スマート農業とは?
今回は、ICTやロボット、AIなどを活用した次世代型の農業「スマート農業」をテーマにお伝えする。
■スマート農業とは?
農林水産省は、「スマート農業」を「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」と定義している。
■スマート農業の目的
1. 農作業の省力化・労力軽減
日本の農業は、農家の高齢化が進み、担い手、労働力不足に陥っている。
農業の現場を、ICTなどを活用して支援していくことが求められている。
2. 農業技術の継承
農業を継承する人材が不足し続け、これまで家族の継承のなかで培われてきた農業技術を、スマート農業のシステムなどによって継続的に継承していけるようにすることにある。
3. 食料自給率の向上
日本の食料自給率(カロリーベース)は2020年度で37%と、輸入が自国生産を大幅に上回っている。 前述のような人材不足のなかで、収量を上げ自給率を高めるためには、少ない人員で農産物を確実に育てるうえで、センサーやロボットによる自動化、植物工場といった仕組みが欠かせなくなる。
4. 環境保全
農業において必須と思われている化学肥料や農薬だが、欧州を中心に使用を制限する動きが加速している。スマート農業により、こうした化学肥料や農薬の使用量を削減したり、まったく使わずに栽培することも可能になる。
生産性を維持しつつ、環境保全にも役立つ農業を実現することもできる。
5. 品質の向上
品質の向上には、その生産物にとって最適な環境や状況を把握し、
栽培のたびに再現する必要がある。 このような作業は、先人の知識や経験などにより実現してきた。 スマート農業によって、栽培履歴を管理し、気候や土壌の環境データと組み合わせることで、いつでも最適な食味をもつ、高品質な米、野菜などを栽培することが可能となる。
■スマート農業の主な取り組み
・ロボット技術×農業
農機ロボットの自動操縦技術によって省力化を図ったり、収穫作業などをロボット技術により自動化する。
・自動走行トラクター
・農薬散布などのを担う自動飛行ドローン、
・レタスなどの作物の自動収穫ロボットなどがある。
・ビッグデータ×農業
圃場の状況を撮影したり、センサーでの計測などで、集めたビッグデータを解析し、効率的に栽培管理する方法を提示する農業も進められている。
生育状況や病気、日照などの状況による変化が、データ解析により誰でも手軽にわかるようになる。 野菜の収穫可能時期は炭酸ガスの量(CO2)などを
測定することで、収穫/出荷時期を予測することもできる。
・人工知能(AI)×農業
AIは新規就農者向けの技術やノウハウをシステム化して提供することで、
農業の経験や知識がない人でも、農業に従事できるようにして、人材不足の解決につなげたい考えだ。
・IoT×農業
IoTにより市場の動向や消費者のニーズを把握でき、ニーズに合った産物の生産が可能になる。需要予測、生産・流通・販売を連携させることで、輸送コストを低減し、効率化を図れる。
■スマート農業のメリット
・省力化による圃場の拡大・収量アップ
・肉体への負担の軽減
・農業ノウハウのデータ化&活用
・持続可能な社会を実現するための有機栽培・減農薬栽培の推進
■スマート農業のデメリット
・導入コストが割高
まず、導入にあたってのイニシャルコストが、通常の農機と比べて割高だ。
また、農業分野で活用が始まったばかりのICTやロボットは、費用対効果の見通しが立てにくいという側面もある。
・個々の機器のデータ形式のバラツキ
ICT機器やロボットはメーカーごとに特色のある製品のため、問題となるのがソフトウェアやデータ形式の標準化だ。これらのOSやミドルウェアの開発は、市場シェアを獲得するべく企業や団体などが、単独で開発していることが多いため、なかなか標準化が進まない。
・スマート農業実施者の不足と育成
スマート機器を使いこなすためのサポート体制や、ITに精通した人材の育成が、農業の分野の中で急務とされている。
・農家への新たな作業負担
このようなスマート農業の導入にあたっては、導入する農家側にも、金銭的・時間的・技術的な負担がのしかかる。従来までのように農機を導入すること以上に覚えることが増え、パソコンやスマートフォン、タブレットなどを用いたデータ入力などがある。
・スマート農業で育てた野菜の食味
スマート農業で効率が上がり、収量が上がったとしても、おいしい農作物でなければ消費者は選んではくれない。栄養価が高く、おいしい野菜を育てるための方法がスマート農業であるという点を忘れないようにすることが大切である。
■まとめ
スマート農業は、高齢化や担い手不足の進む日本において、農業を
支える柱になると思う。 農業技術やノウハウが、データとして目に見える形となり、天候や、病害虫対策、育成、収穫などがしやすくなり、
新規就農者が増えることが、考えられる。
おいしい野菜を育てるための、手段であり、目的ではないということを忘れないようにしたい。
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