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読んだ本4冊

重い腰を上げて書きます。

今回は4冊です。

書評家人生

鹿島茂さんの本です。何となく名前を聞いたことがありそう?と思いながら手に取りました。表紙の背景を見ると、『多様性の時代を生きるための哲学』という見知った本を発見しました。そうか、この本で知った人だったのかと。

この本は600ページくらいあって分厚い本ですが、雑誌のように本を読むというマインドを持ってから割りと気軽に手を出せるようになりました。

書評よりもまえがきに書かれている著者の書評に対する考えがためになりました。

書評をする人は物書きの初めと終わりに多いそうです。デビューしたてはあまり仕事がないので引き受け、物書きとしての終わりもまた仕事が減ってくるので引き受ける。と、書けばいい時間潰しのように見えますが、労力の割に報酬も少ないタイパの悪い仕事だそうです。そのため忙しい物書きは仕事を引き受けないようだ。著者が言うところによると、著作集が出る程の物書きの多くは書評が少ない。

書評の業界事情のようなものを知れてためになりました。

それ以外にも著者の書評の心得に見習うところがあると感じました。私は本の評価をしているわけではないですが、内容理解をする上での押さえるポイントとしては似たところがありそうです。

著者は自分で考えたルール以外にも「丸屋三原則」という丸屋才一が考えた書評ルールもマイルールに入れているようだ。

そのうちの一つとして、最初の3行が大切、というのがあります。

このルールはこの本で書評を読んでいかに大切に感じました。この本は最初から流し読みをする前提で読んでいるので、この書評を最後まで読むか判断するのは大体3行程度です。

読もうと思った書評はスッと入り、読み終えた頃には「もうこれで終わり?」と思わせるほどでした。

ある程度自分が知っている著者ほど、この傾向が強く、こんなに端的にまとめられるのかと驚きました。

書評としては、エマニュエル・トッド関連が多かったように感じます。個人的にも興味のある著者で目がいっただけなのだと思いますが、それでもそう感じる。おそらく他にも何かしらの分野に偏りがありそうだ。

知っているつもり 無知の科学

積読になってました。おそらく2年ほど。タイトル買いしましたが正解でした。また読み直したい本の一冊になりました。

先月、以下の記事で同名タイトルの本を読んだ感想を書きました。
(同名タイトルの本は光文社新書にあります)

主旨はどちらも同じで、自分が思っているほど物事を分かっていないことを気づかせてくれる本です。

今回の本は研究事例をゴリゴリに出しながら説明していますが、以前読んだ方は大学の講義?ゼミ?で行った実験を元に書かれているので馴染みやすいと感じました。それに本書と比べて教育目線で応用しやすいように見えました。

簡単に本書の内容を私の解釈で書けばこんな感じです。

自分が思っているほど自分は物事を知らない。そして、その事に気づかずに社会的・政治的な問題に対処しようとしている。するとどうだろうか、本当に解決する方向へ向かっているのか?。

こんな程度しか分かっていないです。

ですが、色々と疑問に残るところもあります。本書の主張として、自分一人では良く分かっておらず、周り(人間、環境)と協力しながら世界は成り立っている。それは分かります。なので、集団に対する寄与が大切と言いますが、『内向型人間のすごい力』では、内向型の人間はチームで活動するよりも個人の方が能力が発揮でき、『同調圧力』では、条件によってはチームが悪い方向へ進むことがあると書いていた気がするので、どうも噛み合わないような気がしています(ただの思い込みかもしれませんが)。

色々な本と関連付けて考えられるのは自分でも良いことだと思ってますが、現状は本の主張を捉えるという意味では憶測が過ぎる状態だとも思っています。

訂正する力

図書館で借りて読みました。ですが、途中でこの本は読み返すべきだと感じ、即買いました。

この本で説明される「訂正する力」とはこれまでの積み重ねて来たものを再解釈し、現在に使えるようにすることです。著者は口酸っぱく歴史修正主義と区別するために「修正」という言葉ではなく、「訂正」を使っています。

個人的には事実は事実としてありながらも、あくまで現在に適応できるように解釈を変えるということをするんだと解釈しました。既に書いてあるのか分かりませんが、解釈を変えた結果、あたかも事実がそうであったかのように扱われることを歴史修正主義というのかな?って思ったりしました。

この「訂正」という意味が個人的にしっくり来たのは、過去の研究に対する文系と理系の違いです。

この本ではマルクスを例に書かれていました。マルクスといえば、経済学者として有名ですが、もう何百年も前の人です。それを今でも「あの発言はどういうことなんだ?」と争っています。理系からすれば、ニュートンの力学はある程度完成されたものとして、おそらく変わらないであろう常識となっています。それを今からあの解釈はどうなんだ?と研究している人はいてもごく少数です。

文系はいつまでも昔の研究を引っ張り出して、「今にも使える!」ということをしますが、理系は違うと分かれば掘り返されずにそのまま眠っていく。掘り返されたとしても、「昔はね、こうちう考えだったけれども、今は◯◯なんだよね」で終わります。

自分でnoteを書いていても思いますが、昔の考え(始めた当初)をいつまでも引っ張り出して、こういう目的で出発したけれども、今はこうと、少しずつ訂正しながら書いている。確かに自分で書いたことの解釈を変えながら書いていることもあるなと感じ、他人事の話ではなく自分にとっても大切な考え方かもしれないと思ったのも買うことにした理由の1つです。

半暮刻

今年読んだ中でも、トップクラスに衝撃を受けた小説の1冊。買いたいな~と思いつつも、私の手応え的に文庫が出ると思うので、それまで待ちます。

現実に置き換えれば、電通の過労自殺と東京オリンピックの不祥事を混ぜたような話。現実に起こっていることの断片的な知識だけでもこの小説の内容につながり、本当にそうなのではないか?と思わせるほどの説得力があります。

倫理より利益を重視する思想がハンナ・アーレントの「目的は手段を正当化する」を考えさせたり、今の日本社会に蔓延っている偏見も書かれていて、正直怖いと思ってしまいました。

読む前はそんなに期待していなかったものの、養老孟司先生が推薦していることもあって読んでみましたが、正解でした。400ページ程ありますが、100ページ程度で既にお腹一杯になるような内容です。それから先に一体何があるの???と思いながら、ページをめくるのが怖い感覚もありました。

まあ、感想はこの辺で。


書きたいと思っていたことを薄く広く、とりあえず書きました。

何も書かないよりもいいけど、モヤモヤするのは変わりないです。

少し心の重りが取れましたが、今年ももう終わりそうなので、明日あたりには今年読んで良かった本をサクッと紹介した記事を書くつもりです。

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