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エピソード#25 外出は生きる希望に繋がる ~Aさんと初めてお出掛けした思い出~


                           
                           
「あっち行け!」「もういい!」鋭い眼光と大きな声、動くほうの手足をバタつかせて、人を寄せ付けないような第一印象でした。
 
A様は急な病により、突然、身体の自由が奪われ自宅療養をされていました。
病院に通院する時は 私たちの会社の介護タクシーに車椅子のまま乗車し、通院していましたが、自由に外出できる体調ではありませんでした。
A様は 長嶋茂雄さんが大好きで壁にもポスターを貼り、横向きになるときに「長嶋さんのほうを向いてもらえますか?」と言うと長嶋さんのポスターがあるほうに身体を向けてくださいました。
体調が安定してきた頃、お出掛けをしてみたいと ご家族から話がありました。その時に地元新聞に長嶋茂雄写真展が開催されるという記事が掲載されており、最初のお出かけの場所は写真展にしようと決まりました。
当日は、桜や桃の花が見頃で車窓からの景色も楽しまれていました。
会場に展示されていた写真をA様は一枚一枚をじっくり観賞されていました。
ご家族様は、A様の姿を見て すごく喜ばれており、写真展に併設されたカフェで コーヒーを飲みながら「今日は自分も車からの景色も楽しめたし、コーヒーをゆっくり飲めて、写真展にも来れて嬉しい!」と言ってくださいました。
ご家族のレスパイトケアというと ご利用者様と別の場所で過ごしてもらうことと思いがちですが今回の外出で、ご家族はA様と一緒にお出かけした中でも ゆっくり車窓からの景色を楽しまれ、カフェでお茶を飲んだりしたことが、つかの間の休息になったように思います。なにより、夫婦でお出かけをしたということがハッピーな気分になったのだと思います。
ご利用者様の立場で考えると病気になると外出することを諦めてしまうかもしれません。
「○○に行きたい」という思いは生きる希望に繋がります。
そして、その希望が叶った時に「次はあの場所に行くためにがんばろう」と、本来持っている自らの生きる力が動くのだと思います。
Mさんは昨年、虹の橋を渡られました。Aさんとはたくさんお出かけしました。Mさん、ありがとうございました。
 
 

 

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