Hiro Matsubara

在外研究でニューヨーク滞在中。立教大学文学部。コロンビア大学歴史学部客員研究員。本業以…

Hiro Matsubara

在外研究でニューヨーク滞在中。立教大学文学部。コロンビア大学歴史学部客員研究員。本業以外で気付いたことを書くつもりですが、たまに思わず触れてしまいます。しょうがない、人はいつも歴史しているので。

最近の記事

ニューヨーカーの煩悩—NYタイムズ不動産欄の悦楽

滞在期間も終わりが近づき、去年はすみずみまで読んでいたニューヨーク・タイムズも斜め読みしかしないように。紙版だとやっぱ楽しいなと思った日々(←気持ちに余裕があった、ないし暇だった)が懐かしい。弔いに、大好きだった欄(セクション)を紹介。第一弾は、real estate 不動産。 土曜版に入っているのがこの不動産セクション。ニューヨークの金持ちとインテリが、週末の朝にコーヒーを飲みながらぐふふと読むわけです。リベラル派で知られ、平日の舌鋒鋭い記事と土曜版・日曜版の充実した論説

    • リベラルアーツ校という選択ー女子大Barnard Collegeの学生さんをみて

      今回はコロンビア大に所属していますが、ブロードウェイを渡ったお向かいにあるバーナード・カレッジにもおじゃましています。日本での知名度はないかもしれませんが、最難関のひとつにも数えられる女子大のひとつ。のびのびと育っているなぁと感心し、リベラルアーツ・スクールのすごみを感じます。 誇り高い人たちが自由を謳歌している感があります。一学年800人ほど。大学HPをみると有色人(student of color)44%、留学生13%、親族内で初の大学進学者14%とあり、多彩さを強調し

      • 大学院に進んでみる

        今年もひとり修士号まで取って社会に出て行く学生がいる。さぞ重宝されるにちがいない。世間さまはいまひとつご存じないようだけれど、修士課程くらいまで勉強するのには大きな意味があると思う。 なぜなら、時代は変わっているから。 いままでと同じビジネス、業態、政策のくりかえしではやっていけない。生活の仕方、求める価値、ひととの付き合い方も、一見すると変わることのない自然のようで実は変化している。みんなが同じひとつの世界にいるとはかぎらず、実はいくつもの層や潮流がある。 このとき、

        • コロンビア大院生TA組合の乱

          いまアメリカで熱いといえば労働運動。つい先日もNY西部のバッファローのスターバックスで組合結成。組合に厳しいので知られるAmazonでも、組合化の動きが話題。小売業、飲食業を中心に大量離職(quitters、こんな仕事辞めてやるぜマン)の時代とか言われたりもします。少々の賃上げをしても、人を集められない状態です。 コロンビア大でもTA(ティーチングアシスタント)組合のストライキがありました。昨年末に10週間におよぶストライキを敢行して、ほぼ要求を通しました。賃金引き上げ、健

        ニューヨーカーの煩悩—NYタイムズ不動産欄の悦楽

          NYの黒人奴隷墓地

          マンハッタンの南、いまの市庁舎の裏手あたりに、黒人奴隷墓地跡African Burial Groundがあります。ニューヨークなのに奴隷!?というのがポイント。 奴隷制プランテーションがある南部から遠く離れたニューヨークは実は全米屈指の奴隷制都市がでしたが、外国人にとってだけでなく、アメリカ人一般にも、ニューヨーカーにも忘れられていました。 奴隷制の経験を思い出すことになったのは1991年のこと。ビルを建てようとして地盤をチェックしたらお骨がたくさん出てきて、古地図を見て

          NYの黒人奴隷墓地

          サバイブしてしまったーNY中学事情3

          入学させるときにはあまりに波乱万丈で、ヨッシャかるく10本は書けるなと思った子どもの学校ネタ。その後は案外とスムースで、これといって書くことがないままに最初の学期が終わってしまった、チッ。 いったいどうしてだ。英語は話せないし、社交的なわけでもなく、お年頃のうちの中坊はなぜ生き残れたのか。備忘にいくつか書いておきたい。 最大の要因は非英語話者むけのクラス(ESLとかELLと呼びます)がしっかりと制度化されていること。地域によって差もあるのだろうが、ニューヨーク州では子ども

          サバイブしてしまったーNY中学事情3

          学校の入り方 NY中学事情0

          息子N氏をミドルスクールに入れねばならない。が、よくわからない。結局のところ、出かけていって直談判することに。なんでやねん。 引っ越して来ましたぁで公立校なら受け付けてくれるだろうと日本モードで思っていると、大学の支援部隊によるとそうはいかないと言う(後に気付いたのはこれはマンハッタン限定の現象らしい)。NY市教育委員会が定めるようにWelcome Centerに申し込もうと思ったら、それも止められる。底辺校に割り当てられたりするからと(大意)。住もうと思う地区のまわりでま

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          身体をわがものに―黒人ダンスカンパニーAlvine Ailey

          黒人ダンスカンパニーAlvine Ailey American Dance Theater(アルヴィン・エイリー)の公演にもろ手を挙げて万歳してしまいました。すごい。 基礎にあるのはクラシックなバレーの技法にみえます。でもそのことを端々で匂わせながらアルヴィン・エイリーがやるのは、その身体技法を組み替えていくこと。白人中産階級を規範にしたからだの使い方でなくて、それを「黒人的なもの」にずらしていきます。目からうろこが落ちる感じ。 お尻の使い方ひとつとっても、端正でいてちょ

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          NY黒人街の記憶展―メトロポリタン・ミュージアム

          NYを代表する博物館のひとつメトロポリタン・ミュージアム(愛称Met)で、展示Before Yesterday We Could Fly: An Afrofuturist Period Roomが公開中。超訳すると、「NY黒人街の記憶展」。Metが接しているセントラルパークの一角に19世紀半ばに実在した黒人たちの町に思いをいたす企画です。宣伝の感じからするといまMetイチオシの展示。 タイムリーな企画です。 三つの教会、学校、墓地などなどを抱えて、賑わいを見せていた黒人街を

          NY黒人街の記憶展―メトロポリタン・ミュージアム

          小さな町とグローバル史

          ニューヨーク州北部の町スケネクタディ(Schenectady)のカフェで昼飯を食べているとウェイター氏が話しかけてきました。 氏:ヘイ、Youは何しにこの町に? 私:エリー運河の跡をたどってるとこ 氏:まじか、グレートアイデアだな。うちの町はすげえからな。エンジョイしてくれ。 へー、郷土愛全開だな。めっちゃ胸張るじゃん。運河めぐりの途中で何の期待もなく立ち寄っただけの町ですが、何もないようで活気あり。サンドウィッチも美味。聞いたこともなければ読み方もわからなかったスケネクタ

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          サンドウィッチとハドソン川

          参った。ニューヨークで一番うまいサンドウィッチは、マンハッタンからハドソン川沿いを北上した町にありました。 これは今まで食べたことのないお味。Summer meatとなんちゃらのチーズと書いてあって、なんのことかわからないけれど響きが良かったので注文。やってきたのは生ハムと、なにをどうしているのかわからないけどふわっふわにクリーミーなチーズに、たっぷりのジェノベーゼ・ソースをぶち込んだサンドウィッチ。うんまい!(←食レポ、へた) それにしても、マンハッタンから車で2時間く

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          つながるAOC 下院議員のタウンホール・ミーティング

          ニューヨーク暮らしのお楽しみはなんと言っても政治イベントですよね(?)。と言いつつ、まだあまり遊びに出かけていません。さみしいのでひとつ活きの良い議員の様子をのぞきに行ってみました。 民主党左派の旗手アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(通称AOC)をご存じでしょうか。アメリカ版の辻元清美とでも思っていただければ想像がつきます(?)。移民が住民の半分を占めるといわれるニューヨークの下町を選挙区にして、2018年の予備選挙で民主党の現職大物議員を破って世間をあっと言わせた連邦

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          ニューヨーク公共図書館の心意気

          ニューヨーク公共図書館(New York Public Library)が、図書返却延滞者に課していた罰金制度を廃止と発表しました(2021/10/5)。その決め方がかっこいい。公共図書館の使命から考えると、罰金なんて課して利用者の足を遠ざけていたのは間違ってたぜ、大事なのはもっともっと使ってもらうことなんだぜと。 わたしの日本での本拠地の公共図書館は罰金制度なんてなかった気がします。単純にニューヨーク公共図書館の仕組みがうまくなかったのかもしれません。 それでも、すぱっ

          ニューヨーク公共図書館の心意気

          研究機関以外にも仕事はあるはず。経験を共有してみようというアメリカ史学会(AHA)のウェブページ。生身の経験の一端がつづられていて、顔が思い浮かぶ。(これただのツイートだな。使い分けがまだわかりません。) https://www.historians.org/publications-and-directories/perspectives-on-history/november-2021/townhouse-notes-my-meandering-path-out-of-academia?fbclid=IwAR1iIC-1_m8qyICdOsxGldqZlOTr0efZvLT_TizphhkHfN7dvcs67U14m3E

          研究機関以外にも仕事はあるはず。経験を共有してみようというアメリカ史学会(AHA)のウェブページ。生身の経験の一端がつづられていて、顔が思い浮かぶ。(これただのツイートだな。使い分けがまだわかりません。) https://www.historians.org/publications-and-directories/perspectives-on-history/november-2021/townhouse-notes-my-meandering-path-out-of-academia?fbclid=IwAR1iIC-1_m8qyICdOsxGldqZlOTr0efZvLT_TizphhkHfN7dvcs67U14m3E

          コロナ対策とアメリカ文化

          NYタイムズ本日の一面は、コロナ死がついに70万人超えと。死者数がのびているのは共和党優位で感染対策を怠った南部ながら、いまも全米で毎日10万人くらいの新規感染者。医療だけでは防疫はできないわけで、文化(社会のくせ)が情勢を左右する。アメリカ文化と防疫の相性は悪いのかしら。 昨日でかけたヤンキースタジアムもワクチン接種証明を求められなくておどろいた(すでにNYは未接種者には屋内施設入場禁止が定められているのに。野球は屋外ということ?)。球場近くのバーは立錐の余地なく、ビール

          コロナ対策とアメリカ文化

          教師の矜持ーNY中学事情2

          息子N氏、ミドルスクールに初登校。18ヶ月ぶりの登校なのはほかのニューヨークの子どもたちも同じ。新入生(なのかな)は緊張の面持ち。けっこうな割合で親御さん付き。入り口の分散などを図っているけれども同一時刻に集めているのでたいへんな混雑。飛び交う多言語。 N氏がのっけから立ち往生したりするとさすがにかわいそうなので、わたしも登校を見届けに行く。またとんでもないカオスを拝めたらおいしいなという下心がないわけでもない。 でも今日はちょっと良いシーンでした。たしかに混乱はしている

          教師の矜持ーNY中学事情2