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茶湯からの、便り

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茶を習いながら、感じたことを言葉に。
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#四季

立方体の紫陽花

立方体の紫陽花

今日は30度まで気温が上がった
ぬるい夜風がそよいで笹の葉を揺らす

あっという間に夏がすぐそこまで近づいている
まだ、蝉の鳴き声はせねど

紫陽花の綺麗な季節
色んな種類の紫陽花があることを
今年になって初めて知った

お稽古でいただいたのは
紫色をした紫陽花のお干菓子

角砂糖のような大きさの
立方体の小さな塊
お砂糖がまぶされて揺らすときらきらひかる
口の中に入れると
しゃりっとゆって
少し

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紫陽花のような夜

紫陽花のような夜

ばさばさと降っていた雨が
霧のような細かな線になった

空は黒くなく
群青と薄紫が混じったような色をしてる
紫陽花のような夜

空気は澄んですっきりとしていて
雨で濡れた土と葉の匂いがする

アスファルトは湿り
電灯の光にきらきらと揺れる
車のヘッドライトが眩しく目の前をすぎる

炉から上る湯気から温度が消える
暖かさや寒さではなく
出来立ての料理からあがる美味しい湯気や
龍が上に昇る姿のような湯

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茶湯からの、便り 十三

茶湯からの、便り 十三

"山笑う"
今日、茶杓の銘に使おうとしていた言葉
冬枯れた山から緑が芽吹き始めた
春の山のさま。とのこと
丁度、今年初めて山梨の山の中で目にした光景だった

昔々の人が、同じような景色を見て
あぁ、山が笑っている様だ
とこの言葉を頭に浮かべたかと思うと
粋すぎるよなぁ日本人

他にも、調べていたら桜の異称として
"夢見草"
という言葉が出てきたり
木の切り株などから萌え出る芽のことを
"蘖(ひこば

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茶湯からの、便り 十二

茶湯からの、便り 十二

ん。蝉が鳴いている
お稽古を終えて外に出て
薄手の羽織り一枚で心地よい天気になったなあと思っていると、ミーンとどこかから聞こえてきた
なんて早いんだ
まだだよ。友達は誰かいたかい?と心配になる
温まる地球の危機も同時に危惧する

今日の炉は
薄雲
という名で
湯をあたためる炭が見えない様に
釜の周りにUFOのように円盤上に板が張っていた
あたたかくなってきた季節
炭が見えると季節を存分に感じられな

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茶湯からの、便り 十四

茶湯からの、便り 十四

薫風自南来

3週間空いただけで
めっぽう空気があたたかくなりました
ぐーっと息を吸えば青々とした緑と
むくむく元気な土の匂い
気づけばあっという間に5月の気持ちのいい季節がすぎ、梅雨がそこまで近づいてきた
今日も曇り
ぽつぽつと雨が落ちている

今日は三友という名前のお稽古をした
お花と、お香と、お茶
その3つを5人で行う

それぞれ花を持ち寄り
床の間に飾られた真行草の花器に順々に活ける
ゆっ

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茶湯からの、便り 八

茶湯からの、便り 八

今日はお稽古に行く前に
いい加減、そろそろお手前を間違えたくなくて
動画を見ながら手順の予習をした

あれの次はこれ
それをしてーそれでーあれか
よし
頭に入ったぞ

頭いっぱいのまますぐに稽古に入ったら
頭動いて心動かずになってしまった感じがする
いままでで一番すーっと流れよくできたけれど
あれ。なんかちがうな。という感じ

頭をすっからかんにして
身体に任せるから
心を動かす余白ができるのかと

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茶湯からの、便り 一

茶湯からの、便り 一

一番静かな踊り
美しくかっこよく
指先までかかとまで
身体に軸をもって
舞うように
軽すぎず重すぎず
地面を舞うように
茶をいれる

水面にとびこむ蛙がみえたような
濃い
美しい苔の張った丸い水面に
吸い込まれるように
飛び込んでゆく

まろやかな
やわらかな
お湯がやさしく
電気ではなく炭火のあたたかさを
自然のやさしさを味わう

冬の霜がはったような乾菓子をいただきながら
これから一層肌寒くな

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茶湯からの、便り 二

茶湯からの、便り 二

意識をもてばもつほど
こうしなきゃああしなきゃ
どうしたら美しいのか
頭を動かせば動かすほど
身体はロボットのようにギクシャクと動く

朝起きて
ねぼけまなこで頭はまったく動かぬ中
身体が勝手に暖かい飲み物を求めて湯をわかし
ぽけーっとしながら、やかんから湯を注ぐときは
なんともゆるやかにいい余白で淹れられるのに
頭は身体をかたくする

そういえばこの間
コンタクトインプロビゼーションをしたときも

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茶湯からの、便り 三

茶湯からの、便り 三

お稽古を終えて外に出ると
冷たい雨が降っていた

目の前の公園の木の葉に目が止まる
綺麗…
思わず声が漏れる
薄い緑と淡いピンクの葉が雨に濡れている
その隣にふとめをやると
対照的にしっかりとした強い緑の葉にピンクの椿
しばしそこで止まる

そのまま帰り道をあるいていると
足元に大きな赤い紅葉
うちの近所の紅葉はまだ色づき始めたばかり
真っ赤に色づく葉にすこしの驚きとともにうえをみあげると、視界が

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茶湯からの、便り 四

茶湯からの、便り 四

帰り道
歩く早さが遅くなる
とつ
とつ
とつ
せかせかとした日々がスローダウンして
身体からいい具合に力が抜ける

明石というお茶碗で今日はお茶をいただいた
ほんのりピンク色がかったお椀
今が春ならば、桜の花びらが水面に落ちる姿を想像したかもしれないけれど
今は冬
なんだか土の温かさも相まって焚き火にあたっているようなあたたかな想像をした

そそと生けられた水仙の花
一つは上を向き
二つは仲良くひ

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茶湯からの、便り 五

茶湯からの、便り 五

歳月人を待たず
二〇二〇年最後のお稽古
先週から7日しか経っていないのに
いっきに寒さが増して
震えるほどになってきた
真っ赤に染まっていたもみじも
枝のさきでちりちりに縮こまって風に流れていくのを待っている

うう
寒い

釜からお湯を掬いながら
今日の湯はなんだかとろっとしているな
透明というより少し白っぽく思える
と考えていた

たてた茶を飲むと
やはり、とろっとまろやかでやわらかい

お炭

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茶湯からの、便り 七

茶湯からの、便り 七

普段の景色が少し違って見える
見えなかったものが見えるようになる
聞こえなかったものが聞こえるように
香らなかったものが香ってくるようになる
それが私にとっての茶の魅力のひとつ

公園に鮮やかな桃色が見えた
桃の花かな
立春もすぎ
今日はぽかぽかと暖かい
少しずつ春のはじまりがみえる

それでもまだまだ冷える季節
掛け軸には 紅炉一点雪 とある
木造平家の、壁や屋根があるようでないような家の中

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