リベラルアーツ校という選択ー女子大Barnard Collegeの学生さんをみて

今回はコロンビア大に所属していますが、ブロードウェイを渡ったお向かいにあるバーナード・カレッジにもおじゃましています。日本での知名度はないかもしれませんが、最難関のひとつにも数えられる女子大のひとつ。のびのびと育っているなぁと感心し、リベラルアーツ・スクールのすごみを感じます。

誇り高い人たちが自由を謳歌している感があります。一学年800人ほど。大学HPをみると有色人(student of color)44%、留学生13%、親族内で初の大学進学者14%とあり、多彩さを強調します。ジェンダー、セクシュアリティの面でもあぁいろんな人がいるのだなとただおじゃましているだけでもわかります。文系から理系までフルスペック。おもいおもいのスタンスで、リラックスして勉強している様子が好ましい。

歴史的には、女子学生の入学を認めないコロンビアにしびれを切らしてアニー・ネイサン・メイヤー(Annie Nathan Meyer)が1889年に創設した女子大。いまではコロンビアと密接に結びついて、授業や図書館をおたがいに使っていますし、教員も連合していますし、学生もコロンビア・ファミリーの一員として振る舞うときががあるような気がしますが、別の学校。コロンビアの大きな傘のもとにある一校なのねと聞いたら、ちがーうとそこは強調されます。コロンビアごときなにするものぞ的な自負もみられて、たいへん元気。

それにしても、こんな隣同士にあって、バーナードのキャンパスでもごくあたりまえにコロンビアの男子学生諸君がいて、授業でも一緒で、はて「女子大」として自立するのかと最初は不思議でした。しばらくすると、あぁこの人はバーナードっぽいなという学生がいることにも気づき、ますます不思議。いったいどうやってバーナードらしさはたもたれるのだろうと

鍵はおそらく、sense of belongingというやつです。自分の居場所・拠点があって、自分の関心を許容し、伸ばしてくれることへの安心感。たがいの顔がわかる小規模、教員との距離の近さ、図書館から各種サポート(デジタル・ヒューマニティーズ・センターみたいなのもあってたいへん重宝)まで手厚い支援で、よしがんばっちゃおうかなと勇気づけられるようです。

もちろんコロンビアも全米トップを争う優良校ですが、おそらくちょっと規模が大きい。それなりに埋没もできますし、抜きん出ようと思うと突っ張らねばならない(もちろんそこは名門の魔力で、その厳しさだからこそ伸びてくる人もいるのでしょう。教員はわたしが想像したよりも学部向け授業も熱心にもっていて、コロンビアもまたリベラルアーツ校としての自負ありです)。バーナードとコロンビアとは同居しているようで、けっこう異なる学生生活なのでしょう。

学部(学士課程)の4年間を学ぶなら、小規模リベラルアーツ校は有力な選択肢なのかもと感心しました。


ちなみに、立教もリベラルアーツ校をもって任じておりまして、文学部史学科はそのなかでもゼミ教育に重きを置いています。すくすくと育つバーナードの学生さんをみながらも、立教がやっているのは間違ってないのだなと確認してしまいました。

…… まさかの我田引水!いやいや、もっている資産ひとつとっても違いますので、そのまま同じとはいきませんが、でも鍵はsense of belongingを用意できるかというごく基礎的なことなのです。「アメリカでは~がスゴい」と言って一括してうらやましがらずとも、要素に分解すると日本の大学教育の良いところもいろいろあるなと。帰国したらまたがんばろうと思っています。

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