Kuwayama Daisuke

マンガ・映画・音楽・本が好き。主に映画感想を書きます。 twitter : @afxyama

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    映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想 突拍子もない物語に込めた、普遍的な善なるメッセージ

     やらせ過ぎとは思うものの、祝・アカデミー賞受賞! 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』感想です。  『スイス・アーミー・マン』で知られる映画監督ユニットのダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が手掛けた作品。さらに製作会社は、今世界で最もセンスのある作品を輩出し続けている「A24」。SFでカンフーアクションという事前情報の時点で、しっちゃかめっちゃかなものになっていましたが、観終えた時点でも「しっちゃかめっちゃか」を見事に映像作品とし

      • 映画『少女は卒業しない』感想 二度とない時間に気付く卒業式

         背中で演技が出来る河合優実さんは、もう既にレジェンド役者クラス。映画『少女は卒業しない』感想です。  直木賞作家の朝井リョウさんの連作短編小説を原作にして、本作で長編映画デビューとなる中川駿監督が映像化した作品。『佐々木、イン、マイマイン』『サマーフィルムにのって』『PLAN 75』など、出演作が軒並み傑作となっていて、個人的には大注目している河合優実さんが主演を務めているとのことなので、観に行こうと決めている作品でした。    こういう青春もの映画って、若手役者の登竜門

        • 映画『別れる決心』感想 辿り着けない事で完成する愛

           ここ数年観た中で、最もロマンチックな作品でした。映画『別れる決心』感想です。  『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』などで知られる韓国の鬼才、パク・チャヌク監督による最新作。今作でもカンヌ映画祭で監督賞を受賞しており、その評価は揺るぎないものになっている大監督です。    パク・チャヌク監督作品は、『オールド・ボーイ』は不勉強ながら未見でしたが、『親切なクムジャさん』『お嬢さん』は観たことがあり、暴力とエロスが強めで、わりとアクの強い映画作品を撮る印象で

          • アニメ映画『BLUE GIANT』感想 音楽表現の難しさに飛び込むチャレンジングな作品

             上原ひろみさんによる劇伴が素晴らしいものになっています。アニメ映画『BLUE GIANT』感想です。  石塚真一さんによる漫画作品『BLUE GIANT』を原作とした、立川譲監督による劇場版アニメ作品。原作漫画は、いつか読もうと思いつつもなかなか手を付けられていない作品でしたが、これを機に、真っ新な状態で観るかと、あえて予習なしに観てまいりました。何よりも劇中の音楽を担当しているのが、ジャズ界の怪物級ミュージシャンである上原ひろみさんというので、まずは体感しなければと思っ

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            映画『ボーンズ アンド オール』感想 答えの出せない究極のマイノリティを描くロマンス物語

             好きな漫画が元ネタにあるのを感じると嬉しくなってしまいます。映画『ボーンズ アンド オール』感想です。  『君の名前で僕を呼んで』、リメイク版『サスペリア』で知られる、ルカ・グァダニーノ監督による最新作。カミール・デアンジェリスという作家の同名小説を原作にした物語のようです。  グァダニーノ監督は、リメイクの『サスペリア』が、古典的ホラー作品を大胆にアレンジして難解なアート作品にしていたのに興奮させられた体験もあり、気になっている監督の1人です。    今作では、人を喰う

            映画『イニシェリン島の精霊』感想 小さい諍いで表現する大きな分断

             とてつもなく変な物語に、重層的なメッセージが込められている作品。映画『イニシェリン島の精霊』感想です。  『スリー・ビルボード』などで知られるマーティン・マクドナー監督による最新作。今年のアカデミー賞でも作品賞を始めとして多くの部門でノミネートされている注目作品です。個人的には前作の『スリー・ビルボード』は生涯ベスト10に選びたいくらい感銘を受けた傑作であったので、今年期待の1作でした。    予告編を観た段階では、親友だったおっさんが仲違いをするというあらすじしかわから

            映画『ノースマン 導かれし復讐者』感想 エンタメにもアートにも振り切れなかった大作

             良くない意味で、ロバート・エガース監督らしくない大作。映画『ノースマン 導かれし復讐者』感想です。  『ウィッチ』『ライトハウス』で知られるロバート・エガース監督による最新作。北欧ヴァイキングを描いた作品ということで、同じくヴァイキングを描いた幸村誠さんの漫画『ヴィンランド・サガ』を愛読している身としては観ておきたい作品でした。    前作の『ライトハウス』が非常に陰鬱なアート作品だったため、ただの復讐アクション時代物とはならないだろうと予想していましたが、やはり痛快さと

            映画『SHE SAID その名を暴け』感想 痛快さよりも、大事なジャーナリズムの美しさ

             #MeTooの発端であり、核をなす超重要作品。映画『SHE SAID その名を暴け』感想です。  作中でも実名の主役として登場しているミーガン・トゥーイーとジョデイ・カンターの共著によるノンフィクション『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストの闘い』(新潮社刊)を原作として、マリア・シュラーダーが監督を務めた作品。  #MeTooは、この「ワインスタイン事件」から始まり、歴史の大きな転換点に位置するムーブメントだと思います。ここから、女性蔑視と差別を描き、そ

            映画『ケイコ 目を澄ませて』感想 眼差しだけで語られる想い

             2023年の映画始めは、言葉に頼らない映画・オブ・映画な表現作品。映画『ケイコ 目を澄ませて』感想です。   実際に聾者のプロボクサーである小笠原恵子さんの著書『負けないで!』を原案として、『きみの鳥はうたえる』で知られる三宅唱監督が、脚本と監督を務めた作品。小笠原恵子さんの本は、あくまで原案として、物語そのものはオリジナルのものと思われます。    ボクシング映画は、役者が身体の作り込み、ボクサーとしてのトレーニングを身につけるところから行うため、撮影前の準備期間からス

            2022年下半期お気に入り音楽

             2022年下半期で良かった音楽作品紹介です。とっくに年明けてしまいましたが、一応備忘録として。来日公演も続々と決まり、コロナ前に戻りつつあるようにも思えますが、チケット代の高騰は、明らかに違っている点ですね。ただ、サブスクによって音源による収入が減ったことを考えると、コロナはライブ代金の値上がりを早めた契機に過ぎないとも考えられます。  2022年の上期はこちらから。↓ 『Hellfire』/black midi 現代音楽シーンの異端児が、ますます異端の方向に外れていく

            2022年の映画作品振り返り

             とうに新年が明けてはおりますが、恒例として2022年の映画作品振り返りをしておきたいと思います。昨年は、50本の映画作品に触れることが出来て、全て感想書きをすることが出来ました。何のためにやっているか、自分でもよくわかりませんが、読み返すと感動が蘇ったり、新たな発見に気付いたりすることもあるので、自分のためにはなっているのかとも思います。    2022年の各作品はこちらから↓  前年2021年の映画振り返りはこちらから↓  読み返してみて、印象的だった5作品を改めて

            アニメ映画『THE FRIST SLAM DUNK』感想 大胆なスピード感と繊細な人間心理を描いた新しい名作

             2022年最後の映画感想にして、度肝を抜かれた大傑作。アニメ映画『THE FRIST SLAM DUNK』感想です。  もう説明を入れるまでもないでしょう。「少年ジャンプ」を代表する名作漫画『スラムダンク』を、作者である漫画家・井上雄彦さんが原作者としてだけでなく、脚本・監督として参加し、長編アニメ映画として製作された作品。公開が決定してから、あらすじなどの情報は一切発表しないプロモーションが賛否を呼んで話題となりました。しかし、公開直後からは絶賛の嵐となり、原作のアニメ

            映画『グリーン・ナイト』感想 世界観を再現するハイレベルな美術

             理解し切れていないところも多いですが、作り込みは素晴らしいものでした。映画『グリーン・ナイト』感想です。  イングランドに伝わる作者不詳の物語『ガウェイン卿と緑の騎士』を原案として、『ア・ゴースト・ストーリー』で知られるデヴィッド・ロウリーが脚本と監督を務めた作品。『ア・ゴースト・ストーリー』の詩的でアンビエント的な映像美は好きでしたし、配給会社はA24ということで、センス間違いなしと感じて観てまいりました。    まず、中世ヨーロッパを再現した美術セットが凄いですね。詳

            映画『ある男』感想 拭いきれない過去が浮き彫りにする社会の悪意

             物語の面白さ、社会派作品、芸術性を複合させた傑作。映画『ある男』感想です。  作家・平野啓一郎さんの同名小説を原作にして、『蜜蜂と遠雷』『Arc/アーク』で知られる石川慶監督が実写化した作品。石川監督はまたもや小説作品の映画化作品ですね。  あらすじから見ると、いわゆるサスペンス的な物語になってはいますが、事件の真相だけを追う物語とは違い、そこに至るまでの登場人物の心理描写をドラマに仕立てたものになっています。原作の平野啓一郎さんによる文学性の部分を、石川監督が完全に理

            映画『宮松と山下』感想 切なく湿った感情を魅せる、乾いた演出

             過去のしがらみをどうするかというテーマが、意図せず結果として見事にシンクロ。映画『宮松と山下』感想です。  ドラマの演出を手掛ける関友太郎さん、NHKの人気番組『ピタゴラスイッチ』の企画・監修を務める佐藤雅彦さん、メディアデザインの活動をしている平瀬謙太朗さんの3名から成る監督集団「5月」による初長編映画作品。  主演は、映画にドラマに歌舞伎役者と、活躍の場を広げていた香川照之さんなんですが、作品公開も告知し始めた時期に、過去の酒の席での振る舞いを報じられて、世間的な評価

            映画『窓辺にて』感想 よそよそしさと距離感は、優しさの表れ

             人間の愚かさ・滑稽さ・哀しさをひっくるめて、美しさとして表現している傑作。映画『窓辺にて』感想です。  『愛がなんだ』『街の上で』などで知られる今泉力哉監督の最新作。恋愛映画でありつつ、恋愛に上手に向き合うことの出来ない人々を滑稽に描くのが特徴ですが、今作もそのスタンダードな今泉作品を、より深化させた作品という印象でした。    今泉監督の作品は、毎回キャスティングが絶妙だと思うんですけど、今作の主人公である茂巳を演じる稲垣吾郎さんも、ドハマりしている演技ですね。主体性が