【#NIKKEI】パナソニックの組織文化が、ガタガタな印象

 引用した記事の内容は、パナソニックの持ち株会社化に伴い、KPIの再設定を行い、低利益率からの脱却を目指すというもの。今までは、数字をKPIにし、厳しい対応をした結果、帳尻を合わせる社員もいたという。インタビューの内容からは、結果(売上など)だけではなく、過程(例えば、機械設備の稼働率)をもKPIとして加えるようだ。

※私自身は、パナソニックの関係者ではないので、仮説関係は間違っている可能性がある点にご留意ください。財務情報等は全てIRに目を通し、その他情報もwebメディアの確認はしております。

パナソニックは何故、低収益体質、と呼ばれるのか

 パナソニックがソニーと比較して、低収益であることは有名な話だ。今回、ネット上の情報を少しまとめさせていただくと、以下の2点を言及されていることが多かった。さらには、昨今のソニーのゲーム事業の好調と対比して、低収益性であると言及されることもあった。

人員が多すぎて、人件費が利益を圧迫している
・パナソニックショップに係る費用が高い

 私は、こうした単純なコストに関わるものではない、と考える。一般には事業規模に見合った人員出なければ、余剰人員が生じ、結果、収益性が下がるというものだ。であるならば、評価の著しく低い、利益への貢献性の低い人間を削減すれば良い、ということになる。パナソニックは2012年リストラをしている。しかし、パナソニックの営業利益率を見るとここ10年は3から5%で推移しており、日立や三菱電機、ソニーと比較すると決して高いとは言えない。パナソニックショップにしても、外部環境的には、そんなに悪くはないはずだ。そもそも利用するのは、人を呼びたい高齢者(身体の調子が悪くお店に行けない、ネットに疎い、など)だったりする。若者はネットで調べて何とかする。このように仮定すると、少子高齢化はチャンスである。メンテナンス系は一般的に利益率が高い。地域密着で「家電の安心」を付加価値として提供するのは悪くないように思う。しかし、売り切り、で利益をあげ、メンテナンスやその他サポートを無償で行い、関係性を続けるというのが現実だろう。
 こうして見ると、単にコスト構造が悪い、などという理由ではなく、ビジネスモデルが悪い、とか、経営戦略自体が悪い、という話になるのではないかと思う。

垣間見える企業体質

 パナソニックの企業体質は、創業者の意志、が大きく関わっていることもあり、やや特殊だ。私も流石に全てを知っているわけではないが、今回の記事で一つ気になる文言があるので、ご紹介したい。

数値目標を達成することが目的化し、帳尻合わせをする部門もあった。

 これは大丈夫ですか、という話だ。私の記憶が正しければ、東芝の不正会計問題の動機、と全く同じである。(興味のある方は、以下の書籍またはインターネットの検索をお願いします。)ここで問題なのは、新しく何かを創造して、利益率を上げる風土があるのかという視点である。
 例えば、勉強でも数値(点数)が目的化すれば、カンニングをして点数を上げるかもしれない。昔、中国のカンニング問題の特集ニュースを見た際、試験中に小型機械で問題用紙をスキャン、雇った優秀な学生(日本で言えば東大生)に送信、回答を受信(確か小型のイヤホン)、という具合で不正行為を行なっている受験者がいた。こうした不正をした人間が、真っ当な手段で数字を達成する思考を持つだろうか、という視点である。
 このように考えると、もはや体質として、パナソニックは危機的状況にあると言える。数字目標をなくしてKPIを変えます、で済む話なのだろうか。流石に数字目標をなくすわけにはいかないだろう。よくある話だが、現状と理想、を推し量り、その間の手段を明確化した上でKPIを設定しなければ無駄ではないだろうか。パナソニックの場合、技術レベルは高いのだろうが、ソニーのような革新性の高い商品を開発している印象はない。であるならば、サポート関係の収益化を狙うなど、いかにして顧客に対して付加価値の提供を行うか、という視点に立ち帰り、数字を達成する方向に修正していかなければ、厳しいように思う。ちなみに米Apple社のセグメント別利益構成比を見ると、iPhone7の登場期頃よりService(Apple careなど)の比率が上昇しており、メーカーの収益源は必ずしも商品を売ることではないことが分かる。


ザックリとした解決案

 どこかで聞いたことあるような解決案かもしれないが、私なりの解決案を記述する。BtoCとBtoBに分けて記載する。
 まず、BtoC、についてである。パナソニックの特徴は、あらゆる領域を全てカバーしている点である。パナソニック以外の家電メーカーは積極的に利益率の高い領域へ選択と集中を行い、利益率を高めている。パナソニックは理念ゆえか、利益率に依らず全ての領域をカバーしている。であるならば、全ての家電設備のサブスクではないだろうか。パナソニックには、住宅部門があるので、住宅設備(配線や壁に取り付ける照明のスイッチ、など)の部分から、屋内のあらゆる家電を、カバーすることができる。家電つき高級賃貸としての付加価値は臨めるのではないか。メンテナンスはパナソニックショップがすれば良い。常に最新の家電に囲まれ、最先端の生活を低価格で行う。もしくは、複数の家電をパッケージでサブスクするというもの。テレビやスピーカーなどのリビング系からキッチン周り、乾電池などをセットで提供することにより、利益率の低い商品も一定の利益の上昇を見込む頃ができる。
 そして、BtoB、についてである。これもサブスク、リカーリングモデルと呼ばれるものだ。こちらは複数の商品をセットにするというよりは、単体の製品をIoT化し、データを取得するという方法。例えば、電池であれば、提供した電池の使用情報(消耗など)をモニタリングすることにより、継続的な改善やシームレスな交換を可能になる。クライアント側(自動車メーカー)に対しての助言をも可能になるのかもしれない。であるならば、パナソニックを切りにくい競争力を身につけることが可能だ。
 このように、いわゆるサブスクリプションモデルが昨今は重要である。DX時代においては、データを取得する、データを解析する、データを活用する、こうした仕組みを保有しているだけで、継続的な改善や顧客との関係性に強くなる。グローバルでの競争環境下において、製品単体で良いものを作っても、プレミアム価格が理解されなければ厳しい。

まとめ

 DXが叫ばれる現代においては、データ利用、は前提である。具体的には、どうやってデータを取得するか、どのようにデータを解析するか、である。記事内のインタビューにある「容量あたりの価格」をコストパフォーマンスと理解するならば、競争力とはならないかもしれない。単にコストパフォーマンスを価値とするならば、パナソニックである必要はないので、別の会社に開発を超されれば契約を切られる危険性もある。
 価格競争で利益率を上げるには、販売数を増やすしかないと思う。しかし、車載電池は完成車メーカーの生産計画に依るので、販売数は外部環境(自社で制御不可能)である。こうした状況下で、どのように利益率が上がるのか、私には分からないが気になるところである。

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