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民主主義vs権威主義ではない

現在、国際社会で起きているのは民主主義vs権威主義ではない。またハチントンが唱えたような地域ごとの異なった文明の問題でもない。

① 

1942年、当時の代表的思想家、文学者、歴史家、美術評論家などが一堂に会した座談会のテーマは近代の超克であった。すでに太平洋戦争は勃発していた。この座談会で小林秀雄は「ニーチェを読んでいると、近代に衝突しないわけにはいかない。これを避けて通ることはできない」と語っている。小林が言う「近代」とは具体的には米国のことである。だが、日本は米国に敗北したので、近代を超克することはできなかった。では、現在、米国に挑戦しているのは、どこか?

②BRICsと近代の超克

 中国とロシアが米国に挑戦しているのは、分かりやすいが、インドも、それに含まれている。インドは表向きは米国に協力姿勢を採っているのであるが、本当は向こう側である。インドは上海条約機構の一員であると同時に、BRICs諸国会議の主要メンバーでもある。さらに、ロシアの原油輸出はウクライナ戦争の制裁後、インドの割合が10%以上増加した。中国は2%しか増えていない。

③BRICsの台頭は近世の再生

1700年頃

1700年頃の清朝、ムガール帝国、ロシア帝国、オスマントルコ帝国を見ると、現在のBRICs諸国やウクライナ戦争で中立の立場をとっているトルコなど近世の大国のプレゼンスが再び、増大していることがわかるだろう。
つまり、われわれの前に展開しているのは、近世の大国の再生を通じて、近代が超克されるという歴史的シーンであって、中世が古代の再生(ルネサンス)を通じて終焉したのと同様の歴史的事象だということである。近代から近代の次にそのまま接続するのではなく、近世の(帝国の)再生を通じて次の時代に移行すると予想されるのだ。

④「アメリカは急速に衰退する。アメリカに未来はない」

 これはニーチェの予言である。ニーチェの予言はよく当たることで知られている。この言葉は、ヨーロッパ人としてのニーチェの願望でもあっただろうが、私は当たると考えている。米国の時代は21世紀前半で終わるであろう。日本は残念ながら、米国といっしょに沈む側である。


 

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