Kuwayama Daisuke

マンガ・映画・音楽・本が好き。主に映画感想を書きます。 twitter : @afxy…

Kuwayama Daisuke

マンガ・映画・音楽・本が好き。主に映画感想を書きます。 twitter : @afxyama

マガジン

記事一覧

映画『ラストマイル』感想 物流が繋ぐ人々の絆と欲望

 社会派メッセージとエンタメの高度な結実を実現した傑作。映画『ラストマイル』感想です。  TVドラマ『アンナチュラル』『MIU404』を手掛けた塚原あゆ子監督と、同ドラ…

Kuwayama Daisuke
7時間前
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映画『サユリ』感想 心霊に対するカウンターホラー

 心霊ものの理不尽さをブッ飛ばす作品。けど、もっと別の方法で殴って欲しかった。映画『サユリ』感想です。  押切蓮介さんのホラー漫画を原作として、『ノロイ』『ある…

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映画『箱男』感想 理解不能な世界の完全再現

 この理解出来ない不安感による快感、完全に安部公房作品でした。映画『箱男』感想です。  安部公房による1973年の同名小説を原作として、『狂い咲きサンダーロード』『…

Kuwayama Daisuke
2週間前
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映画『ソウルの春』感想 負の歴史を自己反省する傑作

 国としてのマイナス面を描きつつ、しっかりとエンタメに仕立て上げているのは称賛に値します。映画『ソウルの春』感想です。  『アシュラ』などで知られるキム・ソンス…

Kuwayama Daisuke
3週間前
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映画『ニューノーマル』感想 生産性のないスリラー映画

 もう少し下調べして作品を選ぶべきでした。映画『ニューノーマル』感想です。  『コンジアム』で韓国ホラーの名手となったチョン・ボムシク監督によるオムニバス・スリ…

Kuwayama Daisuke
4週間前
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映画『密輸1970』感想 痛快シスターフッド・アクション・サメ映画

 鑑賞中、隣に座ったおばあさんが、「うん、うん」と全シーン声に出して相槌を打ち、要所要所で独り言を呟くので、さすがにうるさかったです。ババア、映画館ではもう少し…

Kuwayama Daisuke
1か月前
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映画『お母さんが一緒』感想 血筋=呪いの和製『ヘレディタリー』

 ホームコメディではなく、ホラーなのでは? という疑問が離れませんでした。映画『お母さんが一緒』感想です。  劇作家であるペヤンヌマキさんの同名演劇を原作として…

Kuwayama Daisuke
1か月前
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映画『大いなる不在』感想 絆と共に深まる家族関係の溝 

 見応えありますが、重厚さによってテーマが潰されている感もあります。映画『大いなる不在』感想です。  『コンプリシティ 優しい共犯』の近浦啓監督による長編第2作…

Kuwayama Daisuke
1か月前
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2024年上半期お気に入り音楽

 2024年上半期で良かった音楽作品紹介。世界的には打ち込み主体のヒップホップ、R&Bダンスが主流かもしれませんが、個人的には生のバンドサウンドが聴きたくてたまらなく…

Kuwayama Daisuke
2か月前
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アニメ映画『ルックバック』感想 その背に負う創作の業

 完成度の高い原作を、見事に補強した映像化作品。アニメ映画『ルックバック』感想です。  『チェンソーマン』で知られる藤本タツキさんの短編漫画作品を原作として、ア…

Kuwayama Daisuke
2か月前
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映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想 タイムレスに響くメッセージ

 いやー、良さしかありませんでした。映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想です。  『アバウト・シュミット』『ファミリー・ツリー』『ネブラスカ』…

Kuwayama Daisuke
2か月前
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映画『蛇の道』感想 理不尽なオカルト風味が小気味良い

 リメイクだからなのか、昔の理不尽ホラーな空気が懐かしい。映画『蛇の道』感想です。  『CURE』『回路』『スパイの妻』などで知られる巨匠・黒沢清監督による最新作。…

Kuwayama Daisuke
2か月前
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映画『あんのこと』感想 確かに生きていたという叫び

 現実に起きた悲劇を知らしめるために作られたフィクション。映画『あんのこと』感想です。  『SR サイタマノラッパー』シリーズ、『太陽』『AI崩壊』などで知られる入…

Kuwayama Daisuke
2か月前
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映画『違国日記』感想 その映像では「たりない」実写化

 原作漫画が良すぎるにしても、雑な部分が多い残念作。映画『違国日記』感想です。  ヤマシタトモコさんによる同名漫画作品を原作として、『ジオラマボーイ・パノラマガ…

Kuwayama Daisuke
3か月前
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映画『マッドマックス:フュリオサ』感想 前作の行間から広がった前日譚

 『怒りのデス・ロード』への解像度を上げることに徹した見事な前日譚。映画『マッドマックス:フュリオサ』感想です。  ジョージ・ミラー監督の名を知らしめた名作『マ…

Kuwayama Daisuke
3か月前
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映画『関心領域』感想 過去と現在の罪悪から目を逸らすな

 物凄く冷静でありながら、激しい怒りを持って、この世の不快さを表現しています。映画『関心領域』感想です。  マーティン・エイミスの同名小説を原作として、ジャミロ…

Kuwayama Daisuke
3か月前
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映画『ラストマイル』感想 物流が繋ぐ人々の絆と欲望

 社会派メッセージとエンタメの高度な結実を実現した傑作。映画『ラストマイル』感想です。  TVドラマ『アンナチュラル』『MIU404』を手掛けた塚原あゆ子監督と、同ドラマの脚本家・野木亜紀子さんがタッグを組み、両シリーズと同じ世界線で起きる事件を描いた作品。両シリーズのキャラクターも端役で出演しているのがドラマのファンにとっても大きな売り文句になっています。  このドラマ2作品とも好きな作品だったというのもありますが、何よりも野木亜紀子さんの脚本作品は、現在のトップに位置す

映画『サユリ』感想 心霊に対するカウンターホラー

 心霊ものの理不尽さをブッ飛ばす作品。けど、もっと別の方法で殴って欲しかった。映画『サユリ』感想です。  押切蓮介さんのホラー漫画を原作として、『ノロイ』『ある優しき殺人者の記録』などで知られる白石晃士監督が実写映画化した作品。白石監督といえば、ホラーモキュメンタリーの第一人者であり、グロ描写にも容赦がないアングラ監督でありつつ、近年では『貞子VS伽椰子』などのメジャー作品を手掛けるなど、ホラー監督として幅を広げている監督。原作は未読ですが、かなりのホラーながらも、勢いある

映画『箱男』感想 理解不能な世界の完全再現

 この理解出来ない不安感による快感、完全に安部公房作品でした。映画『箱男』感想です。  安部公房による1973年の同名小説を原作として、『狂い咲きサンダーロード』『逆噴射家族』などの石井岳龍監督が映像化した作品。27年前、石井監督が石井聰亙の名義で活動していた時代に、日独共同製作予定されていたのが、クランクイン前日に中止となってしまった映画企画だったそうです。そのお蔵入りとなっていた企画が、安部公房生誕百周年となる2024年に公開されるという、非常にドラマティックな作品の状

映画『ソウルの春』感想 負の歴史を自己反省する傑作

 国としてのマイナス面を描きつつ、しっかりとエンタメに仕立て上げているのは称賛に値します。映画『ソウルの春』感想です。  『アシュラ』などで知られるキム・ソンス監督の最新映画作品。韓国では歴代級の大ヒットとなっているそうで、地味そうな内容だけど予告編で何となく気になる作品ではありました。特にファン・ジョンミンが出演しているということが観る決め手になりましたね。『新しき世界』『哭声/コクソン』『ただ悪より救いたまえ』、どれも印象に残る演技で、大好きな俳優です。  題材は、韓

映画『ニューノーマル』感想 生産性のないスリラー映画

 もう少し下調べして作品を選ぶべきでした。映画『ニューノーマル』感想です。  『コンジアム』で韓国ホラーの名手となったチョン・ボムシク監督によるオムニバス・スリラー映画。韓流ドラマブームの火付け役となった『冬のソナタ』で有名なチェ・ジウが7年振りに映画出演したというのも話題になっています。  どうも観たい映画が見当たらない、スケジュールが合わないというところに公開されたタイミングだったので、よく調べずに飛び込みで観てみました。韓国映画ならハズレがないだろうと踏んでいたのです

映画『密輸1970』感想 痛快シスターフッド・アクション・サメ映画

 鑑賞中、隣に座ったおばあさんが、「うん、うん」と全シーン声に出して相槌を打ち、要所要所で独り言を呟くので、さすがにうるさかったです。ババア、映画館ではもう少し静かにして、長生きしろよ‥。映画『密輸1970』感想です。  『モガディッシュ 脱出までの14日間』などで知られるリュ・スンワン監督によるクライムアクション映画。公開直後は全くノーマークだったのですが、相当面白いと評判になっていて、監督や役者陣を調べることなく、フラットな気持ちで観てまいりました。  クライムアクシ

映画『お母さんが一緒』感想 血筋=呪いの和製『ヘレディタリー』

 ホームコメディではなく、ホラーなのでは? という疑問が離れませんでした。映画『お母さんが一緒』感想です。  劇作家であるペヤンヌマキさんの同名演劇を原作として、『ぐるりのこと』『恋人たち』で知られる橋口亮輔監督が映画化した作品。CSチャンネルが製作したドラマシリーズを、再編集して長編映画としたものらしいです。  傑作だった『恋人たち』から9年振りの橋口監督作品ということで、もっと話題になってもいいのではと思っていたんですけど、やはりドラマの再編集だからなのか、ひっそりとし

映画『大いなる不在』感想 絆と共に深まる家族関係の溝 

 見応えありますが、重厚さによってテーマが潰されている感もあります。映画『大いなる不在』感想です。  『コンプリシティ 優しい共犯』の近浦啓監督による長編第2作となる映画。監督は存じ上げない方でしたが、森山未來さんと藤竜也さんという濃い面子に惹かれて観てまいりました。  物語はフローリアン・ゼレール監督の傑作『ファーザー』の日本版のようなものになっており、認知症を患った老人を軸に見せるドラマになっています。陽二の認知症による把握することのままならなさを、物語全体像を把握しに

2024年上半期お気に入り音楽

 2024年上半期で良かった音楽作品紹介。世界的には打ち込み主体のヒップホップ、R&Bダンスが主流かもしれませんが、個人的には生のバンドサウンドが聴きたくてたまらなくなっています。そんな好みが反映されたラインナップになった気がします。  2023年の上期・下期はこちらから。↓ 『Prelude To Ecstasy』/The Last Dinner Party  デビューしたてのこの新人バンド、アルバムを聴いた際は、「ちゃんと際立ったメロディを歌っているバンドだ

アニメ映画『ルックバック』感想 その背に負う創作の業

 完成度の高い原作を、見事に補強した映像化作品。アニメ映画『ルックバック』感想です。  『チェンソーマン』で知られる藤本タツキさんの短編漫画作品を原作として、アニメーターの押山清高さんが、監督・脚本・キャラクターデザインまで手掛け、劇場用としてアニメ化した作品。  原作漫画は、WEBの「ジャンプ+」で発表された当日に読んで衝撃を受けて、単行本が発売されてからも、何度となく読み返した、令和初期の名作漫画であることことは間違いない作品です。そのアニメ化とあれば注目せざるを得ない

映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想 タイムレスに響くメッセージ

 いやー、良さしかありませんでした。映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』感想です。  『アバウト・シュミット』『ファミリー・ツリー』『ネブラスカ』などで知られるアレクサンダー・ペイン監督による最新作。各所で絶賛され、オスカーでも各部門ノミネートされており、ダバイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞に輝いております。  正直、公開前までは全くノーマークだったのですが、ラジオ番組「アトロク2」の宇多丸さんの映画批評を聴いて、その熱量にものの見事に感化され、慌てて鑑賞

映画『蛇の道』感想 理不尽なオカルト風味が小気味良い

 リメイクだからなのか、昔の理不尽ホラーな空気が懐かしい。映画『蛇の道』感想です。  『CURE』『回路』『スパイの妻』などで知られる巨匠・黒沢清監督による最新作。1998年に自身が手掛けたVシネマビデオ作品『蛇の道』を、セルフリメイクした映画で、自ら「最高傑作ができたかもしれない」と公言するほど手応えを感じているそうです。元版を観たこともなかったのですが、それならば真っ新な気持ちで観るのも一興と思い、鑑賞に臨みました。  黒沢清監督といえば、『CURE』が最初に評価さ

映画『あんのこと』感想 確かに生きていたという叫び

 現実に起きた悲劇を知らしめるために作られたフィクション。映画『あんのこと』感想です。  『SR サイタマノラッパー』シリーズ、『太陽』『AI崩壊』などで知られる入江悠監督によるオリジナル脚本作品。2020年に新聞で掲載された、とある少女の人生について綴られた記事に着想を得て作られた物語だそうです。  河合優実さんが主演ということで注目はしておりましたが、あまりにも観るのがしんどく辛いものの予感はしていたので、避けようかなと考えておりました。しかし、結構な評判が耳に入ってく

映画『違国日記』感想 その映像では「たりない」実写化

 原作漫画が良すぎるにしても、雑な部分が多い残念作。映画『違国日記』感想です。  ヤマシタトモコさんによる同名漫画作品を原作として、『ジオラマボーイ・パノラマガール』などで知られる瀬田なつき監督が実写化した作品。原作漫画は以前から評判を聞いており、実写映画化の報せがあってから、思い切って全巻購入して読み始めたところ、ドハマりしてしまいました。一気に読むのがあまりにも惜しくて、半年かかって全11巻をようやく読み終えるほど、最高の漫画体験となった作品です。  公開直前で、原作

映画『マッドマックス:フュリオサ』感想 前作の行間から広がった前日譚

 『怒りのデス・ロード』への解像度を上げることに徹した見事な前日譚。映画『マッドマックス:フュリオサ』感想です。  ジョージ・ミラー監督の名を知らしめた名作『マッドマックス』シリーズ。27年振りに製作され、さらに新たな評価を獲得した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、その前日譚を描いたのが本作『フュリオサ』になります。  『デス・ロード』は公開当時に観に行っていて、『マッドマックス』シリーズを観た事もなかった初心者なのに、滅茶苦茶面白くて、まんまとハマったものでした。

映画『関心領域』感想 過去と現在の罪悪から目を逸らすな

 物凄く冷静でありながら、激しい怒りを持って、この世の不快さを表現しています。映画『関心領域』感想です。  マーティン・エイミスの同名小説を原作として、ジャミロクワイのMVや、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』の監督として知られるジョナサン・グレイザーが脚本と監督を務めた作品。先のアカデミー賞でも国際長編映画賞と音響賞を受賞し、カンヌでもグランプリを獲るなど、各所で絶賛されています。  ナチスが行った強制収容所でのユダヤ人大量虐殺は人類史に残る汚点であり、多くの映画作品