明石花火大会歩道橋事故 大蔵海岸の今。

2001年7月、兵庫県明石市の歩道橋で
花火大会の見物客が密集したことによる事故が起きた。
この事故により11人が死亡、183名が負傷した。
死亡した11名はいずれも子どもや高齢者であった。

当時、駅から海岸へ向かう観客。

私は当時幼かったこともあり、この件については知らず後々知ってショックを受けた。

知ったきっかけは数年前、なんとなく海でも眺めたいなぁと思った時があり
色々調べた結果、兵庫県の大蔵海岸が近く電車でも行きやすかったので、目的地にして行くことに。
この大蔵海岸こそが当時の事故現場である。

大蔵海岸の最寄り駅は「朝霧駅」。
途中海岸線に入り、車窓からの眺めも綺麗。
朝霧駅に到着。こじんまりとした駅である。

駅から海岸へは近いが、道路が入り組んでいることもあり、歩道橋を渡らなければ海岸へは行けない。それが当時事故に繋がった原因でもある。

歩道橋は道幅も広く、しっかりとした造り。そして進んだ右側に小さな地蔵?のようなものがあり、一人の女性がしゃがんで手を合わせていた。私はその時まで何も知らなかったので不思議な光景であった。女性がいたこともあって、まじまじとは見れずその時は通り過ぎた。歩道橋を抜けると心地よい風とともに、美しい海が広がっていた。

世界一の長さを誇る「明石海峡大橋」を目の前に見れるのも、ここの魅力。
淡路島までを結ぶ橋だが、夜になるとライトアップも美しい。
普段、都会生活を送っている自分なので
こういう景色を眺めたり波の音に癒され、落ち着くので時々海を見たくなる。
駅からすぐでアクセスが良いのも嬉しい。

そして私は大蔵海岸を散歩。
駅から見て左側に少し遊具があって、子ども達が楽しそうに遊んでいるのだが
その近くに気になるものを見つけた。

カラフルな球体が積み上がった一見ポップなモニュメント。
遊具の近くにあったこともあり、彩り要素で建てられてるのかと最初は思ったが、そうではなかった。
そして説明書きを見てみると

「いれぶんはーと」と名付けられたモニュメント。
これを読んで初めて事故のことを知った。そして歩道橋で見た、あの地蔵

カラフルなモニュメントと橋の途中にあった地蔵の正体は、犠牲者となった11人への弔いと事故を風化させない想いが込められた慰霊碑であった。
ここに刻まれた一人ひとりの名前と年齢
犠牲となった11名は大半が幼い子どもであり、
生きていれば、自分と同じ年代だったこともあって、とてもショックを受けた。
ちなみに1人、高齢の女性は近くにいた乳児を守るよう覆いかぶさって亡くなったという。

その後事件の詳細を調べた。
花火大会には沢山の観客が押し寄せたが
最寄り駅の朝霧駅はホームが狭いこと、そして海岸まで行くには歩道橋を渡らないと行けないことで人が密集。
駅から海岸まで行きたい人と、海岸から駅方面へ行きたい人、その混在した2つの流れによって群衆雪崩が生じ、
圧迫、怪我、骨折、そして気温が高いことや屋根のある橋の構造から熱中症、呼吸困難に陥り
負傷者、犠牲者が多く出てしまった。
橋だけではなく、朝霧駅のホームも人で溢れかえり
線路へ落ちないように皆手を繋いでいたようだ。
当時、警備員もいたり、花火大会開始前にも橋が危ないと通報も複数あったようだが
特に規制などは無く花火大会は始まり、
凄惨な事故に繋がってしまった。
その後、警察や警備会社に対し裁判へと発展し
業務上過失致死罪により損害賠償、実刑判決が下った。
そしてこの事故を風化させまいと、慰霊碑が立てられ、遺族と市は現在も活動を行っている。

そして、歩道橋事故があった同じ年の冬、
もう1つ悲しい事故があった。

いれぶんはーとの隣には、少女の銅像。

「愛しい娘」と名付けられた、この像。
花火大会の事故があった約数ヶ月後にも幼い少女が命を落とした。
当時、海岸は人工浜で安全面が行き渡ってなかったのか
家族と遊びに来てた女の子が人工浜の陥没に巻き込まれ、
意識不明状態が数ヶ月続いた後、亡くなった。

こちらも、事故を風化させないよう建てられた慰霊碑で、少女の像は海岸を真っ直ぐと見つめ、
安全を見守ってるように見える。

どちらの事故も被害者、そして遺族のことを思うと、言葉で言い表せられないほど悲しい。
大切な子どもとの思い出作りで、楽しみに行った花火大会、海岸で
こんな事故想定できるわけもないし、目の前で子どもが苦しむ姿、そして幼くして絶ってしまった命を見るのは、どれだけつらかったことだろう。
受け入れられないよね。。
私自身は全く他人であるけれど、実際この場所を訪れて、
割と身近な場所でそんな凄惨な事故があったこと、生きていれば自分と同じ年代なこと
数日間あまりにショックで、鬱っぽくなってしまった。というか今も悲しくて、この場所がすごく印象に残り
毎年この時期になると事故について改めて思い起こす。
そんなこともあり、今回記事にしてみました。

事故のあった7月21日は毎年、明石市長や職員がこの地に赴き、祈りを捧げ
遺族の方が、市の新人職員に向けて当時のことや心境などを語り継ぐ様子も報じられている。

当時、この場で我が子を亡くした下村誠治さん


市の取り組みは称賛したいし、今後も続けてほしい。
「群衆雪崩」に関して最近で言えば
2022年10月、韓国ソウルにある繁華街の通りでも同様の事故が発生している。

事故は細い路地の階段で発生。

とは言っても、かなり規模が大きくハロウィンの時期だったこと、ドラマの舞台となっていた場所でもあった為、人で溢れかえり159名が命を落とした。その内、日本人も2名含まれていた。群衆雪崩は重大な事故に繋がってしまう。

明石花火大会の事故があったことから、花火大会における警備体制は厳重となり
駅に入る人数も制限するようになった。以来日本では同様の事故は起きていない。

数年前、京都の花火大会で混雑してる中を無理やり駅の中へ進もうとした観客に対し、警備のボランティアの男性が注意するという動画がTwitterにて拡散された、
その警備の男性の言葉が
「命を守ってるんだよ!止まれ!!」
この場面に対し、多くの称賛コメントが集まった。
明石花火大会の事故を知ってる者からすれば、とても重みのある一言だ。

若い世代だと、事故を知らない人も多い。
だからこそ明石花火大会歩道橋事故を風化させてはならないし、今後も伝えていかなければならないと思う。
子ども達にとって楽しい夏休みだが、最近は熱中症や水難事故などの報道も多く、見る度に心が痛む。
楽しい場所にも危険が潜んでいるということをしっかりと大人が伝え、小さな子どもが命を落とすことは無くなってほしい。


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