねて注文。スピーディかつ秘密裏に進めます。うっかり相談すると「お気持だけで嬉しいです」という話になる可能性もあるので要注意です。正直、子どもにとっては「お気持」は嬉しくないです。

そして――こんな感じのTシャツが届きました。

無事、試合前の金曜に届き、授業で手渡すことができました。けっこうしっかり作ってあるグッズでした。チャオズは体が小さいので、一番小さいサイズでもダボダボでしたが、このユニフォームTシャツに袖を通したときには、目がうるうるで、テンションが東京ドームの天井についちゃうくらいの上がり具合でした。他の2人の5年生も大喜び。

ユニフォームTシャツを着ての試合観戦は、大興奮だったようで、彼らはお金を出し合って、私におみやげのマグカップを買ってくれました。


▲マグカップは今でも活躍中。左は昨日貰ったばかりの、龍安寺のお土産。

その後、チャオズは6年生になったころに、4年のときにダボダボだったTシャツがちょうどよいくらいになっていました。そして嬉しかったのは、卒業アルバムの撮影のときに、このTシャツを着てくれたこと――満面の笑みにJAPANのTシャツ。卒業アルバムを見ると、きっと、テンション上がりまくった野球観戦の感動を思い出すことでしょう。

手作りメガホンとか、挫折も経験とか言ってる場合じゃないです。最善手が見えたら、へんな配慮なんて気にせず、気合いで突き進め! の一手です。


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