CEO白坂流 IPランドスケープの語源と商標取得について

 大阪大学発ベンチャー企業の株式会社AI SamuraiCEOであり、弁理士の白坂です。

最近、知的財産業界では、IPランドスケープという言葉が流行っています。

 これってなに!?という方もいるかもしれませんが、IP ランドスケープという言葉は、特許庁の知財スキル標準 version2.0(2017 年 4 月公開)において使用され 、ここに、IP ランドスケープの業務内容がどのようなものか記載されています。

 具体的には、「知財情報と市場情報を統合した自社分析、競合分析、市場分析や知財ヂューデリジェンス 」などの業務内容が挙げられています。

このIPランドスケープという言葉は、いつごろから登場したのでしょうか。

 私が把握している限りでは、ビジネス面においては、アメリカのBauer博士と、Herbert J. Neuhaus博士の会社である、TechLead Corporation社にてIP Landscapeサービスというものを2008年前後にスタートだと思います(2005年前後、色々な方が使っていたと思いますが、あくまでビジネスでの利用で把握している限りでは・・・)。

 アメリカでは知的財産分野において、博士の起業家が多いです。

私も、現在、北陸先端科学技術大学の博士課程に通学していますが、そのような方々がアメリカに多くいたので、意識して大学に入学し、学び、研究した内容をベースに、AI Samuraiを実現しました。

 特許業界では、1990年後半から特許検索システムが流行し、2000年にはいって、特許群を俯瞰するサービスが数多く登場しました。

当時は、 Patent Mapという言葉が流行っていました。

IP Landscapeという用語は、Intellectual Property Landscapeと呼ばれたり、略されることで今の呼び方で言われていました。

 IP Landscapeという言葉から少し離れますが、当時、私は、Patent Miningなどの言葉も好きでした。

Patent Miningは特許を掘り起こすという意味であり、当時は、良い特許権を見つけ出すという意味で利用されていました。

一方で、私は、防衛大卒ということもあり、Mingingは、地雷を敷設するという意味があることを知っていたので、富士フイルム時代に、良い特許を中間処理で権利化したりするのは、地雷を敵軍に敷設するのと同様という意味も込めて、登録になった権利行使できる特許に加え、中間処理で競合他社を攻撃できる特許を量産するプロジェクトを「Patent Minging」と称していました。

 2000年から特許分析の世界では、デジタル化された特許公報をコンピュータ解析する時代へと突入していきました。

 2000年代のIP Landscapeの発表されたものとして、上述のBauer博士と、Herbert J. Neuhaus博士のIEEEの2008年の論文「The IP landscape for photovoltaics」と、彼らのパワーポイント資料があったので、ご参考にみて下さい。コンピュータの進化に伴い、大量の特許群を技術面、事業面で分析する時代が謳歌しました。

 ところで、話題のIPランドスケープは、商標が取得されているのはご存知でしょうか。

弁理士会の副会長をされている正林真之先生が商標登録第6000370号として商標「IPランドスケープ」を知的財産権の価値評価等の内容で保有されています。

 取得理由としては、特許業界で商標登録出願を年間大量の出願(10万件前後)を行い、ライセンス交渉を積極的にされる会社(以下、BL社)があります。仮にBL社のようなアクティブな会社が、商標権を取得してしまうと、IPランドスケープの活動が乱されることを危惧され取得されたと噂でお聞きしました。

 もともと、IPランドスケープは、米国などでは、特許の件数や内容を俯瞰的にデジタル解析し、コンサルティングすることを語源としていることもあり、コンピュータ処理と密接な関係があります。

このコンピュータ処理について商標は取得されていませんでした。

 そこで、コンピュータ処理の内容でIPランドスケープを、仮に、BL社に商標権を取得されると、多くの日本企業におけるコンピュータ処理に関するIP Landscapeが阻害されると思いました。

そこで、株式会社AI Samuraiでは、商標「IP Landscape」で指定商品・役務は、コンピュータ処理の分野で取得しておきました(商標登録第6233829号)。

案の定、私が商標登録出願をした3ヶ月後にBL社が出願をしてました。

商標法は先願主義といって先に出願をした方が強いので、ギリギリ間に合った感じです。

 私の会社の強みは、発明の内容から類似特許調査を行い、クレームチャートを自動生成し、権利取得の可能性をランク付けすることで、発明者の方のアイデアの早期創出を支援することです。

我々は個々の特許解析をAIで踏み込んでおこなっていますが、個から群の評価に適用することで、知的財産の俯瞰や解析はより大きな進化が成し遂げられると思っています。

 先日、大阪大学でも教鞭をとっている、IPランドスケープのスペシャリスト小林誠先生にアドバイザーとして参画して頂きました。

小林誠先生にご指導を頂きながら、AIで新しいIP Landscapeの世界を切り拓いていきたいとおもいます。

 後日、応援や共同研究してくださる企業の方を募集しようと思いますので、お声がけ頂けると幸いです。

 新たなIP Landscapeで、コロナ危機を切り拓けるように株式会社AI Samuraiも頑張っていきます。

もちろんでございますが、我々は、大阪大学、みずほ銀行、SMBC銀行などをはじめとする良識的な株主の方々によって運営している会社ですので、IP Landscapeの商標権で無差別に権利行使をするつもりはなく、日本の産業発達のために、IP Landscapeがより広がっていけばよいと思っております。

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執筆者プロフィール

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白坂一
防衛大学校理工学部卒業。横浜国立大学院環境情報学府修了。富士フイルムを経て、特許業務法人白坂を設立。2015年、(株)AI Samuraiを創業し、代表取締役社長に就任。弁理士、国家試験 知的財産管理技能検定 技能検定委員、北陸先端科学技術大学院 先端科学技術研究科・博士課程在学中。

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