三浦 杳(よう)

若年性の希少がんに罹患した夫の闘病に伴走したことをきっかけに、医療ボランティアを開始。…

三浦 杳(よう)

若年性の希少がんに罹患した夫の闘病に伴走したことをきっかけに、医療ボランティアを開始。医療系エッセイを投稿中。 夫を天国に見送った経験を糧に、人生のあらゆる「喪失」に寄り添いながらも、生きる喜びを感じ続けるためのサポートを目指します。 学んだこと、それは、死とは「師」。

最近の記事

うな重の秘密

コロナ先生の生活指導最近、コロナ禍でおうちごもりの日々が続いて、自分を内省せざるを得なかった。でも、そのおかけで憑き物が落ちて、人生のくびきから解放されたように感じている。 在宅勤務が始まってからずっと、とある資格の勉強をしていて、筋トレもしていて、自分にストイックに過ごしていた。必要な情報には日経でアクセスしていたけれど、テレビのニュースもSNSも、ほとんど見ていなかった。 でも、宣言解除になってからも在宅勤務が続くことになって、ああ世の中は変わってしまったし、変わって

    • お便さんと一緒

      2020/2/5 今朝、Twitterで「摘便」について知った。 自力の排泄が難しい人の肛門に、看護師さんなどが指を入れて便を搔き出すことだという。 記憶をたどると、夫の末期、ホスピスでこの摘便をしてもらった記憶がない。 夫は抗がん剤の副作用のためずっと便秘で、自力で排泄がしたくて、ホスピスの個室に入ってからも看護師さん5人がかりで抱えてもらって便器でうなったりしていた。 摘便をしてもらえばよかった。 私は、夫の死の直後、末期の水として唇を湿らせてあげられなかった

      • とても個人的で、実は政治的なこと

        2019/12/25 メリークリスマス! 先ほど、【AYA世代のがんの家族(特に親)支援について】というタイトルで、古谷さんがFacebookに次のような投稿をあげていました。引用については、御本人から許可をいただいています。 精巣腫瘍の好発年齢は20~30歳代であり、AYA世代の定義ではど真ん中のがんです。精巣腫瘍のピアサポートを9年とインタビューをしてきて思うのは、あたりまえなことだと思いますが親御さんがとても熱心なことです。 中略 最近思うのは、他のAYA世代

        • 人は学び舎

          2019/9/23 先週の三連休、大阪に行ってきました。 済生会吹田病院で行なわれる、精巣腫瘍患者友の会主催の公開講座に出席するためです。 当日は、夏の名残を感じる日差し豊かな暑い日。 カラコロとスーツケースを携えて、東京から新幹線でたどり着きました。 ここで、コンテンツにはなかったものの、数日前にお誘いいただき、少しだけ私の体験談をお話することになっていました。 パワーポイントも作らず、メモを見ながら話し始めたのですが・・・ 結果、うまく話せませんでした。

          部屋とモルヒネパッチと私

          2019/9/9 今日、初めて精巣腫瘍の患者さんの奥さまからメッセージをいただきました。 丁寧に返信しました。 帰宅後、モロヘイヤとトマトのスープをつくり、コエドビールをグラスに注いだ後、何気なくまたスマホをチェックすると、2通目のメールが。 今度は、一番悩んでいることが噴出したようなメールでした。 朝、J-TAG代表の改發さんからメッセージを受けて、思わず胸がしめつけられました。 台風が来たけれど、そんな自然の暴力は、病として誰かの体の中で、人間を嫌が応でも自然

          部屋とモルヒネパッチと私

          苦しみは私を強くする風

          2019/9/30 ボランティア、始めました。 精巣腫瘍友の会、という団体があります。 夫の闘病が決まった頃、新聞記者だった父が調べ、探してきてくれた団体でした。 そのときは、都内も某病院での抗がん剤治療が奏功せず、次の一手を探しあぐねていたとき。 代表の改發厚さんは、「京都へ行け」と、私たちに道を示してくれました。 そこで出会い、最善の医療を提供してくれたのが、中村晃和先生です。 (勝手に名前をあげてしまい、すみません) あれから4年。 今度は、私が誰か苦

          苦しみは私を強くする風

          汀にて

          2019/6/15 今日は夫の3回目の命日です。 最近、暴力による事件が後を絶ちません。 このような事件の一連の報道により、死に対し、「暴力的」なイメージが付与されていると思います。 私は、そう感じていません。死は暴力的でも、暴力そのものでもないのです。 1年4ヶ月の闘病を経験し、私はむしろ病や医療に対して暴力的だといった感があります。 病は、台風や津波のような自然の暴力。医療は対抗暴力といったイメージです。 死は、出航の瞬間でした。 忍土からの出航。 船着

          鎮魂

          2019/3/11 今日は、東日本大震災から8年目の日です。 供養する、慰霊する、などさまざまな言い表し方がありますが、私にとってはこの「鎮魂」という言葉が大切です。 「鎮魂」という言葉には、魂の存在を信じる気持ちが込められているように思えるからです。「鎮魂」とは、文字通り、人には魂があり、おとむらいによってそれを鎮めるということを意味しているのではないでしょうか。 震災で、突然命を奪われた方々の魂は、やはり傷ついているのではないかなと思います。また、遺された人々の魂

          死とは、師

          2019/03/01 夫が亡くなってもうすぐ3年経ちます。 この3年は、おとむらいにどっぷり浸かった日々でした。 私にとっては、亡くなった夫のことに思いを馳せることはとても自然なことですが、周囲の人にとっては、死というものが日常生活とあまりにもかけ離れているのだと気づきました。 3年経ち、おとむらいの旅が今少し収束に向かおうとしているのが分かります。替わって始まりそうなのが、「死」の旅。 同じようでいて、少し違います。 おとむらいは、亡くなった夫への責任感と純粋な