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『夢見るキャンディー』/掌編小説

好きな夢をみられる飴をもらった。

本気で信じてはいなかったが、試してみることにした。寝る前に包みを破って口に放り込む。ほのかに甘い。虫歯になるかもしれないなあ。さて、どんな夢がいいか。うとうとと考えながら眠りについた。

朝8時過ぎ、目が覚めた。内容は忘れてしまったがとても良い夢だったことは覚えている。思い出そうとしながらベッドで余韻に浸る。ああいい夢見たな。不思議な飴だったがこれは本物かもしれない。

「お父さん、まだ起きないの?」
小学生の息子がドアを開けて部屋にはいってきた。そのままベッドの上に飛び乗って暴れる。日曜日だから遊びに行きたいのだろう。元気がありあまっている。もう少しゆっくりしたかったが、仕方がない。

「それ、なあに?」
ゆっくり起き上がると、枕元にくしゃっと丸めた飴の包み紙をみて息子が聞いてくる。
「不思議な飴だよ。食べると好きな夢が見られるんだ。優馬もいるか?」
残りのひとつをポケットから出して息子に差し出す。
「ありがとう」
優馬は飴をうけとると、包みを開いてそのままパクッと口にいれた。

「あっ」
「もう食べるのか。それは夜寝るときに食べるもんなんだよ。そうすると優馬の好きな夢がみられるんだ」

「そうなの?」
「でも僕、夢あるよ。大きくなったら考古学者になって、世界中の恐竜を見つけるんだ!」

彼が大きな夢を持っていることを知った。夜見る夢じゃなく、今見ている夢だ。今日の予定が決まった。

「よし、今日はみんなで恐竜博物館へ行こうか。真奈も起こしておいで」
ジャンプして喜ぶ息子を見ながら、カーテンを開けて大きく伸びをした。


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