妊娠中に実践していた夫に対する啓蒙活動
プロローグ
妊娠・出産をめぐる夫婦間の意識差
妊娠・出産をめぐり、夫と妻の意識や認識の違いは無限にあり、例を挙げれば枚挙にいとまがないだろう。
昨日は私の夫が妊娠期間を通じて(まだ終わってないけど)いかに私にポジティブな声がけを続けてくれたかを書いたけれど、もちろんいいことばかりではなかった。
というより、妊娠中の私と夫の意識の差はどうしたってあるもので、そのギャップに何度か爆発しそうになったし、また実際に爆発したこともあった。
妻から見てカチンとくるポイントはいくつかあると思う。例えば・・・
これを読んでいる男性の皆さん、思い当たる節はありませんか・・・?自分はそのつもりがなくても、妻からそう思われているというパターンは男性が思っている以上に多いのではないかと思われます・・・
確かに男性には体の変化はない。だから妻の妊娠を嬉しく思っていることと、妊娠出産を自分ごととして実感することには乖離があるのは、これもう仕方がないと思う。
女性側はどんどん自分が変わっていくし、区役所での保健師さんとの面談や定期的な妊婦健診で産婦として母としてどんどん意識づけがなされていく機会があるから、どうしたって意識は前へ前へと進んでいく。
これに対して男性は圧倒的にそういう意識づけの機会が少ない。仮に妻に付き添った場合でも、「父として夫として」の意識づけの機会ではなくあくまで妻の付き添いとして扱われるのが日本の現状だ。平時でさえそうなのに、ましてやこの3年間、コロナ禍で付き添い禁止であったのでなおさらだ。
こうして夫は「俺を置いて一人で先に行かないで」となる・・・のかな?
当初の不安
私は1回目(※流産)の妊娠初期に川上未映子『きみは赤ちゃん』を読んだ際、夫婦関係のクライシスの章が最も印象に残り、「うちでも起こりうる」と戦々恐々した。
同書の中で、妻川上未映子さんが夫あべちゃんに「今私が妊娠何週か知ってる?」と聞いて、あべちゃんが答えられなかったことが無性にカチンときたというエピソードがある。確か妊娠25週の頃。さらに川上未映子さんは、妊娠25週で母体や胎児はどんな様子か知ってると畳み掛けたら、やはりあべちゃんは答えられなかった。四六時中ネットを見ているくせに、妊娠中の妻や妻のお腹にいる我が子がどんな様子か調べたこともないという事実にブチギレる・・・という話だ。
やばい。めっちゃありうる・・・私も絶対キレる・・・
そしてうちの夫もたぶん自分で調べてくれるタイプではない・・・
そう思った私は、夫に対する啓蒙活動を全面展開することにした。
うまくいったものもあれば、うまくいかずに取り下げたものもある。
時に女優ばりの演技をしたこともある。
夫に対する啓蒙活動基本方針 可視化×第三者情報
自分がもとから知っている情報、すでに出産を経験した友人からの情報、自分が本などで勉強した情報などはすでに「私の情報」となってしまっているのも多く、夫に話してもたいてい届かない。男性はなぜか妻情報を信じない傾向にあるからだ。
そこで、雑誌、ネット、アプリなどにより可視化して夫に示すということと、情報を第三者(できれば権威あるソース)からの伝聞情報にすり替えるということを意図的に行うことを基本方針として、夫婦間の意識差を埋めるための啓蒙活動を行った。
自分から情報を取りに行ってくれない人にはこちらが情報操作するっていうね。
はははは。
①ベネッセの雑誌『たまごクラブ』
『たまごクラブ』を欠かさず購入し、あわよくば夫が寛いでいるタイミングで一緒に読むということを実践した。なお、夫が自ら読むことを期待はしない。
→自分はすでに知っている情報であっても、夫と一緒に読む時には私も初見という体を装い「え!妊娠12週までの流産って15%もあるんだって!高いね!知ってた!?私知らなかった!!」など初めて知って驚く演技をする。
→自分はすでに知っている情報で、夫にも伝えていたのに「えー嘘でしょ?w」などあしらわれた情報については(嘘ってなんやねん!怒)「ここみてみて!この前私が言ったのと同じこと書いてある!」と第三者情報として追加インプットを行う。
私の場合、妊娠後期に入り、「今日赤ちゃんがしゃっくりしてたんだよ」と伝えたら「なんでしゃっくりしてるってわかるの?wお腹の中でしゃっくりなんてするわけないじゃんww」と全く信じてもらえなかったので、たまごクラブを見せて胎児はお腹の中でしゃっくりをするという情報を信じさせた。
後日談:数日前、赤ちゃんがしゃっくりしていたら、私のお腹を触って「しゃっくりしてる!かわいいね」などと言っていた。
②ポスター掲示
『たまごクラブ』の綴じ付録である「マタニティライフやることリスト」(妊娠初期の『はじめてのたまごクラブ』についていたもの)と胎児実物大ポスター(初期・中期・後期の全てに収録)をリビングの目立つところに掲示した。
→これはかなり効果があった!うちではめちゃくちゃ威力を発揮した!
「マタニティライフやることリスト」には10ヶ月分の妊娠経過が大まかに書いてあり、そのタイミングですべきことが簡潔にまとめられている。日付を書き込むことができるので、今どの週数・月数にいて、どのような母体の変化が一般的にあるのかが一目でわかるのだ。
例えば・・・
妊娠3ヶ月「吐き気やむかつきなど、つわりがピークに」「子宮が膀胱をおし頻尿になる」「胎盤や胎児への血液供給が増え、貧血気味になる」
妊娠4ヶ月「個人差はあるが、つわりがだんだん治まってくる」「食欲が湧き、体重が増えやすくなる」
妊娠6ヶ月「頻尿や動悸、息切れが起こりやすくなる」
など。
夫は(特に酔って機嫌がいい時)このリストを眺めては「愛ちゃん、本当にここに書いてある通りになっているね!」「書いてあることフルコースじゃん!」などと感動していた。
つまり夫は、自分の目で見た妻の体調が妊娠経過として一般的な症状であるということを実感として理解してくれたのである。特につわり期の体験がベースとなって、その後の妊娠経過についてもリストを見返しては「そういうものなんだな」と理解を示してくれたり、或いは過度に心配してくることがなくなった。
このリストを初期のうちに壁に貼った私、すごいファインプレーだったと思っている。
同様に、胎児の実物大ポスターもかなりの効果を発揮した。目安といえども私のお腹の中で赤ちゃんがどの程度のサイズ・重さなのかがパッと目で見てわかるというのは重要らしい。
妊娠期間を通じて、夫は何度も何度もポスターを眺めてくれていた。
「あんなに小さかったのに、こんなに大きくなったんだね」と成長を噛み締めてくれたり、中期も後期も「こんなに大きなのが愛ちゃんのお腹にいるの?怖すぎる!笑」と同じセリフをしょっちゅう口にしては嬉しそうにいっていた。
私もこういうリアクションが嬉しかったりするんだよね。だって一緒に赤ちゃんの成長を見守っていると感じられるから。
総じて、この2つの付録ポスターをリビングの目立つところにどーんと貼り続けた甲斐あって、夫の頭に母体の妊娠経過と胎児の様子の概要を叩き込むことに成功した。そのベースがあったからこそ、日々のより細かな体調不良や不安ごとの理解が促進されたと思っている。
③ベネッセのたまひよアプリのダウンロード
アプリではトツキトオカの方が有名っぽいけど、私はイラストが好みじゃなかったのでたまひよ愛用。ベネッセだし(←進研ゼミっ子だったのでベネッセ贔屓)。
これを読んでいる妊娠中の女性(或いはそのパートナー)はおそらくご存じだろうが、この手のアプリは、ホーム画面で「予定日まであとX日」「赤ちゃんがお腹にきてから今日で◯日」「今日の赤ちゃん」などを教えてくれる。
特に「今日の赤ちゃん」系コメントでは、「赤ちゃんがお腹にきて245日。この時期の子宮は、赤ちゃんが手足を伸ばすスペースがほとんどないので、動きがぎこちなくなることも。かかと、ひじなどもわかりやすくなります」などその時期のあるある情報を簡潔に教えてくれる。
さらに妊娠体験談や妊娠・出産にまつわる各種コラム(たいてい医師や助産師監修のもの)が多数掲載されている。
そのため当初、夫にもアプリのダウンロードをお願いしたのだけど「えーやだ。たまごっちみたいじゃん。命のことなのに、ゲームみたいに扱うのやだ」という説得力がありそうでない理由で一蹴された。
そこで私はアプリをダウンロードしてもらうことは諦め、私だけがアプリを確認し、アプリ記載の内容をたまにシェアするという作戦に切り替えた。「今日の赤ちゃん」に真新しい情報があった日、新しい週数・月数に入った日、コラムや体験談で夫にも知っておいてほしい情報を見つけた日など、夫の耳に届きそうなタイミングを狙い撃ちして、情報を小出しに繰り返し繰り返しインプットしていった。
妊娠・出産情報については、一度夫に伝えたから伝わっている・理解されていると思ってはいけない。馬耳東風になっていることも多い。そのため、めげずに繰り返し伝える忍耐強さが要される。私の場合、複数のソースを組み合わせ、自分が伝えたい情報が客観的に信じるに足るものであるとさりげなく示す演技をした。
「たまひよアプリに書いてあって、私もびっくりしたんだけど・・・」(※私自身の情報仕入れ先はアプリではない)
「この前たまひよアプリに書いてあったのと同じことを、今日の健診でも言われたんだけど・・・」
「この前職場の××さんが教えてくれたのと同じことが
たまひよアプリにも書いてあったんだけど・・」
なお、これだけ涙ぐましい意識的な努力をしているにもかかわらず、夫に全く伝わっておらず夫が外で初めて聞いてきた(と思っている)情報を自慢げに開示してくることも稀にある。その場合、「それ私いったじゃん!」と言いたい気持ちを脳内妄想にとどめ、「へー!!そうなんだ!!!」と驚いてみせる。
★夫の意識の遅れが現実問題として困る事案 風疹問題
さて、これまで書いてきたことは妻が少しでも精神的に安心して穏やかに出産を迎えるための心構え的な話にすぎない。
しかし、夫婦間の意識の差から生じる知識の差によって、現実問題として赤ちゃんに影響が及ぶ事案が稀ながらもある。それが先天性風疹症候群だ。
私がこの病気の怖さを知ったのは、漫画『コウノドリ』4巻収録のエピソードだ。そこには、先天性白内障という視力の発達障害と、心臓の壁に穴がある心室中隔欠損という障害を持っている女の子が登場する。
この障害は、ワクチンさえ打っていれば簡単に防げるものだから「悔しい」障害だと鴻鳥先生はいう。風疹に免疫の足りない妊婦が妊娠初期に風疹に感染してしまうと、赤ちゃんに心臓・耳・目に先天障害が生じてしまうという結果責任が非常に重たいのが特徴だ。
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2018年に風疹が大流行したらしいのだが、患者の81.7%は男性だったという。妊娠中の女性は、著しく免疫力が低下するため、風疹に感染した男性パートナーから妊婦女性が感染するというケースが起こってしまう。
この背景には、1979年度生まれ以上の男性は接種の機会がそもそも存在しておらず、1980年度~1987年度生まれの男女は、中学生の時個別接種1回のため接種率が激低と言う事情が背景にある。
しかし女性は妊娠中には風疹ワクチンを打つことができない。そこで、パートナーである男性側の抗体が不十分ならば風疹ワクチンをうち、妻への感染リスクを低下させることが対策の要となる。
私はといえば、初期の妊婦健診で風疹の抗体検査はあったけれど、詳しい説明はされなかった。「あなたの抗体がやや足りない、旦那さんも抗体検査してもらって」とサラリといわれただけで、だからどうなのかちっとも説明なし。転院先の病院では妊婦のパートナ向けに風疹プリントをもらったけれど、やはり説明はなかった。だから正直、私もコウノドリのエピソードを読んでいなかったら「夫くん休み少ないし、めんどいしいいんでない?」くらいの軽い気持ちで済ませてしまった気がする・・・
しかし漫画効果で私は先天性風疹症候群の怖さを知っている。もし私が風疹に罹患し赤ちゃんが先天性風疹症候群になったりしたら後悔しても後悔しきれない。自分も夫も一生恨むだろう。
そうなる未来を恐れた私に、①夫に風疹の抗体検査を受けてもらう、②抗体が不十分な場合には、風疹ワクチンを接種してもらう、という2段階ミッションが課された。
でもさ。リスクを理解したところでさ。
奥様方、これ旦那さんにしてもらうの結構大変じゃない??
私は大変でした。
まずコウノドリで理解した内容・リスクを夫に繰り返し繰り返し聞いてもらい、ことの重要性を理解してもらった。次に、もし抗体が足りない場合、別途風疹ワクチンを打つことになる点承知してもらった。抗体検査は無料だが、風疹ワクチンは一度自費で払い、後から自治体の助成金を申請することでお金は賄える旨説明した。最後に、忘れないよう圧をかける目的で「夫TO DOファイル」と付箋を貼った
クリアファイルに病院からもらった風疹プリントをリビングデスクに置きっぱなしにした。
こうして2ヶ月半ほどかかってようやく抗体検査とワクチン接種の両方をやってもらいました。
その頃にはもう妊娠初期は過ぎ去ってるから、正直時すでに遅しというタイミングだったけれど、二人目を考えているし「打たないよりはマシ」と思うことにした。さらに打ってくれた感謝の気持ちとして、ワクチン接種の助成金申請は私が
代行した。
後日談:
夫が夫職場のプレパパ友(?)に風疹ワクチンの件で先輩風を吹かせていたので笑いそうになりました。夫のプレパパ友の奥様は私の2ヶ月遅れ妊婦らしいのだけど、「その同僚の人と奥さん、愛ちゃんと違って妊娠のこととか全然調べてないみたいなんだよ。風疹のこととかもちっとも知らなかったし」と真顔で言っていました。あなたが理解してくれるまでどれほど私が腐心したかわかってらっしゃいます?しかもそれでも行動に移すまで2ヶ月以上かかってましたからね・・・・
★ポイントおさらい
ここまで書いたことには2つのポイントがある。
(1)夫のちょい先くらいのペースで情報に触れているよう見せかける。夫が置いてけぼりにならないペースを心がける。
子どもの頃から自分がいつかママになることをイメージして生きてきた女側はどうしたって耳年増。その上自分が妊娠すれば、あらゆる悩みや不安に襲われ検索魔になるのはそりゃもう必然。だから夫婦間の情報量・知識量の差は月とすっぽんで当然なのだ。
しかしだからといって、そこで夫を置いて一人で突っ走らないよう、なるべく控えめに。ペースダウン。あくまで同じくらいのペースだよと見せかける。
(2)第三者情報であることを示し、なるべく権威のあるソースを提示する
なぜか男性は、妻のいうことは大して信じないのに、職場の人間(男)や医者など権威ある人、また実母がいうことならば信じるというところがある。同じことをいっているのに!なんでなん?こっちだって調べて勉強してるんですけど!?
これは妻からすると大変ムカつく現象ではあるものの、多かれ少なかれどうも普遍現象のようなので「男性とはそういうもの」とこちらも割り切る必要がある。そこで、妻側である私は虎の威を多いに借りつつ、夫に知っておいてほしいことは
伝聞情報として夫に伝えてみると、「私情報」として伝えるよりは遥かに夫に響いている実感がある。
私は、夫に伝えたい情報や夫に話したのに軽くあしらわれた情報は、妊婦健診の日に合わせて「今日先生に聞いてみたんだけど・・・」「今日助産師さんに言われたんだけど・・・」とさりげなく病院で聞いてきた情報に織り交ぜて、自分の主張の正当性をアピールした。
同様の情報操作として、病院主催のマタニティクラス(育児編)でメモした内容に、(クラスでは言及がなかったにもかかわらず)胎児突然死症候群(SIDS)に関して自分が別途勉強した情報を加筆し、情報をさりげなく織り交ぜた。
これは、赤ちゃんが暑がりで汗っかきなのを知らないそぶりを見せている
夫が「赤ちゃん寒いんじゃない?」といって過度に防寒させてしまい、うつ熱を引き起こすのを防止したいからだ。
うちで通用しなかった作戦
漫画やドラマなどによる学習
うちの夫は漫画さえ読まない。TVは好きだけど、家にいる時間が少なく娯楽時間が限られているということもあり、自分が観たいものしか観ない。私が一緒に観たいものさえ98%観てくれない。
そのため、漫画もドラマもコウノドリをチェックしてくれることはなかった。アマプラでコウノドリ第一話だけ観せたが、「俺、綾野剛嫌いなんだよね」「俺、しっとり系嫌いなんだよね」と言われ第二話に続くことはなかった・・・・・。
終わりに
そもそも私は職業柄、学生に日々声がけアプローチをして超・長期的な視点で働きかけ行動変容を促すのが全く苦でないタイプだ。
私が夫に啓蒙活動を日々めっちゃ意識して実践していると女友達に話したところ、「私は絶対無理wwww赤ちゃんかよ自分で調べろって思ってるwwwwwうちは夫に対してはついてこれなきゃ置いてくスタンス!」というリアクションを得たので、マニアックな作戦なのだと実感した。
そして私がこんなにも意識を張り巡らせて、時には演技までして夫に働きかけを行っていることを夫が知ったら、きっと怖いと思うでしょう。。。笑
自分でも書いててちょっと怖いなと思ったもん。情報操作とか某露国かw
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