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📖「なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?」

こんにちは!
今回はタイトルに惹かれて購入したこちらの本の感想を書いていきます。
住空間に対する北欧の視点が優しく語られた内容でした。

はじめに

あなたにとって、「イス」は単なる道具でしょうか?
デンマーク人にとって「イス」は、時間とお金をかけるべき「大切な場所」だといいます。

インテリア会社を経営する著者が、取引先開拓のためにデンマーク国内を1000キロ以上走り回った時に驚かされたのが「デンマークでは多くの人が、初任給でイスなどの家具やインテリアを買う」ことだったそう。

この本に書かれたのはそんな「イス」を切り口とした
・自分の普段いる空間の質が人生の質を決める
・空間を変えると暮らしと心が豊かになる
といったメッセージで、
Chapter1~3が特に大事なポイントだと感じましたので
今回はそちらを簡単にご紹介します。

Chapter1 世界一幸せな国の秘密は「イス」にある

幸福大国と言われるデンマーク。世界幸福度ランキング World Happiness Report 2020 によるとその幸福度は堂々の世界第2位。さらに他のランキング上位も北欧諸国が占めています。(日本は62位で3年連続後退!? )

多くのデンマーク国民が自国を愛し、心豊かに幸せに暮らしている。
それはなぜか?

人生は、言い換えれば時間。
その時間を過ごす空間こそが、その人の幸せに結びつく。
「空間=暮らしの質=心の豊かさ」という方程式があるのではないか、と筆者は述べています。

洋服や時計など、自分を飾るものではなく、
自分や友人が快適に過ごすための空間に最初にお金を使う。
すると、暮らしの質が向上し、心が豊かさを感じ、
日常から幸せを感じることができる。

そもそも、北欧家具とはどんな家具でしょうか。
身近な北欧家具ブランドと言えばIKEAですね。
その特徴と言えば、
・シンプルなデザイン、高い実用性と利便性
・ホワイト、レッド、ブルーなど原色系の色

そんな北欧家具は世界中のイスの手本になっています。
中でも、Yチェアのデザイナーであるハンス J. ウェグナーや、アントチェアのアルネ・ヤコブセンは巨匠として知られています。

図1

(Yチェア byハンス J. ウェグナー)

また、キズや古さに価値を置くことも北欧の特徴だといいます。
古さこそ美と捉え、古き良きものを継承していく文化があるのですね。

Chapter2 良質な暮らしはデンマーク人に学ぶ

筆者が多くのデンマーク人にインタビューをしてきて、彼らに共通するのが、自らの空間に「自信」と「誇り」を持っているということだったそうです。ひいては、自分自身にも自信を持つ人が多いように感じたとも。

日本人は、どちらかと言えば自分のいえに関するものよりも、自分の身の回りのものにお金を使いがちです。(ある大手保険会社のデータによると、初任給で家具を買う日本人は6%に満たないそう。)

デンマークの人が、自分自身が幸せに過ごすというところにお金を使うのに対し、日本人は自分を着飾るものにお金を使う傾向があり、自分に自信がないことで、見かけや持ち物を過度に気にし、必要のない競争が生まれているのではないかと筆者は考察しています。

一方で、インテリアは、その空間にいる人全てを幸せにし、印象付ける要素を持っています。

北欧式最高の「おもてなし」は、家に招くことなのです。
「自分のプライベートな空間でおもてなしをしてくれた」ということが喜びにつながるといいます。
人を招き、体を動かして、男性も女性も多くの人が料理をしてふるまうのだとか。

現代の日本では、極端な話、財布を出してお金を払ってあげることがおもてなしと考える人が多くなっていて、それはコミュニケーションを狭くしている要因の一つかもしれませんね。


使うほど味が出るのが本当の「家具」

「道具」と「家具」の違いが、本書ではこう表現されています。

道具…使うほど劣化して、ゴミに近づいていくもの
家具…使うほど味が出てヴィンテージになり、アンティークになっていくもの

つまり家具は、継承していけるもの、後世に伝えていけるものである、ということです。
欧州では、家具は大切な資産であるという考え方が強いために、自分の親や祖父母の世代から、代々受け継がれていくものであるという考え方が常識なのだそう。

「家具」を使うのか、それとも「道具」を使うのか。
その違いを知ることが大切だといいます。

Chapter3 人生を好転させる空間とは?

最優先は清潔感。その上で、自分の部屋をつくっていくときに大切なこととして「インテリアは五感で楽しむ」というアイデアが述べられています。

例えば、その空間の香りや流れる音楽もインテリアの一部と筆者は捉えています。
視覚に関しては、言わずもがな。味覚にもインテリアや空間は影響しますよね。さらに触覚も大切で、イスの座り心地、テーブルの質感など、人は触るもの全てに温もりやストレスを感じるようにできています。デンマークの人々が職人たちの手作業でつくられた家具を使用するのは、触感で感じる良さを大切にしているからでしょう。

五感全てに影響があるインテリアで、暮らしの質を良くし、さらに周囲の大切な人も幸せにできるのです。

おわりに

今回思い出したのですが、私が初任給で買ったのは部屋の照明でした。

新卒で入社した会社での配属先は行ったこともない広島。引っ越した初日、借りた部屋の照明がないことに気づき、路面電車とバスにゆられ一人で街中のインテリアショップに足を運んだことを覚えています。目に留まったのは素敵なペンダントライト。作り立てのクレジットカードで購入し、重く大きなそのライトをヨロヨロと運んで帰りました。

手ごろなシーリングライトよりも一個桁が多い値段で、貯金もない上、新生活にお金がかかるものは他にも沢山ある。バカだなぁ...とどこかで思いつつ、その後の家計のやりくりもずっと苦しかったですが、あの時は直感で買わずにいられなかったのです。

それから住まいは5回変わりましたが、4年たった今でもこうして私の生活を照らしてくれています。夜、ベッドに横になって視線のさきにこのライトがあると、ホッと「美しいな」と思ったりします。そんな愛すべき私の家具です。

この本はもちろんペンダントライトではなく「イス」をテーマにしたお話ですが、『インテリアは幸せと結びつく、時間とお金をかけるべき大切なもの』という点で共感と新たな発見がありました。

一生ものの家具を、いきなり購入するというのは大変難しいことですが、こうした世代を超え愛されるデザインを頭において暮らす空間を考える時間も、とても豊かなものだと思います。

以上、最後までご覧いただき、ありがとうございました!

デザイン女子部 aikopon












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