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内緒の音が聞こえるよ、

こんにちは、愛音です

私と祖父は仲がとても良かったです。2人の内緒のお菓子があるくらい。

「愛音ちゃん、ここにあるからな。お母さんに内緒だぞ?」
祖父がコンコン、とノックするように食器棚の一番下にある小さな引き出しを叩きます。
「うん!ないしょ、ないしょ!」

大好きな祖父との内緒のお菓子。それは黄色い箱の昔からある「キャラメル」でした。
祖父は私のために買って、こっそり一番下の引き出しにしまっていました。
私も「ないしょ」を守り、母がいるときには引き出しを開けず、台所に行ったタイミングで、パッ!と引き出しを開け、キャラメルを1つ口に入れてました。

―キャラメルの話はここで終わりません

先月兄の家に行ったら、あの黄色のキャラメルが玄関に置いてありました。ママから「保育園に迎えに行く時キャラメル持っていってあげて、それ好きなの」と言われました。

ビックリしました。今までラムネがずっと好きだった息子くんが突然黄色のキャラメルを選んだみたいです。キャラメルだっていくつかあるのに、なぜ、私と祖父の思い出が詰まったあのキャラメルだったのか。

きっとただの偶然なのでしょうが、私はあの黄色の箱を懐かしくて、嬉しくて、思わず手に取り、撫でていました。
お空にいる祖父も喜んでいますよ。
「見ろ!俺と愛音ちゃんの内緒のキャラメル食べてるぞ!」

ほら、おじいちゃん
思い出は消えたり、霞んだりもしないんだ
こうやって今は息子くんと娘ちゃがあのキャラメル食べてるの
歴史、なんて言ったら大袈裟だけどさ
私とおじいちゃんの内緒の歴史はひ孫の代まで続いてるよ

空から音が聞こえてきます…

「内緒だそ、愛音ちゃん?」
コンコン、

―うん、いつまでも内緒だね、おじいちゃん

*愛音*

2024/04/05
内緒の歴史と内緒の味
でも内緒にはできないものもある
それは思い合うこの気持ち

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