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イランのヘリコプター墜落が世界経済に与える影響(1)

 2024年5月19日に #イラン #東アーザルバーイジャーン 州( #東アゼルバイジャン 州)で発生した、大統領と外相を乗せた #ヘリコプター墜落事故 は、日本国外では『2024 Varzaghan helicopter crash(ヴァルザガーン・ヘリコプター・クラッシュ)』と呼ばれています。 #ヴァルザガーン は、イランの東アゼルバイジャン州に位置する郡の名前です。日本では『東アーザルバーイジャーン州ヘリコプター墜落事故』と呼ばれています。

 この英語と日本語の呼称のニュアンスの違いに注目してください。海外では『2024』と発生年度が冒頭に明記されており、それだけ歴史的に重要な出来事であったことを示しています。さらに、英語の『crash』にはこの文脈では『墜落』という意味しかなく、『事故:accident』か『事件:incident』かは明言されていません。要するに、英語表記だと現状では事故か事件なのかは不明ということです。

 当事国であるイランの #ペルシャ 語では『سانحه سقوط بالگرد ابراهیم رئیسی』で、これを直訳すると『エブラヒム・ライシ・ヘリコプター墜落事故』となります。一般的な航空機の事故原因究明には、ブラックボックスを回収してパイロットなどの言動を分析したり、墜落原因が外部からの攻撃、衝突、部品の劣化などによる故障、整備ミス、操縦ミスなどであることを特定するために、航空事故原因調査委員会が設置されることがあります。調査には数ヶ月から数年間かかる場合もあり、事故原因の調査結果がミサイル攻撃による『事件』だったと判明することもあります。そのため、まずは『事故』と表現することは自然なことですが、敢えて事故とも事件とも明言しない時は、事件である可能性が非常に高いことを意味しています。

 今回のヘリコプター墜落で亡くなったエブラヒム・ #ライシ大統領 (63)と、ホセイン・アミール・ #アブドラヒアン外相 (60)は、イラン国内では強硬派として知られており、 #イスラエル が最も恐れていたのが、この両名でした。

 イランの軍部には、正規軍( #アルテシュ )と #イスラム革命防衛隊 #IRGC )の二つの主要な組織があります。特にIRGCは国内外での政治的、経済的、軍事的な影響力が非常に強く、故・ライシ大統領はこの組織との結びつきを強化していました。IRGCは多くの経済活動を行っており、国内のインフラ、エネルギー産業、建設など多岐にわたる分野で影響力を持っています。さらに、宗教的・司法的背景、最高指導者との関係、そしてIRGCとの強固な結びつきにより、イランの軍部に対する強い影響力を持っていました。

 また、故・アブドラヒアン外相もIRGCとの強い関係を持っており、特に地域の軍事的・安全保障的問題に対する協力を推進していました。故・アブドラヒアン外相は、 #MENA #中東・北アフリカ )地域の専門家として知られ、イランの地域政策や国際関係に深く関与していました。彼は #シリア #レバノン #イラク に対する影響力も甚大でしたが、この三国はイスラエルの敵国として、イスラエルを包囲していました。

イランの実質的な国家元首は誰か?

 大統領制の国家においては、通常は大統領が国家元首です。ところが、イランでは大統領が存在しているにもかかわらず、イランの実質的な国家元首は『 #ハメネイ 師(アリー・ハーメネイー最高指導者)』です。

 イランにおける最高指導者は #イスラム 教シーア派の法学者であり、宗教的な権威を持ち、 #イスラム法 #シャリア )の解釈や適用に関して最終的な決定権を持ちます。また、イランの政治体制の頂点に立ち、政府の主要な政策決定に関与します。大統領、議会、司法機関などすべての政府機関に対して指示を出す権限があります。さらには、イラン軍の最高司令官であり、軍事政策や軍の指導者の任命に関して最終的な決定権を持ちます。さらに、最高指導者は司法機関の高官を任命する権限を持ち、司法制度に大きな影響力を及ぼします。これは、日本の制度に例えると、司法、立法、行政、自衛隊の指揮権まで全てを掌握している最強の権力者ということです。

 また、イランの最高指導者はイランの政策の一貫性と調和を保つため、政府機関の活動を監督し、調整する役割を果たすだけでなく、国の全般的な方針や方向性を決定します。それに基づいて政府の政策や行動が決定され、イランの政治体制において最高指導者は非常に強力な地位にあり、事実上の国家元首として機能しています。

 現在の最高指導者の #ハメネイ師 は85歳と高齢であり、後任者として今回のヘリコプター墜落で死亡した故・ライシ大統領(63)が最有力候補と見なされていたため、今後、一気に後継者争いが激化する可能性が高いです。また、イスラエルに対するさらなる強硬派が後任者になる可能性も否定できません。

ネタニヤフ政権はいつ崩壊するか?

 イスラエル軍による #パレスチナ 自治区ガザ地区への攻撃が #ジェノサイド #集団殺害 )にあたるとして、 #南アフリカ が軍事作戦の停止などを求めて提訴した訴訟で、国際司法裁判所(ICJ)は2024年1月26日に、イスラエルにジェノサイド行為を防ぐための措置をとるように命じました。

 その後、 #ネタニヤフ 政権のパレスチナに対する数々の #国際法違反 容疑に対する批判は、世界中に広まっています。これまでパレスチナ問題にほとんど興味がなかった日本の学生ですらパレスチナの #インティファーダ 運動に共鳴し、渋谷でのデモ活動にまで発展しています。

ベニー・ガンツがネタニヤフ政権を打倒する?

#ベニー・ガンツ 前副首相兼国防大臣は現在、イスラエル国内外で非常に高い支持を集めています。ガンツは最近アメリカでバイデン政権の高官と会談し、ホワイトハウスからの支持を得ています。 #ガンツ の訪問は、ネタニヤフの承認なしで行われたため、ネタニヤフは激怒しましたが、この訪問はガンツの国際的な信頼性と外交力を強調するものとなりました。ホワイトハウスはガンツを重要なパートナーとして扱い、特にガザの人質解放交渉や人道支援の問題で彼と連携しています。

 一方で、ネタニヤフ首相の連立政権は2023年3月に、首相の解任を医学的および精神的な能力喪失の場合に限定する法律を最高裁で可決させました。この法律は、首相が統治に適さないと見なすことができるのは健康上または精神上の理由からのみであり、その決定を下すことができるのは司法長官ではなく、首相または政府のみと規定しています。これはまるで #Catch_22 のような状況を生み出しています。

 ネタニヤフ首相は、現役の首相でありながらイスラエル国内では、詐欺、背任、賄賂受領の容疑で公判中です。また、イスラエル国外では #戦争犯罪人 として国際指名手配されるのは時間の問題です。ネタニヤフ政権が法律を変えて、これ以上保身に走り続けると #クーデター が勃発する可能性もあります。

つづく…

#武智倫太郎

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