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「物書き」であり続けたいなら、林真理子から学べ

久しぶりに面白い本を読んだので共有したい。

『野心のすすめ』

著者は林真理子である。

そもそも林真理子って、どのくらいの方がご存知なのだろうか。

最近では、元号を決めるときに、女性知識人代表として召集されていて話題になった。と言えば、すごい方であることは分かっていただけるだろう。

林真理子はコピーライター出身の作家だ。かのTCC賞受賞経験があり、直木賞もとっている。つまり、広告と小説の二分野で頂点を極めているのだ。

本書ではTCC賞、直木賞を取るまでの過程と、その後について、エッセイ調で語られている。宣伝会議の講座に通ったことや、糸井さん仲畑さんらと仲が良かったこととか、コピーライターであれば誰しも興味惹かれる内容になっている。

なっているのだが、
私が強烈に印象に残ったのはその話ではない。
題名にもなっている通り、「野心」のことである。

林真理子は世に出るまで、50円の食パンだけを食べ続ける貧乏生活を送っていた。しかし、「自分はいつか大物になって贅沢な生活をおくるんだ」と意気込んで、人一倍の努力を続ける。その結果、TCC賞と直木賞を取るに至った。ここまでは普通のお話。

彼女がすごいのは、直木賞という大衆文学の最高賞を受賞したあと、それまで以上に執筆活動に励んだことである。
「私のあとに出てくる直木賞作家に負けられない」「未来永劫読まれ続ける小説を書く」
と思ったのが原動力になったそうだ。一般の人の考え方でいけば、「これ以上の目標を設定できないし、今まで頑張ったからもういいや」となるだろう。私もたぶん、そうなると思う。
つまり林真理子にあったのは、文才以上に、強烈な野心だったのだ。

夏目漱石の小説『こころ』に、「向上心のない奴はバカだ」というセリフがある。林真理子の生き方を見ていると、より重みを増して心に響いてくる。「目標」というのは、それが生き方を規定するくらいものでなければ意味がないのだと、感じる。そしてその「目標」を達成したときに、次の「目標」を立てられるか。野心を持ち続けられるかが、常にプロフェッショナルとして最前線にいられるかどうかの分水嶺になっているのだと、本書を読んで感じた。

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