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士業広告の未来

島田 雄左
株式会社スタイル・エッジ 代表取締役社長
士業適正広告推進協議会 理事

士業広告の変遷

今回は「士業広告の未来」と題し、隆盛を誇っているインターネット広告に焦点を絞ってお送りしたいと思います。2000年に弁護士の業務広告が解禁されたことを皮切りに、各士業の広告に対して規制緩和が行われました。それまでは士業が広告を出すことに対して「品位がない」「ふさわしくない」といった理由で全面的に禁止されていたわけです。

また、インターネットについてはテレビ、新聞、雑誌、ラジオといったいわゆる4大マスメディアと比べまだまだ歴史が浅かったこともあり、当時は「士業がホームページを持つなんてありえない」といった意見もありました。

しかしながら、広告解禁と同時期に急速にインターネットが普及し、誰もがインターネットを介して自分の求める情報にアクセスするようになり、士業の世界においてもホームページを持つことは名刺代わりになるほどに一般的になりました。

その後は、より専門性の高いサイトをつくることで差別化戦略を図る事務所が出てきました。具体的には事務所のホームページとは別に債務整理や交通事故、相続といったように特化型の専門サイトを持つことで消費者にアプローチを試みるといった具合です。

ただ、サイトをつくっただけで誰もそれを見てくれなければ意味がありません。ですので、サイトを多くの方に訪れてもらうために、Yahoo!やGoogle等の検索キーワード連動型広告はもとより、Facebook、Twitter、Instagram、TikTok、YouTubeといった様々なチャネルが活用されています。いまやインターネット上では「士業の広告を見ない日はない」といっても過言ではないほどに情報があふれています。

広告解禁によるメリット・デメリット

法律的な困りごとに直面した際、広告解禁がなされる以前はどうしていたのでしょうか。身内や知り合いに弁護士がいればひとつの選択肢ですが、稀なケースだと思います。また仮にいたとしても近しいがゆえに相談しにくいといったお声もよく聞きます。実際には広告解禁以前に弁護士や司法書士に依頼するとなると紹介がベースとなっていました。

このように解禁前では司法へのアクセスが極端に制限されており、自分の悩みを解決してくれる専門家に出会いたくても出会えない、選びたくとも選べない時代だったのです。この状況が広告解禁によって大きく変わりました。中でもインターネット広告は、テレビ、新聞、雑誌、ラジオと異なり、自ら知りたい情報にアクセスできるため、消費者の司法アクセスは飛躍的に高まりました。

さらに広告を通じて消費者が事務所を比較検討することが可能になりました。士業の仕事は極めて範囲が広く、たとえば弁護士にしてもすべての法律に明るいわけではありません。それぞれ得意とする分野があり、実績の数も異なります。

広告を通じてそういった特徴や違いを知ることができ、自分で士業の専門家を選ぶことができるようになりました。このように様々な士業に相談や依頼をしやすくなったことで、消費者の権利擁護に大きく貢献できたこと、これが広告解禁による最大のメリットだと思います。

ただ、一方で情報があふれかえり、ネット広告はまさに玉石混交の状態とも言えます。広告は「顧客争奪戦」を勝ち抜くためのツールでもあるため、誇張した表現や紛らわしい表現を用いてでも、他を出し抜こうとするケースもあります。中には誇大広告や嘘、悪質なものも見受けられます。規制緩和による変化には何においても功罪はあるものですが、このように士業広告の解禁も例外ではありません。

士業広告の未来

では、どうすべきか。今後も情報過多の流れがとまることはないと思います。消費者側においては、広告の情報が正しいかどうかを見極める力である情報リテラシーの向上が必要な時代になってきています。私たち士推協はそのためにも、士業や広告会社が守るべき一定の基準を確立することを目指すと同時に、消費者側のリテラシーをあげるための活動も積極的に行っていかなければいけないと考えています。

そして、SNSの台頭によって、今後はより一層ダイレクトに士業と消費者がつながっていく時代に移行すると思います。だからこそ、士業および広告会社としては、個人としてどのような情報を発信していくかといった、いわばパーソナルなブランディングが大事になってきます。

これまでのように事務所のホームページや特化型の専門サイトをつくるだけではなく、常日頃からSNSを通じて個人としてどういった情報を発信していき、消費者とのエンゲージメントを高めていくべきか。ダイレクトに消費者とつながる時代において生き残るために大事なポイントになると感じています。

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