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タイミングはスピードを上回る

自分の指導の中で、常に重要なファクターとしているフレーズがある。

タイミングはスピードを上回る

いくらスピードで敵わない相手だとしても、こちらでタイミングさえ合わせてしまえば相手のスピードを上回れる。

タイミングは決して「合わせる」だけじゃない。
相手のタイミングを外す、タイミングをズラす、その上でやっぱり、ジャストなタイミングで味方と合わせる。

尊敬してやまない偉大なる師匠も、かつてこう仰っていました。
「タイミングにセンスが表れる。センスとはタイミングや」と。
タイミングは、センスを表す指標でもあるのだ。

大事なことなのでもう一度言います。タイミングはスピードを上回るのだ。
これはサッカーだけでなく、きっとあらゆる種目に言えることだろう。

この至言を、ピッチ内で選手たちに表現させてあげたい。
スピードで敵わなくてもタイミングさえ極めれば本当に相手を上回れるのだということを、アハ体験として実感させてあげたい。

そんな想いを込めて毎回のトレーニングにこの要素を仕込み、選手たちへの声がけに気を遣ってるところです。

今、ここしかない!という瞬間
え、今?と相手に膝を折らせる瞬間
相手が喰いついた瞬間
相手と入れ違う瞬間

その瞬間こそが、相手のスピードを上回れるタイミング。
パスでもドリでもシュートでも。

「久保田といえばタイミングの指導」
そう言われるまでに突き詰めたい、と本気で思ってます。

「タイミングはスピードを上回る」(3回目)
なんて美しい、なんて高尚な、そしてなんてわかりやすい言葉だろうか。

こんな言葉を思いつくとは久保田もなかなかやるじゃないかと絶賛してほしいところではあるのだけれど、お察しの通り、これは私が考えた言葉ではなく。総合格闘技界のスーパースターである「コナー・マクレガー」による名言なんです。

13秒でケリをつけたこの衝撃的な試合の後、マクレガーが放ったこの言葉。

確かに、スピードで敵わない相手に対しても一瞬のタイミングでカウンターを当てれば相手は倒れるし、タックルに行くタイミングもほんの一瞬。
格闘技こそ、生死を分ける究極なタイミングの世界がきっと広がっているんでしょうね。

この言葉を試合後のインタビューで堂々と披露できるマクレガー。格闘家として自身の哲学を明確に持っているのだろう。
他の人には表現できない自身だけの言葉を持っている人を哲学者と呼ぶのなら、マクレガーはリング上の哲学者。
どんな分野でも、達人は哲学者の一面を持っているのだと改めて感じる。
「センスとはタイミングや」と話してくれたあの方もそうだ。

さて
先ほども書いたように、僕はこの「タイミングはスピードを上回る」というフレーズをよく指導現場で使う。

まずは「◯◯◯◯◯はスピードを上回る」
とボードに書いて、「この◯◯◯◯◯には、何が入ると思う?」と。

「タイミング」という答えを引き出したいからこういう質問をするのだけれど、ある時、某クラブの合宿で高校生女子たちへトレーニングをした日にも同じ質問をしてみたんですよ。ちなみに彼女たちにこの話をしたのは、この時が初めて。

「タイミングって言え。早くタイミングって言うんだオマエたち」と心でぶつぶつ唱えながら。
しかし彼女たちは、こちらの想定を上回る答えをまるでマクレガーの高速カウンターのごとく間髪入れずに返してきたのです。

「ボール」
うむ、なるほど。確かに人が走るスピードよりもボールスピードの方が速いしな。逆に速いパスだけでなくあえて緩いパスで相手を誘い、相手の時間を止め相手を遅くすることもできる。ボールがあれば何でもできる。

「アイデア」
素敵だ。アイデアがあればスピードをも上回れる。これからもぜひ、指導者に何を言われようがそのマインドを持ち続けてほしい。応援してるよ!

「予測」
出た至言。これを答えてくれたのは当時高3でセンターバックやアンカーをやることが多かった子。しなやかで美しい彼女のプレーに僕は完全に魅了されていたのだけれど、彼女が答えた「予測はスピードを上回る」という言葉は、ひょっとしたら「タイミングはスピードを上回る」以上に
「至言・オブ・ザ・ワールド」じゃないかと勝手に興奮した記憶がある。
当の彼女は、ごくごく当たり前のような顔をしていたけれども。

いくらスピードで敵わない相手だとしても、予測で先回りしてしまえば対処できる。攻撃においても、予測した上で先取りして動いておけばスピードある相手を上回れる。

最高じゃないか。

他にもいくつかアンサーを出してくれた彼女たちからの様々な答えを聞いて、これ、せっかくだからこの話は違うテーマで改めて話そうと衝動的に思い、その日の夜に行なったミーティングで次のような話をしました。

「 ◯◯◯◯◯ はスピードを上回る 」
「この◯◯◯◯◯の中に入るものを、それぞれなりに持ってほしい」
「何でもいい。テクニックでも、フィジカルでも、アイデアでも、予測でも」
「ホントに何だっていいんだ」

「そこに入る◯◯◯◯◯が、フットボーラーとしての自身のアイデンティティーなんだよ」と。

「私はこれで相手に勝つ。これがあるから負けない」という、各自のフットボールアイデンティティー。
何なら、スピードの部分も他のものに変えて考えたっていいよね。

◯◯◯◯◯は◯◯◯◯◯を上回る
◯◯◯◯◯で、◯◯◯◯◯を上回る とか。

「アイデンティティー」なんてカッコつけたけれど、簡単に言い換えればこれは武器と言えるかもしれない。自信に思えるものでもいい。

◯◯◯◯◯
ここに入るものを、何か一つでも持たせたい。それを選手が自分で見つけられるように。自分で見つけられない子には、その手助けを。
そんな指導を、一生していきたい。

◯◯◯◯◯
アナタは何を入れますか?

ちなみに
マクレガーが語った正確な言葉はこれ
「精度はパワーを上回り、タイミングはスピードを上回る」

こちらも、よかったら。



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