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問題全てぶっ飛ばした、VALLETOダンスカンパニー ~コンテンポラリーダンスの進化 ~


「アートは、社会情勢によって大いに変化・進化するものです。」、、、ってセリフ、ちょいちょい過去記事内にてお話させて頂いてきまました。

そして、「ダンスも然りです。」、、とも。

バレエなら王様の死亡、女性の地位の向上からの下落、フランス革命、産業革命、世界大戦、バレエ界の大物の急死など。
ジャズダンスなら奴隷貿易でアフリカ人がアメリカに連れて来られ、アフリカ民族舞踊が様々な過酷な状況でも続けられてきたことが、最大の社会的要因です。

何があっても、「それでも踊り続けたいんだ!!!」という人たちの努力で、たとえ過酷な状況にあったとしても、上手く適応させる形をとりそれぞれ変化・進化してきました。
「マジかよ!?」
「でもやりたい!やめたくない!」
「ちょっと何か方法ないか考えてみよう!」というように。

(詳細はこちらの記事参照。)

そしてコロナパンデミックという現在の過酷な状況でも、ダンスはこれから紹介致します方法で続けられています。

しかし、やはり困難もあるんですね。

安全を確保しつつ集まる事が難しく、なにより素晴らしいダンサーが各実家に帰ってしまって物理的に大人数での作品は難しいなどです。

それでも、

・そんな問題なんて全てぶっ飛ばし
・世界中の優れたダンサー22人を集め
・費用ほぼゼロで(ダンサーへの給与は除く)
・コロナ対策も200%バッチリな
・生放送の90分もの大作を作った

超熱血パッション&クリエイティブ女性ダンスカンパニーがあります!!

そこで本日は、まず現在のダンス界の”ニューノーマル”をお伝えし、その中でも更に突き出した事をした、とある超熱血クリエイティブ•オール女性ダンスカンパニーの作品をご紹介させて頂きたく思います☆

動画もたくさんありますので、ぜひぜひお楽しみながらご一読ください☆


現在=コロナ⇨映像作品の大・大・大流行。


今世紀のとても大きな社会的要因=コロナパンデミック。

もちろんこれにより、アート・ダンスシーンも大きく変化しました。(詳細は昨年6月のこちらの記事参照。)

コロナによるパンデミックというマイナスの社会情勢により、「こんなダンスの形が出来ましたよ!これから流行る予感大です!」というお話でした。

そして!

それが本当に大流行。

みーーーーーーーーーんな。

ジャンル問わず、個人も、有名どころのダンスカンパニーも。

もれなく私も。笑

皆、始めました。

何をかというと、”ダンスビデオ/フィルム”(映像作品)作成です。

NYのグッゲンハイム美術館が主催する歴史あるパフォーミングアート*シリーズも、映像作品に切り替わりました。たくさん配信されていますので、ぜひ以下のリンクより数々の現役アーティストによってパンデミック中に作られたアート作品をご覧ください☆

(*パフォーミングアート:観客の前で行われる、身体や声などを使った芸術作品。)


またパンデミックにより活動の場が制限されたのはダンサーだけではなく、カメラマンもです。
そこでダンサーとカメラマンや映像作家のタッグが増え、昨年6月の記事を書いた時より今はどんどん

画質や映像の技術が爆上り!!

しています。

大御所ダンスカンパニーになると、カメラや編集技術のみならず、どこかの大きな家(?)や舞台の貸し切り、もちろん照明など、なにかとプロフェッショナルなクオリティがすごいです。

例えばHubbord Street Dance Chicagoや、Gallimなど。

(⇧Hubbord Street Dance Chicago “The Sky Was Different”)

(⇧Gallim ”BOAT”のトレーラー)


確実に!ダンサーの映像作品/ビジュアルアート界への進出がとてつもない速さで広がっています。


”完全生放送”オンラインダンスパフォーマンス


パンデミックの最初の方は本当に完全自粛で、外で誰かと合うのも制限されていたり、買い物や病院など必要な外出にも許可が必要だった国もありました。
しかし現在その制限は以前より緩和されてきたので、ソロじゃなくても、皆で外で集まってパフォーマンスをし、それをオンライン配信するというのも少しずつ増えてきました。(もちろん密にならない等の条件付きで。)

こちらは先述の完成された映像作品の配信ではなく、”生放送で、実際に、今” 世界のどこかの誰かがパフォーマンスしているのが見れるので、「アートは生ものだ。」とう感覚に近くて、非常に価値があるなと思います。


<問題点。意外と難しい。>

ただ、いくら以前よりコロナの自粛制限が緩和されたとはいえ、まだまだ以前の様に週何回もスタジオを借りて皆で集まってリハーサル。。ということは出来ません。

問題点:
①NYでは、格安でスタジオをレンタル出来る場所がかなり減ってしまいました。
②ダンサー皆がコロナ検査をしたとしてもやはり危険性はあるので、集まっての練習は好まれません。完全に安全を確保するなら製作期間中は皆他者と接触しないように泊まり込みなどの対策が必要で、宿泊先や費用がかさむ。
③そもそも多くのダンサーが自国や実家に帰ってしまったので、物理的に集まれる場所にいない。

ですので生放送のオンラインダンスパフォーマンスとなれば、ほとんどがソロや、一緒に住んでいたり近くに住んでいる者同士でのデュオやトリオなど少人数作品です。



しかーし!!



そんな問題なんて全てぶっ飛ばしたのが、冒頭に触れましたあの女性集団。

「歴史に名を刻むのでは?」と言うほどの衝撃を私は受けたので、是非ご紹介させて頂きたく思います☆


<余談:私の昨年のオンラインパフォーマンスでの出来事。>
ダンサー5人の作品。振付のみではなく立ち位置の指示も含めリハーサルは全てオンラインで各自自宅から行われ、当日本番に始めて立ち位置込みで皆でパフォーマンスをした事があります。激しく複雑な振付+踊りながらの交差も多かった為、身体中のアンテナがかなりビンビンに張り巡らされ、普段とは違う緊張感がありました。


超熱血パッション・クリエイティブ女性集団 VALETTO ダンスカンパニー


その名は、”VALETTO ダンスカンパニー”

若きメキシカン/アメリカン女性監督・コレオグラファー・ダンサー・アーティストであるValeria Y. Gonzalezが率いています。

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彼女のアーテイストとしてのミッションは、女性の力を最大限にすることや輝かせることや権利を向上させること。なので出演者はほぼ皆女性で、女性の抑え込まれた悩みや苦悩、秘められた欲望やパッション、そして果てしない強さ。それらを前回に放出します。

過去の作品もどれもとてもリアルで、なにより力強いです。


作品タイトル  "MOON" 
 ~a new category in Live Virtual Film~


さて、今回お話するのは昨年12月の最新作 "MOON" 。
どんな特徴があって、一体他と何が違うのか、みていきたいと思います☆


<あれもこれも、何も無い!>

ステージ        無し!
良いカメラ       無し!
カメラマン       無し!
そもそもカメラ     無し!
照明さん        無し!


<あるのは、zoomとクリエイティブさのみ!>

200人以上のオーディションからリハーサルから本番まで、全てそれぞれの自宅から、zoomを使ったオンラインのみで行われたのです。

生放送のオンラインパフォーマンスは他にも行われていますが、ほとんど全て、出演者は一つの場所に集まって一緒に同じ場所で踊り、一つの作品を作っています。

しかしこのカンパニーはもっと徹底しています。

22人ものダンサーが
完全に皆自宅から(=200%ソーシャルディスタンス)
様々な工夫とアイデアを用いて
一つの画面上に
未だ誰も成功したことがないのではというレベルの
アーティスティックで
ハイクオリティで
”オンラインだからこそ”魅せれる

そんな作品を作り上げました。

以下で、更に詳しくどのようなものだったのかを動画と共にご紹介していきたいと思います☆



▼zoomのカメラ切り替えや非表示機能
zoomの機能の一つであるカメラのオン/オフの切り替えと、カメラオフの人は画面から完全に消える機能をフル活用。そして、通常各自の画面下に表示される名前も非表示に。

これらの機能を使いこなす事により、観客のスクリーン上では今出番の人のパフォーマンスのみが表示されます。
よって、実際の舞台と同じようにデュオの時は2人だけ、トリオの時は3人だけを見る事が出来ます。もちろんソロの時は1人のみが画面いっぱいに表示されるのでとても目立ちますし、群舞の時は22人全員を一気に見る事が出来ます。

(*リハーサル時なので名前が表示されたままです。)



▼デバイス2台使い

また、ソロの時はアーティストがデバイス(携帯やパソコンやタブレットなど)を2台使いする事で、同じ一人のソロだけれども色んな角度から見れるようにし、非常に不思議で興味深いものにしていました。

例)
・一つは正面で、もう一つは天井に吊るすなどして、違う角度から見せる。そうする事で、同じ動きなのに全く違う風に見える演出。

・一つは自宅の庭で、もうひとつは家の中。そして庭から家の中に走って移動する振付をすることによって、庭の画面から消えて突然家の中の方の画面からその人が表れるというとても臨場感のある演出。

(⇧他の写真もとてもクリエイティブですので是非スクロールしてみて下さい☆)


その他
・22人のソロや群舞などシーンの切り替え時の工夫。
・豆電球を持っている人達を集めて幻想的な、タイトルでもある”MOON"を連想させるシーン。


・誰かのソロの途中で他のアーティストの表情を入れる。(口元など顔面ドアップのこのシーンでは、何かに苦悩している左のパフォーマーをあざ笑っているようで、ソロの彼女の苦悩をより際立たせていました。)

・各自それぞれの自宅の構造を最大限に利用する為、アングルや照明、そして振付や動きの動線が全くの別物。また、自身の小さなお子さんを抱っこしているシーンも作品に入れたり。
⇨よって、各アーティストのソロシーンは本当にその人それぞれとなり、どれも個性的で新鮮で、何よりリアル。(舞台であれば少なくとも見る角度はいつも「正面から」と変わらないので、この違いは非常に大きいです。)


・一番下の右端に、お子様を連れた方が見えると思います。この方以外にもお子様やペットと共演している方々がいます。こちらはエンディングのシーンで、それぞれの人生が上手くバラバラに表現されています。幸せそうだったり、悲しそうだったり、手紙を書いていたり。。。
「色んな人、人生、問題、幸せのカタチがある。」「それぞれ違う。でも、皆この地球上から、”MOON”で繋がっている。」
それが非常に上手く表現されていると思いました。私もとても感動しました。


こちらの作品、レンタルで全て鑑賞できるようになったようです!
こちらから、是非レンタルしてみてください☆


<苦労点>
ここまでの規模の生放送オンライン作品は未だ事例がないので、やはり苦労点もあったようです。

・全てオンラインなのでもちろん通信の時差が多少なりともあり、フリのタイミングを全員で合わせるのはかなり難しい。

・また、次の出番の人がちゃんとスタンバイしているかを誰かが目視でチェックする事も出来ないので、完全に出演者自身が一時も気を抜かずに自身でスタンバイ、そしてカメラのオン/オフをしなければなりません。
実は私のパートナー(Sara Pizzi)がそのダンサーの内の一人で、オーディションからリハーサルから本番までずっと見ていたのですが、振付よりも何よりも、出番の準備にかなり緊張し、気を張り巡らせているのがヒシヒシと伝わってきました。


VALLETOダンスカンパニーのすごいところ

正直、他の大御所カンパニーに比べたらもちろん画像も荒いです(だってzoomの内カメラ)。豪華なセットや照明や大道具がある訳でもありません(だって自宅)。一歩間違えれば素人感が出てしまう作品だったかもしれません。

特に私のパートナーは私のオンボロアパートの一室から。よくみたら壁に穴が開いてるのが見えます。。(^^;)

しかし、私は他の大御所カンパニーが作った「超カッコ良い」作品よりもとても惹きつけられ、魅力・価値があると思いました。
なぜならリアルで、説得力があると感じたからです。

他のものはテクニックがあってすごいけど、なんだかサーカスを見ているような感じだったり。単に”見た目がカッコ良い”、を重要視しているような感覚。逆に中身重要視のものはあまりフィジカルなテクニックが少なくて、なんだか強烈なものを見させられているな、、、と感じられてしまうことも。(*これはかなり私見です。)

しかしVALLETOは、ダンサーそれぞれが超絶テクニックを持っているにもかかわらず、アーティスト性がとても高くて演技と言うかもはや生の声、フェイクじゃない。感情を全力で出してそれが伝わってくる。

こんなにも、
テクニックとアーティスティックさと感情が上手くバランスよく繋がって相乗効果を出しあっていて、
かつゼロ予算で、
完全ソーシャルディスタンスで、
22人で90分という大規模な作品
を成功させたのはVALETTOの”MOON”が初ではないかと思います。

なので私は「歴史に名を刻むのでは!?」という衝撃を受けました。そしてそれは、言い過ぎではないかもしれません。なぜなら、「新しい可能性を大きく開いた」という意味でとても大きな価値があるからです。

きっとこの作品に影響を受けて、このようにzoomを使いこなした作品が表れてくるでしょう。

過去の偉人「色の革命:アンリ・マティス」や「形の革命:ピカソ」「そもそも何も表現しない!:マレーヴィッチ」などのように。(詳しくは以下参照)




終わりに。~クリエイティブ力の大切さ~


zoomは一人が多少の月額料金のみを払いさえすれば大人数でも長時間利用出来ます。ほとんどお金のかからないものです。
このzoomとコレオグラファー&ダンサー達のクリエイティブなアイデアのみで、90分ものとても素晴らしい作品をVALLETOカンパニーは作り上げました。

お金をかけさえすればきっと誰だって、そこそこなんかカッコ良いものは作れると思うんです。良いカメラ、素晴らしい舞台セットや照明や音響など、そしてそれぞれに携わる一流のプロフェッショナルな人達を雇えば。

しかし、ここまで徹底的にお金をかけず、”あるもの” のみで、おもしろくて高クオリティでプロフェッショナルで価値や意義のある作品を創るのは、並大抵の創造性・工夫・努力・パッションでは出来ないでしょう。

言い換えると、

アイデアと努力次第で、良いものは作れるということです。

映画でもそうですよね、。超一流豪華キャストを多用した映画でも駄作はあるし、お金をかけれなかったであろうとてもシンプルなインディーズ映画でとてもすばらしく賞賛されるものもあります。


ですので今後も、新しい可能性を発見するお力にもなるような、色んな作品をご紹介していきたいと思います☆

本日もありがとうございました!

Aika.

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